家族のような場所
投稿時間間違えちゃった
ってことでお詫びの投稿
アレン達は孤児院を目指し、ギルドを北上していた。
「孤児院は街の北端にあるんだ。市場からも近くてよくお使いを頼まれたりしてたんだ。」
「そうなのですね。楽しみになってきました。」
「人数はどの程度なんだ?」
「7人の子供と1人の家主の小さな孤児院なんだ。グランマさんっていう人が切り盛りしているんだ。僕もたくさんお世話になったんだよ。」
そんなことを話していると孤児院の前に着く。
「おまたせ!ここが僕が育った孤児院だよ。」
そこは小さな一戸建ての家屋で所々で老朽化が垣間見える。しかし、屋内からは子供達の元気な声が漏れていた。アレンは入口のドアを優しく開けた。
「ただいまみんな!アレンのおかえりだぞ!」
「!!アレンお兄ちゃん!」
「お帰りなさい!」
「おかえり、アレン。冒険者生活はどうだい?…あら、後ろの子たちは。」
「そうだよ。前にも話した僕の冒険者仲間!」
前に出るよう促された2人はグランマに向き直る。
「こんにちは。アレンさんとパーティを組ませていただいております。セイラと申します。」
「俺はトウマだ。アレンと共に行動している。」
「ええ、アレンからよく聞いているわ。ふたりとも、アレンと一緒に居てくれてありがとうねぇ。」
グランマは微笑みながら2人の手を握った。
すると子供達がアレンに勢いよく抱きつく。
「アレンお兄ちゃん!遊ぼ!」
「僕もー!」
「もー仕方ないなー。でも少しだけ待ってね。」
「えー。」
「お兄ちゃんのケチ。」
「うぅ…。」
「アレンさん。私たちのことは気にせず遊んであげてください。」
「え?でも…。」
「構ってやるのも兄の務めだぞ。」
「そ、そうだね。じゃあグランマさん、ふたりのことお願いしてもいいですか。」
「もちろんよ。行ってらっしゃいな。」
そうするとアレンは申し訳なさそうに子供達の相手を始めた。
「さぁふたりともこちらへ。」
グランマは2人を食堂へ案内し、座るよう促した。そして飲み物を差し出す。
「ホットミルクよ。ごめんね、子どもたちはこれが大好きでねぇ。」
「いただきます。」
ミルクの香りに、どこか懐かしい気持ちが胸をくすぐる。
セイラはゆっくりと口に含み、温かさにしばし言葉を忘れていた。
「とても美味しいです。」
トウマも初めてのホットミルクに少し戸惑いながらも口に含む。
「…うまいな、これ。」
「ありがとうねぇ。それで、アレンとはうまくやれてるかい?」
「アレンさんはとても優しく、正義感の強い方です。私の契約している精霊も道具ではなく仲間として迎えてくれました。」
「そうだな、俺はまだ少ししか共にしていないがアレンは強い。身体的にも、精神的にもな。…とても羨ましく思う。」
そう言い、3人はアレンの方を向く。アレンは子供達と元気に戯れていた。
「アレンは昔からあんな調子でねぇ。年の近い子がいなかったから、自分がみんなを引っ張るんだって、いつも張り切ってたよ。私も気にかけてはいたけど気を使ってくれてたのかねぇ。…2人ともこれからもアレンをよろしく頼むよ。」
グランマはセイラとトウマに微笑みながら子を託す。
「もちろんだ。仲間は支え合いだからな。」
「ええ、持ちつ持たれつ、ですよね。」
「アレンの仲間があなた達で本当によかったわ。…あら?」
すると影から顔を覗かせていた1人の少女がセイラに近づく。少し戸惑っていたが、意を決したのか口を開き始める。
「あ、あの、私、お姉ちゃんと一緒に、遊びたいな。」
「私とですか?」
微笑みながら少女に答えていると焦った様子で少女を追いかけきたアレンが現れる。
「ルナ!そっちに行ったら、ってごめんセイラさん!すぐ連れ戻すから!」
「いえ、大丈夫です。丁度そちらに向かおうとしていたところなので。」
「そうなんですか?」
「ええ。ふたりとも、子どもたちの相手をしてくれないかい?」
「子供の相手は得意だ。」
「私も妹や弟には憧れていましたので。」
2人はいつになくやる気を出していた。
「ありがとうねぇ。」
「お姉ちゃん!こっち来て!」
「わかりました。」
セイラはルナに連れられ、トウマは少年の注目の的となっていた。
「すっげぇー!」
「この剣見たことない!」
「かっこいいー!」
「これは刀というんだ。普段は鞘に納めておいてーー」
子供達の興奮ぶりにアレンは驚いていた。そんなアレンにグランマが近寄る。
「アレン、冒険者は楽しいかい?」
「…はい!」
孤児院は子供達の騒ぐ声で満ちていた。
日が沈み、星々が輝き始める。3人は身支度を進めていた。
「えぇーもう帰っちゃうの?」
「もっと遊ぼうよー。」
「ごめんねみんな。明日は依頼に行かなきゃ行けないんだ。」
アレン達が帰ることに不満を漏らす子供達をグランマは注意する。
「ほら、お兄ちゃんたちの邪魔をするんじゃないよ!」
「は〜い。」
「…ちょっと寂しいですね。」
「また来ればいい。そうだろ、アレン?」
「うん、また来よう。」
「アレン、セイラちゃん、トウマくん。今日は本当にありがとうねぇ。子どもたちもいつもより元気だったわ。」
「いえ、僕も久しぶりにみんなに会えて良かったです。また来ます。」
「そうかい。じゃあ気をつけて帰るんだよ。」
「ではお邪魔しました。」
「また会おう。」
「みんな、行ってきます。」
子供たちに見送られながら3人は再び歩き出す。
少し離れた玄関先で、ルナが手を振りながら叫んだ。
「また来てねー!」
子供たちの声が街に溶けていく中、ルナはふと、路地の奥に目を向けた。
(……誰か、いた?)
気のせいだったのか、そこにはもう何もなかった。