表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/19

魔法と刀術

小さな森の外れにある草原に大の字で寝転がるふたりの少年。彼らは大空を見上げ、日向を存分に浴びていた。頬を温かい風が撫でる。

「ねぇ、お兄ちゃんの夢ってなに?」

「夢か…。俺の夢は英雄になりたいな。誰もが憧れる英雄に。」

「へぇ〜。お兄ちゃんらしい夢だね。」

「そうか?そういうお前の夢はなんなんだ、アレン。」

「僕?僕の夢はーー」



木漏れ日が差し込む孤児院の一室でアレンは目を覚ます。鳥のさえずりがアレンの寝起きをより一層良いものにさせる。しかしアレンの見た夢は頭を離れなかった。

(今のは、夢?にしてははっきりし過ぎている。なんだろう。)

そんな思考を巡らせていると部屋の扉が開かれる。

「おはようアレンお兄ちゃん、朝ごはんだよ。」

「おはようルナ、今行くよ。」

ルナに呼ばれたアレンはベッドを下り、ルナと共に食堂へ向かった。



子供達とのちょっと騒がしい朝食はアレン達に活力を与えた。朝食を済ませたアレン達は少しの間子供達の相手をした後、身支度を済ませ子供達に見送られながら孤児院をあとにした。

「ついつい長居してしまいましたね。」

「たしかに、もうすぐ昼だね。今日はどうしようか。」

「…アレン、提案がある。俺と手合わせしないか?」

少し緊張した、しかしそれ以上に真剣な表情のトウマの提案にアレンは微笑みながら返す。

「いいね。実は僕もトウマにお願いしようと思ってたんだ。」

「そうか、ならさっそく移動しよう。街の外で構わないな。」

「そうだね。負けないよ、トウマ。」

「フッ、それはこっちのセリフだ。」

そんな2人の様子にセイラは微笑みながら後ろを歩いていた。



街から少し離れた場所にある草原。アレンとトウマは自身の得物を構え、その時を待っている。

「……。」

「ふぅ…。」

心を静まる2人の様子をセイラは優しく見守る。暫しの静寂。開始の合図を出すのはセイラだった。

「いきます。始め。」

セイラの合図と共に空気が一変する。次の瞬間、キィンッ!と鋭い音を響かせながら刃と刃が噛み合い、火花を散らす。そんな鍔迫り合いに笑みを浮かべ、押し合う2人。余裕をみせるトウマがアレンを挑発する。

「アレン、全力でいこう。拙者も全力を出すゆえ。」

「わかったよ!《炎鎧魔法》」

炎が鎧のようにアレンに纏う。アレンの炎に後退するトウマにアレンは追うように剣撃を繰り出す。トウマは迫り来る剣撃に最小限の動きで受け流す。

「当たらない?!」

「動きが単調すぎる。次はこちらからゆくぞ、無我刀魂流 逆魂」

アレンの振り下ろしによる斬撃を弾いたトウマはそのそのまま刃を反転させ、袈裟斬りを繰り出す。その斬撃はアレンの炎の胸甲を深々と斬り込んだ。

「炎鎧が切れた?!でも、このまま!《フレアスラッシュ》」

アレンは勢いに任せた剣でトウマに斬り掛かる。しかしトウマは刀身をわずかに傾け、斬撃を滑らせるように逸らす。

「アレン、その程度なのか?」

「まだまだこれからだよ…!《炎鎧魔法・オーバーフロー》」

アレンが魔法を唱えると一瞬辺りの草を焦がすほどの火柱が上がるが炎鎧魔法はアレンの上半身を覆うままだった。

「あ、あれっ!?」

「まだその力は使いこなせていないみたいだな。これで終いだ。無我刀魂流 静断。」

「マズい…ッ!」

アレンは咄嗟に横へ跳び、転がりながらも回避する。焦りを見せるアレンにトウマは追い打ちをかける。

「無我刀魂流 白牙連」

「う…っ!」

トウマの連撃にアレンは必死に剣でいなす。しかし焦りにより漏れた斬撃がアレンに浅い傷を刻む。

「アレン、焦りすぎた。そして力に頼りすぎている。それが敗因だ。」

トウマがアレンの足を払うとアレンは尻もちをつく。

「…ッ!」

トウマはアレンの首に刃を突きつける。

「そ、そこまでっ!」

セイラの合図に2人の緊張の糸が解ける。アレンは草と土を抉るように拳を握りしめ、悔しさに歯を食いしばるしかなかった。



ギルド セリューディア支部の一室でひとりの中年の男性が報告書を見つめていた。ガルド・グレイディブ。整えられた髭、体は引き締まっており、壁には彼の得物が掛けられている。報告書を読み終わったのか背もたれにもたれ掛かると眉をひそめた。

「光の鎮魂歌、か。そろそろギルドも動き出さなければならないか。」

ガルドが悩んでいると扉が叩かる。

「入ってくれ。」

入室を促すとティーセットを持ったリリアが現れる。

「紅茶を持ってきました、ギルドマスター。」

「ああ、感謝する。」

リリアは手際よく紅茶を注ぎ、ティーカップをガルドの元に運ぶ。

「リリア、後でボイド達を呼んでくれ。彼らに頼みがある。」

「例の組織ですね。」

「ああ。色々と気になることがあってな。」

「でしたら今回の事件の当事者達も同行させては?」

「少し前に入ってきた冒険者だったか。名前は確か…。」

「アレンくん、セイラちゃん、トウマくんです。」

目を輝かせ、食い入るようなリリアの返答に彼はたじろぐ。

「そ、そうか。であればアレン達も呼んでくれ。」

「了解しました。」

リリアは一礼すると部屋を退出した。

「しかし最近は物騒な事が多い。このまま何も起きなければいいのだがな…。」

一息ついたガルドは再び事務作業に取り掛かった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ