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ある日私は、革命家という名のテロリストになった。  作者: 水鳥川倫理
絶望と動乱と混沌と。

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第63話、絶望と動乱と混沌と。18

数週間後、最高指導部と国家評議会、そして総司令部の幹部たちが一堂に会する、大規模な戦略会議が開催された。場所は、最高指導者邸の地下深くにある、厳重に警備された作戦会議室だった。唯華は、巨大なモニターが設置された会議室の中央に座り、その顔は以前にも増して精悍さを増していた。


会議が始まり、西日本政府の最新の動向、軍事力増強の進捗状況、そして新兵たちの訓練成果が次々と報告された。唯華は、一つ一つの報告に耳を傾け、鋭い質問を投げかけ、的確な指示を出していった。彼女の判断力と洞察力は、幹部たちを常に驚かせた。


議論が白熱し、いよいよ来るべき「第二次日本国内戦」の作戦立案に移ろうとしたその時、唯華は突然、マイクを握り、幹部たちを見渡した。その表情は、いつもの冷徹な最高指導者の顔とは異なり、どこか人間的な温かさを帯びていた。


「みんな、少し聞いてほしいことがある。」


唯華の言葉に、会議室は静まり返った。幹部たちは、唯華が何を言い出すのか、固唾を飲んで見守った。


「私はこれまで、『唯華様』として、この神聖日本帝国を率いてきた。国民の皆を『浄化』し、旧体制の腐敗を根絶するために、私は『救世主』として振る舞ってきた。だが、この三ヶ月間、国民の皆と接し、そしてここにいるみんなと苦楽を共にしてきて、あることに気づいたんだ。」


唯華は、ゆっくりと、しかしはっきりとした口調で続けた。


「私は、みんなにとって、ただの『唯華様』でいるだけではいけない。私は、みんなと同じ人間であり、みんなの苦しみや喜びを分かち合いたい。そして、みんなに、もっと寄り添いたいんだ。」


幹部たちは、唯華の言葉に驚きを隠せない。特に、唯華の傍で支えてきた美咲は、その瞳に微かな涙を浮かべていた。


「だから、私はここに宣言する。これからは、『唯華様』としての人生を終わりにし、国民からは最高指導者『神月唯華』として、そしてここにいる幹部や兵のみんなからは、『ゆい姉』として、神聖日本帝国の活動をしていく。」


唯華の言葉が、会議室に響き渡る。その瞬間、幹部たちの間にどよめきが起こった。しかし、それは驚きと困惑だけではなかった。そこには、唯華の人間的な一面に触れたことへの、深い感動と、親愛の情が入り混じっていた。


斉藤総司令官が、最初に口を開いた。彼の声は、感極まって震えていた。


「ゆ、ゆい姉……!承知いたしました!我々、兵士一同、喜んでゆい姉の命に従います!」


田中副総司令官も、続いた。「ゆい姉!我々は、ゆい姉の元で戦えることを誇りに思います!」


他の幹部たちも、次々と「ゆい姉!」と声を上げ、会議室は温かい拍手と歓声に包まれた。唯華の顔に、微かな、しかし確かな笑みが浮かんだ。それは、最高指導者としての重圧から解放された、一人の少女の笑顔だった。


「ありがとう、みんな。これからも、ゆい姉として、みんなと一緒にこの国を築き上げていこうね。」


この日を境に、神聖日本帝国軍の幹部や兵士たちは、唯華を「ゆい姉」と呼ぶようになった。しかし、学校や友人、そして国民の前では、彼女は依然として「神月唯華」または「唯華」として振る舞い続けた。軍事に関わる場では「ゆい姉」として、それ以外の政治や国民啓発活動では「神月唯華」として。彼女は、二つの顔を使い分けながら、新たな日本の未来を切り拓いていくことになった。



「さて、みんな。気持ちを切り替えて、本題に入ろうか。」


唯華は、いつもの最高指導者としての口調に戻り、モニターに映し出された日本地図を指差した。


「来るべき第二次日本国内戦のオペレーション名は、『暁の雷鳴あかつきのらいめい』とする。夜明けと共に、雷鳴のように一気に西日本を制圧し、日本を統一する。これが、我々の最終目標だ。」


会議室の空気は、再び緊張感に包まれた。幹部たちの表情は真剣そのものだった。


「作戦の骨子は、西日本政府が最も警戒していないであろう九州、山陰、四国、北陸、東海の各地域に同時多発的に上陸し、内陸部から一気に制圧を進める。その数分後には、東西日本の国境線から、主力部隊が電撃戦を仕掛け、西日本政府軍の防衛線を突破する。これにより、敵は多方面からの攻撃に混乱し、指揮系統が麻痺するだろう。」


唯華は、モニター上の地図に、具体的な上陸地点と進攻ルートを次々と表示させていった。


「まず、九州方面。熊本、鹿児島、宮崎の三ヶ所に上陸部隊を投入する。指揮は、斉藤総司令官、君に任せる。第1機甲師団、第2機甲師団を主力とし、上陸後、直ちに内陸部へ進攻。熊本からは九州中央部を、鹿児島からは九州南部を、宮崎からは九州東部を制圧し、福岡を目指せ。特に熊本は、旧自衛隊の駐屯地が多く、補給拠点としても重要だ。」


斉藤総司令官が、力強く頷いた。「承知いたしました、ゆい姉。必ずや九州を制圧してみせます。」


「次に、山陰方面。島根、鳥取、兵庫の日本海側に上陸する。ここは、田中副総司令官、君の指揮だ。第3機甲師団、そして特殊部隊を投入する。山陰地方は、山岳地帯が多く、奇襲戦術が有効だ。島根からは中国山地を越え、広島方面へ。鳥取からは岡山方面へ。兵庫からは京阪神方面への進攻ルートを確保する。特に兵庫は、西日本政府の主要な経済拠点であり、早期の制圧が不可欠だ。」


田中副総司令官が、鋭い眼差しで答えた。「お任せください、ゆい姉。迅速かつ確実に、山陰を掌握します。」


「四国方面は、高知と徳島に上陸する。ここは、吉田師団長、君に任せる。第4機甲師団を主力とし、上陸後、直ちに四国中央部へ進攻。高知からは愛媛方面へ、徳島からは香川方面へ進み、四国全域を制圧する。四国は比較的防衛が手薄な地域であり、早期の制圧が可能だろう。」


吉田師団長が、敬礼した。「はい、ゆい姉。四国は我々が責任を持って制圧します。」


「北陸方面は、福井、石川、富山に上陸する。ここは、青木師団長、君に任せる。第5機甲師団(※新規に編成された師団とする)を主力とし、上陸後、直ちに内陸部へ進攻。福井からは滋賀方面へ、石川からは岐阜方面へ、富山からは長野方面への進攻ルートを確保する。日本海側からの上陸は、敵の意表を突くことができるだろう。」


青木師団長が、自信に満ちた表情で答えた。「ゆい姉、北陸は我々が突破口を開きます。」


「最後に、東海方面。静岡、愛知、三重に上陸する。ここは、村田師団長、君に任せる。第6機甲師団(※新規に編成された師団とする)を主力とし、上陸後、直ちに内陸部へ進攻。静岡からは山梨方面へ、愛知からは岐阜方面へ、三重からは奈良方面への進攻ルートを確保する。この地域は、西日本政府の経済活動が活発なため、迅速な制圧が求められる。」


村田師団長が、力強く頷いた。「承知いたしました、ゆい姉。東海を制圧し、本州中央部への道を切り開きます。」


唯華は、モニター上の地図に、それぞれの師団の進攻ルートと目標地点を詳細に表示させながら、説明を続けた。


「各上陸部隊は、上陸後、直ちに橋頭堡を確保し、内陸部への進攻を開始する。敵の反撃を最小限に抑え、迅速に主要都市を制圧すること。そして、各部隊は、旧自衛隊や米軍の装備を可能な限り鹵獲し、自軍の戦力に組み込むんだ。特に、彼らの最新鋭の戦闘機や戦車は、我々の貴重な戦力となる。」


「そして、上陸作戦開始から数分後、東西日本の国境線に展開している主力部隊が、一斉に電撃戦を開始する。ここは、山田師団長、君の第4機甲師団を主力とし、圧倒的な火力と機動力で敵の防衛線を突破する。目標は、東京から大阪への最短ルートを確保し、西日本政府の首都機能を麻痺させることだ。」


山田師団長が、力強く答えた。「ゆい姉、国境線からの突破は、我々が責任を持って行います。敵の防衛線は、必ずや粉砕してみせます。」


「各部隊間の連携は、情報省のサイバー部隊が全面的に支援する。敵の通信網を攪乱し、我々の通信は完全に秘匿する。そして、国民啓発省は、作戦開始と同時に、西日本全域に向けて、神聖日本帝国の正当性と、国民解放の理念を訴えるプロパガンダを展開する。西日本の国民を味方につけるんだ。」


唯華の言葉は、会議室の隅々まで響き渡り、幹部たちの心に深く刻まれた。彼女の立てた作戦は、まさに電光石火、敵に反撃の隙を与えない完璧なものだった。


「この作戦は、決して容易ではない。多くの犠牲を伴うだろう。だが、我々は、この国を真に『浄化』し、国民に真の平和と繁栄をもたらすために、この戦いを乗り越えなければならない。みんな、覚悟はいいかい?」


唯華は、幹部たち一人ひとりの顔を見つめた。幹部たちは、皆、力強く頷いた。彼らの瞳には、唯華への絶対的な忠誠と、来るべき戦いへの決意が宿っていた。

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