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ある日私は、革命家という名のテロリストになった。  作者: 水鳥川倫理
絶望と動乱と混沌と。

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第69話、絶望と動乱と混沌と。24

岩国基地の鹵獲成功は、神聖日本帝国の軍事力増強に大きな弾みをつけた。鹵獲した最新鋭の航空機や艦船は、直ちに神聖日本帝国の戦力に組み込まれ、来るべき「暁の雷鳴」作戦に向けて、さらなる訓練が開始された。作戦決行は、5月。残された時間は、わずかだった。


唯華は、岩国基地の鹵獲報告を受けると、満足げに頷いた。その瞳には、勝利への確信が宿っていた。


「よくやった、中村部隊長。これで、我々の戦力は飛躍的に向上した。だが、まだ目標の3万両の戦車、5万両の戦闘車両、2万機のヘリ、5万機の戦闘機、1万機の爆撃機、100万丁の銃火器、1000隻の上陸艇、300隻の駆逐艦、軍艦、空母には届かない。兵站省、技術省、引き続き最大限の努力を払え。5月までに、必ず目標を達成するのだ」


唯華の言葉は、幹部たちの士気をさらに高めた。彼らは、唯華の期待に応えるべく、さらに奮起した。



兵站省は、海外の同志たちとの連携をさらに強化し、大型輸送船団による兵器の輸入を加速させた。ロシアや旧ソ連圏の国々から、T-90戦車、BMP-3歩兵戦闘車、MiG-29戦闘機、Su-34爆撃機、Ka-52攻撃ヘリコプターなどが、次々と運び込まれた。これらの兵器は、神聖日本帝国の戦術思想に合致しており、既存の兵器と連携して運用することが可能だった。輸送ルートは多岐にわたり、海上だけでなく、シベリア鉄道を経由した陸路での輸送も行われた。


国内の工場では、生産ラインが24時間体制で稼働し、戦車や戦闘車両、銃火器の生産が続けられた。特に、北海道や東北地方の旧軍事工場が再稼働され、新たな兵器生産の拠点となっていた。巨大な機械が轟音を立て、溶接の火花が飛び散る。熟練の技術者たちが、最新鋭の機械と手作業を組み合わせ、次々と兵器を組み上げていく。彼らは、徹夜で作業を続け、疲労困憊の状態だったが、祖国のために働く誇りが彼らを突き動かしていた。


技術省の吉岡大臣は、兵器の品質管理と性能向上に全力を注ぎ、神聖日本帝国の兵器が常に最先端であることを保証した。彼は、輸入された兵器の分解・解析を行い、その技術を国内生産にフィードバックした。


「この新型戦車は、装甲の厚さを20%向上させ、主砲の命中精度も格段に上がっています。西日本政府軍のM1エイブラムスにも十分に対抗できます。さらに、ステルス性能も付与されており、敵のレーダーを欺くことが可能です」


吉岡大臣は、唯華に新型戦車の性能を説明した。唯華は、その報告に満足げな表情を見せた。


徴兵された数百万人の新兵たちは、連日、厳しい訓練に励んでいた。彼らは、鹵獲した米軍の兵器や、輸入された最新鋭の兵器の操縦方法を習得し、実戦に備えていた。訓練省大臣を兼任する斉藤総司令官は、兵士たちの精神的な鍛錬にも力を入れ、「ゆい姉のために」「帝国の栄光のために」というスローガンを徹底的に浸透させた。


「お前たちは、神聖日本帝国の未来を担う兵士だ!唯華様の御心に応え、この国を真の理想郷にするために、命をかけて戦え!お前たちの命は、この国の未来そのものだ!」


斉藤総司令官の檄が、訓練場に響き渡る。兵士たちは、泥と汗にまみれながらも、その言葉を胸に刻み、訓練に打ち込んだ。彼らは、早朝から深夜まで訓練を続け、心身ともに極限まで鍛え上げられていった。射撃訓練、格闘訓練、戦術訓練、そして精神訓練。全ての訓練は、実戦を想定した過酷なものだった。



岩国基地の成功に続き、斉藤総司令官と田中副総司令官が率いる鹵獲部隊は、西日本政府軍の基地や駐屯地への潜入作戦を継続した。彼らは、夜の闇に紛れて敵地に侵入し、可能な限り多くの兵器を鹵獲していった。


特に狙われたのは、西日本政府軍の航空基地や海軍基地だった。九州や四国、中国地方に点在する自衛隊の基地から、F-15J戦闘機、P-3C哨戒機、C-1輸送機などが次々と鹵獲された。海上自衛隊の護衛艦や潜水艦も、秘密裏に鹵獲され、神聖日本帝国の艦隊に編入されていった。


「目標、F-15J格納庫。侵入開始!警備は手薄だ!」


ある夜、福岡県築城基地への潜入作戦が実行された。中村部隊長率いる特殊作戦部隊は、岩国基地での経験を活かし、より洗練された方法で基地に侵入した。彼らは、基地内の警備網を巧みに掻い潜り、目標の格納庫へと向かった。彼らの動きは、まるで影のようだった。


格納庫の中には、最新鋭のF-15J戦闘機が多数駐機していた。パイロットたちは、事前に訓練を積んでいたため、これらの航空機を短時間で操縦可能にした。彼らは、航空機のシステムを起動させ、離陸準備を整えた。


「エンジン始動!離陸準備!滑走路はクリアか!?」


ジェットエンジンの轟音が格納庫に響き渡る。次々とF-15Jが滑走路へと移動し、夜空へと舞い上がっていった。彼らは、編隊を組み、神聖日本帝国の領空へと向かった。


鹵獲された兵器は、直ちに神聖日本帝国の技術省に送られ、整備と改修が行われた。米軍や自衛隊の兵器は、その性能の高さから、神聖日本帝国の戦力向上に大きく貢献した。鹵獲された兵器は、神聖日本帝国の紋章が施され、新たな任務に就くことになった。


唯華の二つの顔:最高指導者と「ゆい姉」

唯華は、休学後も、最高指導者「神月唯華」としての顔と、軍幹部や兵士たちの前での「ゆい姉」としての顔を使い分けていた。


最高指導者邸の地下深くにある作戦会議室では、唯華は「ゆい姉」として、幹部たちと膝を突き合わせて議論を交わした。彼女は、幹部たちの意見に真摯に耳を傾け、時には冗談を交えながら、彼らの士気を高めた。


「斉藤総司令官、兵士たちの食事は足りているか?栄養バランスは考慮されているか?十分な休息は取れているか?」


ある日の会議で、唯華は突然、兵士たちの食事や休息について尋ねた。斉藤総司令官は、驚きながらも答えた。


「はい、ゆい姉。兵站省が最高の食材を調達し、専属の栄養士がメニューを考案しております。休息も十分に取らせております。兵士たちの士気にも繋がると、大変好評です」


唯華は、満足げに頷いた。

「そうか。それはよかった。兵士たちの健康は、この国の未来を左右するからな。些細なことでも、何か問題があればすぐに報告してくれ。彼らが最高の状態で戦えるよう、我々は最大限の努力をしなければならない」


幹部たちは、唯華の細やかな気遣いに、改めて感動した。彼女は、単なる冷徹な指導者ではなく、兵士一人ひとりのことを真剣に案じる、温かい心を持った存在だった。


しかし、国民の前では、唯華は依然として「神月唯華」として振る舞い続けた。テレビやラジオでは、彼女の凛とした姿が映し出され、国民啓発省が制作したプロパガンダ映像では、彼女のカリスマ性が強調された。


「神聖日本帝国は、国民の幸福のために存在する。旧体制の腐敗を浄化し、真の平和と繁栄をもたらすことが、私の使命である。国民の皆が、安心して暮らせる国を築くために、私は全てを捧げる」


唯華の言葉は、国民の心に深く響き、彼らの忠誠心をさらに強固なものにした。国民は、唯華を「救世主」と崇め、彼女の言葉に熱狂した。


鈴鹿裕樹は、テレビのニュースで唯華が「ゆい姉」と名乗り始めたことを知った。最高指導者としての彼女が、より国民に寄り添う姿勢を見せようとしているという報道に、裕樹の心は複雑な感情で揺れ動いた。学校では、相変わらず「神月さん」と呼んでいるが、彼の心の中では、唯華の存在はますます遠く、そして巨大なものになっていくのを感じていた。


休学後、唯華は学校に姿を見せることはなかったが、裕樹は時折、唯華のSNSをチェックしていた。そこには、友人たちと楽しそうに過ごす唯華の姿が映し出されていた。しかし、その笑顔の裏に、どれほどの重圧と決意が隠されているのか、裕樹には知る由もなかった。


「神月さん、本当にすごいよ。何でも知ってるんだから」


裕樹は、唯華が学校にいた頃の会話を思い出す。あの頃の唯華は、もっと身近な存在だった。しかし、今は違う。彼女は、この国の未来を背負う、遠い存在になってしまった。


ある日、裕樹は、勇気を出して唯華にメッセージを送った。


「神月さん、体調は大丈夫ですか?早く学校に戻ってきてください。みんな、神月さんのこと心配してます」


唯華からの返信は、数日後に届いた。


「ありがとう、鈴鹿君。心配してくれて嬉しい。もう少し時間がかかるけれど、必ず戻るから。みんなも、元気でいてね。そして、この国が真の平和を享受する日を、信じて待っていてほしい」


そのメッセージは、唯華の優しさが込められたものだった。しかし、裕樹は、その言葉の裏に、彼女が抱える重責と、決して学校には戻れないかもしれないという、微かな予感を感じ取っていた。彼の心の中には、唯華への畏敬の念と、彼女が背負う重責への理解、そして、かつての親友が、あまりにも遠い存在になってしまったことへの寂しさが、複雑に絡み合っていた。彼は、唯華が放つ圧倒的なオーラに、近づくことを躊躇していた。しかし、彼の心の中に芽生えた、唯華への漠然とした恐れは、今、確かな現実として彼の前に立ちはだかっていた。


神聖日本帝国は、来るべき「暁の雷鳴」に向けて、着々と準備を進めている。そして、唯華の瞳の奥に微かに宿る温かい光が、この新たな帝国に、どのような影響を与えるのか、そしてこの国に何をもたらすのか、誰も知る由もない。物語は、まだ始まったばかりだ。

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