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ある日私は、革命家という名のテロリストになった。  作者: 水鳥川倫理
第2章、腐敗の黄昏と冷徹なる日の出

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第84話、腐敗の黄昏と冷徹なる日の出

5年の歳月は、東京の傷跡を深い記憶の底に押し込め、都市は鋼鉄と硝子による新たな、冷徹な秩序の下で再建されていた。最高指導者邸の地下深く、核シェルターを兼ねたその作戦会議室は、外界の喧騒とは無縁の、研ぎ澄まされた緊張感に満ちていた。

部屋の中央には、黒曜石のような光沢を放つ巨大なテーブル。その周りを、神聖日本帝国の最高指導部が、彫像のように静かに囲んでいる。彼らの視線の先にあるのは、メインモニターに映し出された四つの点——竹島、対馬、尖閣諸島、そして沖縄諸島の一部。かつては固有の領土でありながら、五年の間、韓国と中国によって不当に占領されたままとなっていた、屈辱の象徴であった。


唯華は、そのテーブルの最上座に、一切の感情を排した冷たい美貌を晒し、着席していた。彼女の瞳は、内戦を勝ち抜き、国家を再建した指導者としての、絶対的な決意を映していた。その声は低く、そして澄んでいたが、以前の戦時下でさえ時折見せたかすかな揺らぎは、完全に消滅していた。

「…美咲。全準備が完了したことを、報告せよ」


唯華の呼びかけに、兵站省と技術省を兼任する最高幹部、美咲が、まるで軍事コンピューターのような正確さで応じた。その声には、一糸の乱れも、私的な感情の入り込む余地もなかった。

「はい、唯華様。兵站省は、全ての軍用物資の備蓄を、規定量の三倍をもって完了。技術省は、新兵器の最終調整を、全て認証コード『パーフェクト』にて完了させました。また、復興と旧体制の徹底的な断罪の成功により、国民の士気は、現体制発足以来、極めて高い状態を維持しております」


美咲の冷徹な報告が終わり、次いで、軍服に身を包んだ威圧的な体躯の持ち主、総司令官・斉藤隆一が、一歩、テーブルの縁に進み出た。

「総司令官、斉藤隆一、最終報告いたします。全陸上戦闘部隊は、第三世代主力戦車T-99、および限定的なステルス性能を持つ歩行戦闘車両K-01の運用訓練に習熟。航空戦闘部隊は、国産最新鋭ステルス戦闘機F-J35による制空戦闘訓練を、徹底的に完了させました。さらに、特殊作戦部隊は、中村健太部隊長の指揮の下、標的への潜入・破壊工作シミュレーションを、完璧な成功率をもって実施済みであります。唯華様。『再建の光作戦』は、いつでも開始可能な状態にあります」


報告を聴き終えた唯華は、静謐な面持ちで、ゆっくりと頷いた。彼女は、もはや言葉を弄さなかった。モニター上の、赤い線で囲まれた占領地へ、彼女の指先が、まるで愛しいものを労わるかのように優しく触れた。

「よし。美咲。各師団への最終指示を。『再建の光作戦』を開始する。まず、占領された固有の領土を、全て奪還する。これは、最終決戦への布石だ。失われた領土は、血と鉄をもって、断固として取り戻す」


作戦は、敵の警戒が最も緩むとされる夜明け前の午前4時、最も濃密で、全てを覆い隠す「濃密な闇(Dense Darkness)」の中で開始された。


第一次攻撃目標:対馬奪還(加藤勇作師団長)

第1歩兵師団長・加藤勇作の部隊と、第1機甲師団(T-99、K-01装備)は、高速強襲揚陸艦のハッチが開ききるよりも早く、猛烈な速度で海岸へと殺到した。加藤は、無駄な流血、無益な戦闘を極度に嫌う、効率を至上とする戦術家であった。


「敵は、我々が五年間で開発した新兵器の真の性能を、全く知らん!電子戦妨害装置E-M02の展開が完了次第、奴らの全ての通信網を麻痺させろ!K-01、先陣を切って突入せよ!そのステルス性能と静音性を最大限に活かせ!お前たちは、『見えない剣』となれ!」


上陸直後、海岸線から遠く離れた海域に展開していた電子戦艦から放たれたE-M02による強烈な電波妨害は、韓国軍の沿岸防衛レーダー網を、瞬時に、そして完全に、砂嵐の中へと飲み込ませた。夜間の奇襲と相まって、韓国軍は、まるで暗闇の中で手足と口を縛られたように、組織的な対応も、指揮系統の確立も不可能となった。

先陣を切ったK-01部隊は、その限定的なステルス性能により、韓国軍の哨戒網を幽霊のようにすり抜け、彼らが拠点とする防衛陣地へと、音もなく、だが確実に浸透した。夜陰と混乱に乗じた日本帝国軍の攻撃は、極めて一方的であった。抵抗の意志を失った対馬の韓国軍守備隊は、わずか2時間で組織的な抵抗を完全に停止し、降伏を表明した。加藤師団長が目指した通り、この奪還作戦は、奇跡的な「無血」勝利をもって完了した。


第二次攻撃目標:尖閣諸島基地破壊(中村健太特殊作戦部隊長)

「再建の光作戦」の中で、最も危険で、そして最も沈黙を要求される任務は、尖閣諸島奪還を担う、特殊作戦部隊(中村健太部隊長)の潜入班に託された。中村健太は、「影の総司令官」の異名を持ち、神聖日本帝国軍において、潜入工作における最強のエキスパートと目されていた。


潜入班は、母艦から分離した超小型潜水艇に乗り込み、水面下の暗闇を利用して、静寂を保ったまま尖閣諸島の無人島に上陸した。中国軍が数年をかけて秘密裏に建設していた軍事基地への破壊工作が、ここから開始された。

「ターゲット、レーダーサイト。コードネーム『天眼』。処理を完了次第、即時離脱。決して、音を立てるな。我々は、最初からここに存在しなかった」

中村部隊長の指示は、微細な雑音さえ許さない、静かで、冷たさの極致であった。彼の部隊は、最新のデジタル暗視装置と、特殊な消音技術が施された装備を駆使し、中国軍の弛緩しきった警備を、まるでそこに空気がないかのようにすり抜けた。

標的の心臓部である高性能レーダーサイトに到達した彼らは、時限式高性能爆薬を正確に設置した。次の瞬間、閃光と共に、中国軍の「天眼」レーダーサイトは轟音を上げることなく、内側から崩壊した。そこに展開していた中国軍の守備隊は、わずか20名。彼らは、特殊作戦部隊の精密かつ非情な攻撃の前に、抵抗する間もなく制圧され、捕虜となった。中国大陸が、その重要拠点崩壊の報を知るのは、陽が昇りきった数時間後のことであった。


第三次攻撃目標:沖縄の一部奪還(山本剛師団長)

第2歩兵師団長・山本剛の部隊は、沖縄に展開していた韓中合同部隊への夜間強襲作戦を実行した。米軍の撤退以来、この合同部隊は、警戒を怠り、まるで占領地での長期休暇のような弛緩と慢心に浸りきっていた。

「夜間戦闘のエキスパートである我々が、この島を解放する光となる!夜陰に紛れ、一網打尽にせよ!唯華様の名の下に、この腐敗した敵を一掃する!」

山本師団長率いる部隊は、最高精度の夜間暗視装置と、特殊消音化された突撃銃AR-S5を装備し、占領軍の兵舎へと、影の波となって押し寄せた。戦闘は、一方的な粛清の様相を呈した。銃声は、わずかな「プッ…プッ…」という消音された乾いた音だけであり、兵舎の中で眠っていた合同部隊は、ほとんど抵抗する暇もなく、次々と制圧され、捕虜となっていった。彼らが、己の陣地で一体何が起こったのかを完全に理解する前に、神聖日本帝国軍の威厳ある軍旗が、夜明けの光を浴びながら、占領軍の兵舎の上に高らかに掲げられた。


占領地奪還から12時間後。世界が、神聖日本帝国の電撃的な作戦の報に震撼し、その冷酷な効率性に息をのむ中、唯華は、最高指導者邸の地下深くの作戦会議室から、国際社会に向けての声明を発表した。

彼女の背後には、闇夜に金色に輝く神聖日本帝国の威厳ある軍旗。その顔は、勝利の陶酔ではなく、冷徹な美しさと、絶対的な意志に満ちていた。その眼差しは、カメラのレンズを通し、全世界を射抜いた。


「諸君。本日、我々神聖日本帝国は、不当に占領されていた固有の領土を、軍事力を以て解放した。この五年間、我々は国家の平和的な再建に専念したが、主権を侵害され続けるという国家の屈辱を、もはやこれ以上容認することはできない」


唯華は、一度、深く、息を吸い込んだ。そして、宣言した。

「今、この瞬間をもって、神聖日本帝国は、大韓民国、中華人民共和国に対し、宣戦を布告する」

その言葉は、凍てつく刃のように、電波に乗って世界中に響き渡った。

「我々の目的は、失われた領土の完全な回復、及び、これ以上アジアの平和を乱すことのないよう、両国の軍事力の完全な無力化である。この戦いは、旧体制の腐敗と、隣国の侵略を断ち切るための、聖戦である!」


宣戦布告のニュースは、世界中のニュースチャンネルのテロップを占拠し、全世界に衝撃を与えた。特に、五年の沈黙を破った、あまりにも冷酷な「戦争宣言」は、韓国と中国にとって、最も予測し得なかった悪夢となった。彼らは、ただ領土を奪われただけでなく、自国の軍事力と情報網が、一夜にして神聖日本帝国の新兵器と効率的な戦略によって、完全に時代遅れのものとなったことを、この瞬間に思い知らされることとなった。唯華の瞳に宿る光は、再建された日本の、新しい、恐るべき時代の到来を告げていた。

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