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ある日私は、革命家という名のテロリストになった。  作者: 水鳥川倫理
最終章、終わりの始まり

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第97話、終わりの始まり

同時刻、技術省大臣・吉岡健太郎(40代、元自衛隊整備士)は、核シェルターの最深部に位置する無菌実験室で、彼の最高傑作『D-W10改級超極超音速ミサイル』の最終調整に挑んでいた。吉岡の周りには、技術省次官の佐藤浩二(30代、航空機整備担当)が、ミサイルの誘導システムに細心の注意を払っていた。


「佐藤次官、D-W10の最終誘導システムの量子コンピューターチップの熱光学迷彩への同期率は?」


「吉岡大臣、完璧です。熱光学迷彩のパターンは、大気圏再突入時のプラズマシースの特性を完全に模倣するように設定しました。アメリカの最新鋭の早期警戒衛星であっても、このマッハ20で飛来するミサイルは、小惑星の群れの一部と誤認識するでしょう」


吉岡は、満足げに頷いた。彼の技術は、神聖日本帝国が世界に誇る唯一無二の武器であった。


「我々の技術の究極の目的は、敵の防御システムに『概念的なノイズ』を発生させることにある。彼らのレーダー、衛星、そしてC4ISRシステム全てが、我々の兵器を『兵器』として認識できない状態を作り出す」


吉岡は、もう一つの傑作、洋上移動要塞『フドウ(不動)』の設計図を広げた。『フドウ』は、従来の空母の概念を覆し、対地・対艦・対空全てに対応する指向性エネルギー兵器(DEW)を搭載し、ステルス加工を施した、文字通りの移動する島である。


「『フドウ』四基の建造は、予定より一ヶ月遅れているが、主要な兵装は間に合う。指向性エネルギー兵器(DEW)の出力は?特に、対艦モードでの連続射撃耐久性についてだ」


佐藤次官は、データを提示した。「 DEWの出力は、理論値を達成しています。しかし、連続射撃は、要塞の小型核融合炉に極度の負荷をかける。連続射撃可能時間は、最大で30分。その後、冷却に2時間は必要です」


吉岡の眉間に皺が寄った。「30分…短い。しかし、それで十分だ。『神威の剣』は、長期戦を想定していない。我々の目的は、太平洋艦隊の『一撃殲滅』だ。斉藤総司令官には、この制約を徹底的に守るように伝える必要がある」


「技術は、常に正義に先行する。そして、唯華様の示す秩序こそが、この世界における唯一の正義だ」吉岡は、静かに呟いた。彼は、技術こそが、人類の未来を決定する絶対的な力だと信じていた。




情報省大臣・山田剛(40代、元公安警察官)の指令室は、闇に包まれていた。彼の仕事は、光ではなく、影の中で行われる。彼は、数千台のモニターを前に、アメリカ全土で展開されているサイバー戦争と心理作戦の状況を、冷徹に監視していた。


「木村、田中。目標は、アメリカの『内部分裂』だ。世論を分断せよ。政府に対する不信感を煽り、彼らの戦意を根底から崩せ」山田は、元公安警察官としての鋭い洞察力で、アメリカ社会の脆弱な亀裂を突いていた。


情報省の内通者である木村(公安警察官)と田中(自衛隊情報本部員)は、それぞれ別の場所から、暗号化された回線を通じて、山田に報告していた。


「山田大臣、作戦『トロイの木馬』は順調です。AIが生成した数百万の偽アカウントが、ソーシャルメディアの政治的な両極端に大量の虚偽情報を流し込み、議論をヒートアップさせています。特に、政府の金融危機とパンデミック対応の失敗に関する捏造データは、国民の政府に対する信頼を著しく損なっています」木村が報告した。


田中も続けた。「軍内部への工作も進んでいます。特に退役軍人コミュニティに対し、政府の現役兵士に対する福利厚生の軽視を煽る情報を流布し、徴兵忌避の雰囲気を醸成しています。最新の世論調査では、対外戦争に対する支持率は、過去最低を記録しています」


山田は、その冷酷な結果に満足した。「完璧だ。彼らの『自由』は、我々が流し込む『偽情報』という毒に対して、あまりにも無防備だ。情報中枢の破壊(E-M02)は、身体の麻痺をもたらすが、この心理作戦は、魂の麻痺をもたらす」


一方、ヨーロッパの戦線では、第4歩兵師団長・佐々木隼人と、ナチス第4帝国の指導者シュタイナー大佐との間で、微妙な緊張関係が続いていた。佐々木(中国大陸の市街戦を生き抜いた精鋭部隊の師団長)は、ミュンヘンの占領地にある臨時司令部で、シュタイナーと並んで、東欧諸国への進軍計画を議論していた。


「シュタイナー大佐。貴軍の突撃戦術は、確かに士気が高い。しかし、ポーランドの機甲部隊は、貴軍の旧式な戦車では、正面から突破は困難です。我々のT-99を先行させ、電子戦で敵のC4ISRを無力化した後に、貴軍の歩兵を投入すべきだ」佐々木は、合理的な戦術を提示した。


シュタイナーは、その提案に不満そうな顔を見せた。「佐々木師団長。我々の突撃は、単なる戦術ではない。それは、古き大ドイツの『意志』の体現だ!貴国はその技術で我々を支援するだけでいい!我が軍の栄光を、貴国の機械に奪われるのは我慢ならん!」


佐々木は、冷ややかにシュタイナーを見つめた。「大佐。唯華様は、勝利という『結果』のみを求めている。貴軍のイデオロギー的勝利は、我が国の戦略にとって何の価値もない。貴軍の『意志』は、T-99の装甲とWA-P弾の効率性によって、初めて価値を持つことを忘れないでいただきたい」


この東洋の冷徹な現実主義と、ヨーロッパの熱狂的な狂信主義の間の緊張こそが、神聖日本帝国の次の戦争への隠された武器となっていた。世界は、この二つの悪夢のような勢力の間の協調を信じ、その間に、神月唯華の『神威の剣』は、研ぎ澄まされていた。

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