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ある日私は、革命家という名のテロリストになった。  作者: 水鳥川倫理
血と鉄の断罪と世界への胎動

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第95話、血と鉄の断罪と世界への胎動

二ヶ月の電撃的な進撃は、ライン川からエルベ川へと続く道を、硝煙と鉄の墓標に変えた。神聖日本帝国軍と、ナチス第4帝国軍の連合部隊は、欧州中央の枢軸、ベルリン郊外まで迫っていた。


ドイツ連邦政府は、ラジオを通じて国民へ最後の抗戦を呼びかけたが、その声はすでに廃墟の街には届かず、主要な都市はナチス第4帝国の手に落ち、組織的な抵抗は不可能となっていた。最後に残されたのは、ベルリン市内の堅固な市街地防御線。それは、第三帝国の残した地下壕や、厚い鉄筋コンクリートの建物を利用した、地獄のような防御陣であった。


夜半、廃墟となったプレンツラウアー・ベルク地区。冷たい11月の風が、焼けたコンクリートの粉塵を巻き上げ、全てを灰色に染め上げる中、第4歩兵師団長・佐々木隼人の部隊は侵攻を開始した。佐々木の表情は、中国大陸の地獄のような市街戦を生き抜いた者特有の、感情を排した冷徹さで満たされている。


「連邦軍は、旧時代の戦術しか知らない。我々が経験した三次元的な市街戦の恐ろしさを知らぬ!」


臨時指揮所。佐々木は、瓦礫の上に組まれた戦術モニターの前に立っていた。画面には、彼が「電子の目」と呼ぶ掌サイズの偵察ドローン「K-01」からのリアルタイム映像が映し出されている。


「K-01、高層ビルの2階部分を再スキャン。窓枠のわずかな熱源、塵一つ見逃すな。隠れた狙撃兵と対戦車部隊を排除せよ!」


指示と共に、数百機のK-01が超低空で音もなく闇に溶け込んだ。その映像を解析した人工知能が、壁の背後に潜む連邦軍の対戦車擲弾兵の輪郭を赤く浮かび上がらせる。


「T-99、A-3ポイント。目標、隠れたる対戦車陣地。貫通徹甲弾(APFSDS)用意」


T-99戦車の主砲が、閃光と共に火を噴いた。砲声は、神聖日本帝国軍の高性能な消音技術によって、連邦軍の砲撃音に紛れて、市街地の喧騒の一部と化していた。しかし、通常の戦車の三倍の速度で発射された次世代型APFSDS弾は、厚さ1メートルを超す鉄筋コンクリートの建物を豆腐のように貫き、内部の抵抗を一瞬で無力化する。


帝国軍の兵士たちは、特殊消音化されたAR-S5突撃銃を手に、K-01が示す「敵の熱源」に向かって、機械的に弾を送り込み続けた。彼らの頭部に取り付けられた高性能な夜間暗視装置は、ベルリンの闇を、緑色のクリアな戦場へと変貌させていた。一方、連邦軍の兵士たちは、旧式の暗視装置と、未だにソ連時代のライフルに頼って、見えない敵、聞こえない死と戦うしかなかった。


戦闘は激烈を極めた。血、硝煙、そしてコンクリートの破片が入り混じる地獄の三週間。しかし、冷徹な技術力と、それを最大限に活かす佐々木師団長の経験によって、連邦軍の抵抗は徐々に、そして確実に摩耗していった。


作戦開始からちょうど3ヶ月目の夜明け前。最後の防衛線が崩壊した。ナチス第4帝国軍の狂信的な突撃が道を切り開き、そこに神聖日本帝国軍のT-99部隊がなだれ込む。連邦政府の主要閣僚は、かつての通信センターの地下深くに潜んでいたが、佐々木の部隊によって発見され、震えながら拘束された。ドイツ連邦共和国は、この瞬間をもって、その歴史に終止符を打った。


ベルリンの陥落直後。ナチス第4帝国の指導者、ルドルフ・シュタイナー大佐は、炎と硝煙に覆われた旧帝国議事堂の崩れた階段に立った。


「ここに、我々『第4帝国』の聖地が築かれる!」


彼の狂信的な宣言は、拡声器を通じてベルリン全土に響き渡る。彼の背後には、神聖日本帝国の旭日旗と、ナチス第4帝国の新しい旗が、冷たい風に翻っていた。それは、第二次世界大戦の亡霊が、極東の冷酷な技術を伴い、ヨーロッパに蘇った瞬間であった。




ベルリン陥落から一週間。


東京の最高指導者邸の地下作戦会議室は、静寂に包まれていた。磨き上げられた黒曜石のような会議テーブル、薄暗い間接照明。そこは、冷徹な未来を設計するための「技術の神殿」であった。


唯華は、特別に準備された暗号化回線を通じて、モニターの向こうにいるルドルフ・シュタイナー大佐と、初の公式会談に臨んでいた。


シュタイナーは、ベルリンの旧帝国議事堂の臨時作戦室に陣取っており、その背景は、瓦礫の中から掘り出された歴史と狂信の匂いを漂わせる。彼の左右には、忠実な将校たちが、微動だにせず立っていた。一方、唯華の隣には、美咲と斉藤総司令官、そして外交省大臣の藤原浩司が控え、厳粛な雰囲気が漂っていた。


「シュタイナー大佐。貴国は、我々が予想した以上の迅速さでヨーロッパ中央に橋頭堡を築いた。その狂信的な実行力に、敬意を表する」唯華は、まず日本語で静かに述べた。彼女の美貌は、高解像度のモニター越しでも、一切の感情を読ませない氷の彫刻のようだった。


シュタイナーは、唯華の冷たい美しさ、そしてその背後に透けて見える圧倒的な権威に、内心の興奮を抑えながら、早口のドイツ語で応じた。「神月最高指導者。貴国の迅速かつ冷徹な支援に、心より感謝する。特にT-99の電子戦能力なくして、連邦軍の組織的な抵抗を破ることは困難だった」


唯華は、本題に入った。「我々の関係は、単なる戦術的協力で終わるべきではない。我々の共通の敵は、全世界、特にアメリカ合衆国が主導する、腐敗した既存の『世界秩序』にある」


「全く同感だ!」シュタイナーは、激しい声で応じた。彼は、テーブルを拳で叩く衝動を抑えた。「彼らの偽善的な民主主義は、世界を弱体化させた。我々『第4帝国』は、古き大ドイツの栄光を再建し、ヨーロッパをその支配から解放する!」


唯華は、静かにシュタイナーの熱狂を断ち切った。「貴国のイデオロギーは、貴国自身の問題だ。だが、世界を再編するという目標においては、我々は完全に一致する。故に、ここに、神聖日本帝国と、ナチス第4帝国との間に、軍事・経済同盟を締結することを提案する」


外交省大臣・藤原浩司が、モニター越しに静かに、そして流暢なドイツ語で補足した。「この同盟は、単なる友好協定ではありません。両国は、互いの技術と資源を、完全に共有します。特に、貴国が抱える核兵器の無力化技術、そして我々の『T-99』戦車に集約された複合装甲、熱光学迷彩、そしてネットワーク統合技術の全てを交換の優先事項とします。また、来るべき対米最終戦争における、相互防衛義務と、兵站ルートの優先権を確立します」


技術の共有、それはシュタイナーにとって、彼の夢である『第4帝国』の永遠の存続に不可欠な、魂を売るに等しい誘惑であった。技術なくして、狂信はただの過去の亡霊に過ぎない。


「承知した。ナチス第4帝国は、神聖日本帝国との同盟をここに締結する。我々は、共に、腐敗した世界を破壊し、新しい、鋼鉄の秩序を世界にもたらす!」シュタイナーは、敬礼した。


ここに、第二次世界大戦の亡霊と、アジアの新しい冷酷な覇者が手を結んだ。世界地図は、瞬く間に二つの赤い勢力圏に塗り分けられ、全世界は、極東からの冷たい旭日と、ヨーロッパからの狂信的な鉤十字の連合軍という、最悪の悪夢に直面することとなった。


唯華は、モニターを閉じ、美咲に静かに命じた。


「美咲。これで、我々の『神威の剣』作戦は、単なるアジアの地域戦争ではなく、世界大戦へと変貌した。しかし、ヨーロッパという橋頭堡と、彼らの狂信性という『盾』を得たことで、勝利の確率は飛躍的に高まった」


「はい、唯華様。シュタイナー大佐の狂信性は、我々の冷徹な技術を隠す、完璧な『盾』となります。世界は、まず彼らを敵と見なし、その間に我々は、準備を整える」美咲は、美しく微笑んだ。


唯華は、東京の夜明け前の光景を見下ろした。太陽はまだ地平線の下だが、彼女の瞳には、既にその光よりも強大な決意が宿っている。


「斉藤総司令官。ナチス第4帝国との同盟を前提とし、『神威の剣』作戦を再立案せよ。目標は、アメリカ全土。渡辺、兵站線をベルリン経由で確保しろ。もう、後戻りはしない。この作戦をもって、我々は、全世界の敵となり、そして、全世界の支配者となる」


最高指導者・唯華の冷徹な決意こそが、世界を覆い尽くす、新たなる戦火の始まりを告げる、静かな号砲となったのである。神聖日本帝国は、この日、全世界を敵に回す、最後の、そして最も非情な一歩を踏み出した。

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