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【中編】彼女の過ち



 ◇


 結局私は、退学という形で“まあまあな進学校”を飛び出した。そして流れに流れて、女暴走族(レディース)の一員になった。

 何でそうなったかといえば、アホだからである。


 もっと丁寧(ていねい)に言えば、今さら


「別の学校に入り直そう」


とは思えなかったからだ。

 そのままズルズルと()ちていった。



 気ままで自由な世界だと思ってた。全然違った。



 ちまちまと、くだらないルールが山ほどあった。


総長(そうちょう)の前で豆を食うな」


とか。節分の鬼か?

 なのに、それを教えてくれる人はほぼいなかった。


「紙に書いて出せるだけ、校則(こうそく)ってマシなんや……」


と、声に出るほど痛感(つうかん)した。


 でもって、そんな“暗黙(あんもく)のルール”を破れば、容赦(ようしゃ)なく殴られた。

 頭に来て、返り討ちにしまくってたら、いつの間にか「参謀(さんぼう)ちゃん」と呼ばれるようになっていた。


「何で……?」

「総長にまで頭突(ずつ)きするとか凄いやん! で、参謀って頭使うんやろ? やから“参謀ちゃん”」



 そうですが、そうではないッ!



 ◇


 そして、女暴走族の世界は残酷だった。

 今風にいえば、あの高校よりも“多様性に満ちていた”からだ。


 どちらかといえば、悪い意味で。


「テスト? 全部0点やったわ! 偉いやろ(・・・・) !? 」

「ウチな、ウ〇コで自分の名前書かへんお(とう)ちゃんが欲しい。それだけやねん」

「昔、友達多い子に言われてん。『アンタん()おかしいで? 普通あんなに石とか(つぼ)とかないから』て」


 こんな地獄みたいな話が、当たり前のようにバンバン出てくる世界だった。

 人間、(すご)いよ。個性とか多様性とか、もう十分満ちあふれてるよ。


 それでも、


「個性がない」

「多様性を尊重しましょう」


って言う人たちに()きたい。



 あなたが本当に欲しいのは、何なの?



 ◇


 退学から数か月。私は学校辞めたのを後悔していた。

 でも仲間からは、


「参謀ちゃん最高!」


とか持ち上げられ続けて、すっかり辞め時を見失った。

 気がつけば“県内最強チームのNo.3(ナンバー・スリー)”なんて言われている。深入りし過ぎだ。


 遠征(えんせい)とか言って、県境の山をバイクで越えるようにもなった。

 もちろん無免許だし、道路交通(どうこう)(ほう)違反(いはん)だ。真似(まね)をしてはいけない。



 そして、もうその頃には、警察に目をつけられていたのか?

 白いバイク(しろばい)に追われて、近くの宅地の人に


「すんません、(かくま)ってください!」


てお願いしたことがある。

 親切にも匿ってもらえたのを、すぐに後悔した。


「ホンマに申し訳ないです、ウチなんかの我儘(エゴ)に巻き込んで……」


 白バイがその辺を3周してから去った――音がした――後も、しばらく土下座し続けたのを、よく覚えている。



 ◇


 そして、運命の日が来る。

 県境(やま)の向こうで「最強」といわれていたチームとの、一戦が。



 誰も予想できなかった、地獄(じごく)絵図(えず)に変わる日が――――



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