第83話、腐敗の黄昏と冷徹なる日の出
技術省大臣吉岡が主導する兵器開発は、単なる軍事力の増強ではなく、神聖日本帝国がアジアの覇権を掌握するための「勝利の意志」を具現化する神事であった。彼が率いる技術チームが、古都の地下深く、厳重なセキュリティのもとで生み出した兵器群は、既存の戦術思想を根底から覆すものばかりだ。吉岡の冷徹な眼差しは、常に未来の戦場を見据えていた。
陸の支配者:T-99主力戦車
全ての陸上戦闘車両の頂点に立つのは、T-99主力戦車(Type-99 MBT)である。この重戦車は、前身であるT-90が唯一抱えていた戦術的弱点——それは西側諸国の主力兵器である劣化ウラン弾に対する防御力の限界——を、徹底的に克服するために設計された。吉岡は、設計陣に対し「絶対的な防御」を至上命令として課した。
彼の研究チームは、三日三晩、開発施設に籠もり、チタン・セラミック複合装甲の配合を根本から見直した。生み出された新たな装甲配合は、ナノレベルで構造化され、着弾時のエネルギーを即座に拡散・吸収する驚異的な特性を持つ。その結果、T-99の車体前面は、敵が現在保有するいかなる現行の劣化ウラン弾の貫通をも許さない、絶対的な防御力を誇る「鋼鉄の障壁」と化した。敵の放つ弾は、T-99の前にあっては、まるでガラス玉が鋼鉄の壁にぶつかるかのように無力化される運命にある。
そして、この鉄壁の守りには、相応の攻撃力が伴う。主砲は、従来の125mm滑腔砲の常識を打ち破り、より高初速、より高威力を追求した135mm長砲身滑腔砲へと換装された。砲口が閃光を放つとき、戦場に支配者の宣言が響き渡る。この大砲が射出するのは、新型のタングステン合金徹甲弾(WA-P)である。WA-P弾は、その運動エネルギーが最大となる設計が施されており、西側諸国の最新鋭戦車、M1エイブラムスの改良型の厚い装甲をも確実に打ち砕く、「神聖日本帝国軍の鉄の拳」となった。
機甲科のトップエキスパートである師団長、吉田 悟、青木 健太、村田 隆司らは、T-99の圧倒的な性能を前に、その運用に全身全霊を捧げた。彼らにとって、T-99は単なる金属の塊ではない。それは、古代から受け継がれてきた武士の精神、帝国の「勝利の意志」を体現する存在として、熱狂的に崇拝された。彼らはT-99のキャタピラが大地を軋ませる音に、未来の勝利の確信を聞いていた。
影の歩兵輸送:K-01装甲戦闘車
T-99の剛直な前進を側面から支えるのは、静かなる侵入者、K-01装甲戦闘車(Katana-01 IFV)だ。元となったBMP-3の優れた機動力を維持しつつも、K-01は設計思想において、全く異なる次元へと進化を遂げた。車体表面には、光沢を抑えたレーダー吸収素材が部分的に使用され、その効果は、完全ではないにせよ、敵の偵察機やドローンの電波的な「目」から、その存在を隠す限定的なステルス性を付与していた。
K-01の行動規範は、「敵に気づかせず、敵の懐深くに歩兵を送り込む」という、奇襲と浸透を極度に重視したものであった。戦場における静けさと迅速性が、この車両の最大の武器だ。武装は、歩兵制圧に絶大な効果を発揮する30mm機関砲に加え、改良を重ねた対戦車ミサイル(AT-M4)を搭載。これにより、K-01は単なる歩兵支援に留まらず、奇襲的な敵戦車の側面攻撃にも対応可能となった。T-99と連携し、敵の防御が薄い隙を突くことで、K-01は戦場のあらゆる脅威に対応する万能性を確立した。
空の絶対支配:F-J35多用途戦闘機
吉岡大臣は、陸上兵器だけでなく、空の覇権にも抜かりなかった。F-J35多用途戦闘機(Fighter-Japan 35)は、米軍の象徴であるF-22やF-35に対抗するために、国家の威信をかけて開発された国産第5世代ステルス戦闘機である。
設計には、ロシアのSu-34から得られた技術的知見が応用されたが、F-J35はそれを遥かに凌駕する革新を遂げた。機体の大部分に炭素繊維複合材を多用することで、大幅な軽量化が実現し、結果として驚異的な高いステルス性を獲得。レーダー波を呑み込み、夜空に溶け込むその機体は、まさに「見えない剣」であった。吉岡がこの戦闘機に託したのは、米軍撤退後のアジアの空における「絶対的な制空権」の確保であり、F-J35は帝国の航空優位を象徴する存在となった。
その長い航続距離は、作戦範囲をアジア全域へと拡大させ、さらに後述する対艦ミサイルD-W10の運用能力も備える。これにより、F-J35は空からの支配を海へと広げ、アジアの空において最も強力な制空・制海兵器としての地位を確立した。軍は直ちに戦闘機師団(5個師団、合計60機)を再編。選ばれたパイロットたちの訓練は、機械の性能を極限まで引き出すため、人間の限界を超えた領域まで追い込まれ、一機の戦闘機に乗り込む者が、数万人の命運を握るという重責を背負った。
電撃戦の心臓部:E-M02とD-W10
現代戦における最大の脅威は、情報空間の脆弱性である。この支配を可能にしたのが、情報省大臣山田 剛と吉岡大臣が共同開発した、E-M02情報戦システム(Epoch-M02 EW System)である。これは、電子戦システムの結晶であり、その発動は敵の組織的な抵抗を一瞬にして無力化する。
E-M02は、敵の通信、レーダー、GPS信号を標的とし、それらを大規模にジャミングし、完全に麻痺させる能力を持つ。特に、韓国や中国のような、高度にネットワーク化された軍隊に対し、彼らの「目と耳」を奪い取ることを目的としていた。すべての情報は乱れ、指示系統は途絶、兵器は目標を見失う。吉岡の盟友である唯華は、このE-M02システムこそ、来るべき対韓・対中戦において、敵が反撃する間もなく勝利を確定させるための「電撃戦」を可能にする、最も重要な戦略兵器であると確信していた。
そして、海からの侵攻を永遠に阻止する最終兵器、D-W10対艦弾道ミサイル(Dragonfly-W10 ASBM)。これは、長距離から敵の大型艦艇(空母、強襲揚陸艦など)を攻撃するために開発された、海上の絶対的拒否権行使のための兵器だ。終末誘導には、技術省独自のAI誘導システムが採用されており、ミサイルは最終段階で驚異的な機動を行い、極めて高い命中精度を誇る。D-W10は、海からの侵攻を試みるいかなる敵に対しても、絶対的な拒否権を行使するための、神聖日本帝国の「海の槍」として、世界の海軍力を塗り替える存在となった。




