表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ある日私は、革命家という名のテロリストになった。  作者: 水鳥川倫理
血と鉄の断罪と世界への胎動

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

90/103

第89話、血と鉄の断罪と世界への胎動

神聖日本帝国による電撃的な勝利、「嵐の目」作戦と「天翔ける剣」作戦の終結から三週間後。世界は、アジアの勢力図が一夜にして塗り替えられたという冷酷な現実を、まだ完全に消化しきれていなかった。韓国はわずか24時間で屈し、中国は5ヶ月の泥沼の末、その心臓部を奪われ降伏した。敗北した両国の政治・軍事指導部を待っていたのは、国際法や慣例を無視した、神聖日本帝国流の「断罪」であった。


最高指導者・唯華は、この断罪を単なる復讐ではなく、神聖日本帝国の新たな秩序の永続性を世界に刻み込む、神聖な儀式と捉えていた。それは、旧時代の権威を公然と打ち砕き、新しい力の絶対性を確立するための、血と鉄による誓約であった。




韓国軍事裁判の舞台は、屈辱と敗北の象徴として、ソウル市中心部の旧大統領府、青瓦台の敷地内に特設された。


かつて数々の歴史的な会談が行われた青瓦台の威厳ある本館は、今や神聖日本帝国の軍旗——鮮血のような赤と曇り一つない純粋な白の旭日旗——が掲げられ、その前に広がる芝生には、黒い鋼鉄と強化ガラスで構築された仮設裁判所が設置されていた。その冷たい、無機質な構造は、旧大統領府の優雅な瓦屋根と青い壁との間に、埋めようのない断絶の象徴として聳え立っていた。


裁判の開始時刻である早朝6時。空はまだ暗く、摂氏0度を下回る冷たい風が吹く中、最高指導者・唯華は、特別席の最上座に着席した。彼女の席は厚い防弾ガラスで覆われ、室内には暖房が完備されていたが、その冷徹な美貌には一切の感情が排され、周囲の寒気すら寄せ付けない絶対零度の威厳を放っていた。


唯華は、真紅の軍服を完璧に着こなし、その黄金に輝く階級章は、夜明け前の薄闇の中で唯一の光を捉えていた。彼女の眼差しは、目の前に並ぶ敗者を単なる人間ではなく、新秩序を築くための足場、あるいは腐敗した旧体制の残骸としてのみ捉えていた。彼女の隣には、副官の佐藤美咲が、タブレットと通信機材を前に、機械的な正確さで控えている。


裁判官席には、国家評議会議長である佐々木賢治と、軍律および技術顧問数名が、重厚な神聖日本帝国の威厳を背負って座した。佐々木議長は、元巨大財閥のトップという経歴を持つだけに、その表情には法的裁定というより、無益な不良債権を粛々と処理する経営者の冷酷さが滲んでいた。


被告人席には、敗戦により拘束された韓国の元大統領、元国防部長官、陸海空軍の元最高司令官ら十数名が、深紅の絨毯の上に、憔悴しきった表情で並べられていた。彼らは、戦闘で泥に塗れたままの軍服や、皺だらけのスーツ姿であり、その顔には、一瞬で国家と名誉を失った深い絶望と、自身に下される運命への底知れない恐怖が滲んでいた。


議長である佐々木賢治が、重厚な木槌を、床に響くほどの衝撃で一度叩きつけた。


「これより、神聖日本帝国・特別軍事法廷による、大韓民国旧指導部に対する公判を開始する」佐々木の声は、年長者特有の落ち着きと、元大手企業経営者としての冷徹な事務処理能力を併せ持っていた。彼の視線は、被告人一人一人を査定するように見下ろした。「被告人らは、五年前の神聖日本帝国(旧西日本政府)に対する宣戦布告、固有領土(竹島、対馬)の不当占領、およびそれに伴う民間人への不当な侵害行為、さらに本戦役における非人道的な抵抗、そして戦時国際法の重大な違反の罪に問われる」


この法廷に、弁護士は存在しない。彼らに与えられた権利は、過去五年間における彼らの全行動が記録された、膨大な情報省のデータ(彼らが自国の防衛として行った全ての決定)を閲覧し、その真偽を、証拠に基づき尋ねる権利のみであった。彼らの抗弁の言葉は、既に敗北によって無効化されていた。


最初の証人として、情報省大臣・山田剛が進み出た。彼は法廷の空気に慣れたプロフェッショナルであり、その態度は淡々としていた。


「証拠提示に移ります」山田は、落ち着いた声で、しかし内なる冷酷さを隠さずに述べた。「情報省の分析により、貴職らが五年前に行った対日侵攻作戦は、国際的な調停の余地を完全に排除した、一方的な侵略行為であったことが確定しています。特に、対馬占領後、貴職らが非戦闘員である日本国民に対して行った強制労働、不当な拘束、および数件の集団暴行の事実についても、証拠を提示します」


山田が操作するメインモニターには、暗号を解除された韓国軍内部の通信記録、占領地での監視カメラ映像の断片、そして、それらの非人道的行為に関する詳細な報告書が次々と映し出された。証拠の映像はモザイク処理されていたが、その音声と証言は、非難の余地なく冷酷な事実を突きつけた。


元国防部長官が、激しく動揺し、叫んだ。「それは捏造だ!我々は国際法を遵守していた!日本の扇動者による虚偽の報告だ!」


その感情的な叫びに対し、佐々木議長は一瞥もくれず、冷静沈着に続けた。「発言を許可していない。静粛に。山田大臣、続けてください。法廷に感情的な弁明の余地はない」


次に、兵站省と技術省を兼任する副官、佐藤美咲が静かに立ち上がった。彼女は、モニターを唯華と共有する自宅の部屋から、暗号化された回線を通じて、立体映像として裁判所に映し出されていた。そのホログラムは、実体よりもさらに冷たい、完全な論理の存在に見えた。


「私は、兵站省及び技術省を代表し、被告人らの戦略的無能性を指摘します」美咲の声は、機械のように正確で、一切の感情の抑揚がなかった。「貴職らは、五年にわたり神聖日本帝国軍の技術開発動向を軽視し、旧世代の兵器に対する過信を捨てませんでした。その結果、本戦役において、貴職らの指揮系統はE-M02『雷針ライシン』と呼ばれる超広域電子妨害システムにより、開始後わずか10分で完全に麻痺しました」


彼女は続けた。


「また、貴職らの主力を成す戦車部隊は、我が国の新型主力戦車T-99『鉄騎』が発射したWA-P弾(タングステン合金徹甲弾)の前に、装甲を貫かれ、内部から溶解され、抵抗すら許されませんでした。技術的優位性を無視し続けた貴職らの愚鈍な判断は、貴国兵士数万人の無益な死を招いた主因であり、国家指導者としての最も重大な罪です。貴職らは、戦術ではなく、技術の差によって断罪されるべきです」


美咲の冷徹な断罪は、被告人らの最後の抵抗の意志さえも打ち砕いた。元大統領は、自分の国の兵士たちを無駄死にさせたという美咲の指摘に、深い後悔と屈辱で首を垂れるしかなかった。


佐々木議長は、全ての証拠と、被告人らの弱々しい反論を聞き終えると、唯華に視線を送った。唯華は、誰もが息を飲むほどの緩慢さで立ち上がった。その姿は、夜明け前の薄暗い光の中で、まるで神殿の彫像のように、冷たい威厳を放っていた。法廷内の空気圧が、目に見えない力で高まったように感じられた。


「判決を、下す」


唯華の声は、マイクを通してもなお、囁くような低さであったが、その一語一語は、鋼鉄の鉄槌のように重く、被告人らの魂に突き刺さった。


「大韓民国元大統領、及び元国防部長官、元陸海空軍司令官ら、被告人全員に対し、五年にわたる我が国への侵略行為、固有領土の不当占領、民間人への非人道的侵害、および戦略的無能による無益な戦闘継続による国民への裏切りの罪を問う」


彼女の瞳は、まるで遠い未来を見据えているかのように、被告人らを射抜いた。


「この罪状に対し、神聖日本帝国は、一切の寛容を認めない。その命をもって、貴国が我が国へ与えた屈辱と、無駄に流された血の代償を払わせる」


「判決は、死刑である」


その瞬間、被告人席の一部が騒然としたが、斉藤隆一総司令官が指揮する屈強な親衛隊兵士たちによって、一瞬にして静粛が取り戻された。兵士たちは、感情の欠片もない人形のように動いた。


判決から一時間後。


処刑は、青瓦台の裏手にそびえる北岳山プガクサンの麓で、公開されることなく極秘裏に執行された。処刑場には、軍服姿の斉藤総司令官、田中副総司令官、そして選抜された衛兵のみが立ち会った。現場は、深く冷たい森の静寂に包まれていた。


元大統領は、最期に家族へ、あるいは国民へ、何かを叫ぼうと口を開いたが、斉藤総司令官は、その言葉が外に漏れることを許さなかった。彼は、自身の右手に巻かれた特殊合金製の手袋を掲げ、冷徹な命令を下した。


「粛清せよ。神聖日本帝国の秩序は、感傷によってではなく、血と鉄によってのみ、永遠に確立される」


衛兵たちが、一斉に発砲した。銃声は、北岳山の冷たい静寂の中に、乾いた、響きのない音を立てて木霊し、そしてすぐに消え去った。


この冷酷な断罪は、ソウルの街に新たな支配者の影を落とし、神聖日本帝国による絶対的な統治の時代の、血塗られた始まりを告げるものであった。世界は、この出来事を、新しい「法」の確立として、震えながら受け入れることになった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ