section7『共振 -模擬戦と連携-』
未知の力に目覚め、動き始めた真の世界。
彼に与えられた次の課題は、“戦い”。
初めての実戦形式の訓練、そして、仲間との連携——。
その中で、彼は“他者との共鳴”の可能性を初めて体感する。
「じゃ、今日は模擬戦をやる」
神瀬 匡の声に、空気がぴんと張り詰めた。
「まずは、真と凪で一戦。ルールは簡単。どっちかが動けなくなるまで。ただし殺すな。ほどほどにな」
「……俺、そんなに手加減得意じゃないけどな」
白倉 凪が呟く。低く、冷えた声だった。
凪が広場の中央に歩み出る。鋭い眼光が、まっすぐこちらを射抜いてくる。
(やるしかない——)
俺も向かい合う形で立つ。神瀬の「始め」の合図とともに、凪が動いた。
速い——!
足元に冷気が走る。気づいた時には、地面が凍っていた。
一歩踏み出そうとした瞬間、俺の靴裏が滑った。凪が投げた氷の刃が、わずかに横をかすめる。
(ヤバい……っ!)
《ミロク》が反応した。視界の中に、“凪の動きの未来”が浮かぶ。光のような軌跡が、複数重なって見えた。
(どっちだ? どこに来る……!?)
凪は俺の“読み”を読み返して動いている。ミロクの指し示す軌跡は複数あり、そこから「本命」を絞らなければいけない。
すべての選択がワンテンポ遅れれば、即アウトだ。
「反応だけじゃ、生き残れねえぞ」
言いながら、凪の手が地面に触れる。そこから一気に“氷柱”が湧き上がった。
——《クライオスフィア》。
空気中の水分を凍らせ、自在に操るアーカ。冷気は制圧、凍結、拘束、果ては粉砕まで可能な応用範囲を持つ。
俺は視界に灯った“赤い点”の先を読んで跳ぶ。
ギリギリで避けた。けど、身体が追いつかない。視えても、動けない。
「終了。ここまでだ」
神瀬が手を打って、空気を断った。
凪は一歩引き、軽く息をついた。
「ま、最初ならこんなもんだろ」
冷静な声の中に、わずかに熱が宿っていた。
「次は、共闘だ。相手は——俺」
神瀬が前に出る。
「真、凪。二人でかかってこい」
「えっ」
「いやいや、それは無理……」
「来ないなら、今すぐ潰す」
その言葉に空気が変わった。
一歩、神瀬が前に出ただけで、周囲の気圧が下がる。
「動け!」
凪が叫ぶ。即座に俺の視界が反応する。
(くる!)
神瀬の動きが——見えた。足の角度、重心、次に動く腕の形。すべてがミロクに捉えられる。
「凪、2時方向、斜め上に攻撃!」
凪が反応し、氷の槍を放つ。神瀬はそれを“読むように”かわし、笑った。
「指示は悪くない」
次の瞬間、背後に神瀬の気配——
「下がれ、真!」
凪が飛び込んできて、俺の肩を掴んで引く。
——氷が地面に一斉に走る。広範囲凍結。
神瀬がひるんだその隙に、俺は未来を“もう一手”先まで読む。
(次に左足が動く。肘を振る。空気が撓む。——ここだ!)
「今だ、凪! こっちに誘導!」
俺が動き、凪が氷を叩き込む。二人の行動が、ピタリと噛み合った。
神瀬が一歩下がり、手を上げる。
「合格。最初にしては上出来だ」
凪は肩で息をしながら、小さく笑う。
「……少しはやるじゃん」
「……お前もな」
わずかに視線が交差した。
たぶんそれは、“戦友”と呼ぶにはまだ早い。
けど、確かに——“何か”が生まれ始めていた。
ただ力を使うだけでは、生き残れない。
“信頼”と“連携”があってこそ、戦いの中で生まれる“勝機”。
白倉凪との初めての共闘を経て、真はようやく“孤独じゃない戦い”を知る。
それはきっと、これから訪れる異世界での戦いにも繋がっていく──




