第57話、絶望と動乱と混沌と。12
神聖日本帝国建国から一ヶ月後、唯華の治療が終わり、いよいよ旧体制の政治家や官僚に対する「大裁判」が始まった。裁判の舞台は、象徴的な意味合いを込めて、旧国会議事堂の衆議院本会議場が選ばれた。議場は、中央に裁判官席、その両脇に検察側と弁護側の席、そして傍聴席が設けられ、厳粛な雰囲気に包まれていた。しかし、その傍聴席には、武装した新日本解放戦線の兵士たちが厳重な警備にあたっており、緊張感が張り詰めていた。彼らの銃口は、傍聴席、そして被告人席に向けられていた。
議場の中心には, 特設された高台に唯華が座っていた。彼女の顔色はまだ完全には戻っていなかったが、その眼差しは鋭く、議場全体を睥睨していた。まるで、全てを見通す神の目のようだった。唯華の隣には、副官の美咲が控えており、唯華の指示を補佐する。彼女の表情は真剣で、唯華の言葉を一字一句聞き漏らすまいと集中していた。裁判の模様は、国民啓発省によってYouTubeで全世界にライブ配信され、同時に神聖日本帝国の全領土のテレビ局、ラジオ局でも中継された。世界中の人々が、固唾を飲んでこの歴史的な瞬間を見守っていた。
唯華は、静かにマイクを握った。その声は、議場に響き渡り、全ての者の心に突き刺さった。
「帝国臣民に告げる。本日より、我々神聖日本帝国は、旧体制の腐敗を徹底的に『浄化』する。この法廷は、旧体制の悪を裁き、真の正義を確立するためのものである。全ての悪事を洗い出し、国民の血税を食い物にした者たちに、相応の罰を与える。抵抗する者、逃げ出す者は、問答無用で銃殺刑に処す。この審判は、国民の皆様の目の前で、公正かつ透明に行われることを約束する。」
その言葉は、議場に集まった旧体制の要人たち、そして世界中の視聴者に、冷たい戦慄を走らせた。被告人席に座る者たちは、顔面蒼白で、その身体は小刻みに震えていた。彼らは、自らの運命が、この若き少女の手に握られていることを悟ったのだ。
第1の審判:売国、裏金、利権、国民を脅かした罪
まず最初に呼び出されたのは、売国行為、裏金、利権、そして国民を脅かす行為に加担したとされる者たちだった。彼らは、旧内閣の主要閣僚や、長年にわたり政界に君臨してきた大物議員たちだった。
「被告人、旧内閣総理大臣、東条一郎。旧財務大臣、佐藤健太。旧外務大臣、田中美穂。旧経済産業大臣、渡辺大輔。旧国土交通大臣、小林雄一。旧厚生労働大臣、山本和也。前に出ろ。」
唯華の声が響き渡る。名指しされた者たちは、顔面蒼白で震えながら、兵士に促されて前に進み出た。彼らの表情には、かつての威厳は微塵もなく、ただ恐怖と絶望が刻まれていた。彼らの足取りは重く、まるで死刑台に向かうかのようだった。
情報省大臣の山田剛が、証拠を提示した。彼の声は、冷静でありながら、怒りを帯びていた。
「旧内閣総理大臣、東条一郎は、長年にわたり、特定の企業からの不正献金を受け取り、公共事業の入札において便宜を図ってきた。その結果、国民の血税が数兆円規模で無駄に消費された。特に、〇〇建設からの裏金は、彼の私邸の改築費用に充てられていたことが判明している。また、海外の企業に対し、防衛に関する国家機密を漏洩し、日本の国益を著しく損なった売国行為も確認されている。その証拠として、彼と海外企業の幹部との間で交わされた暗号化されたメール、そして海外口座への送金記録を提示する。」
山田は、具体的な不正献金の記録、企業との癒着を示す証拠、そして機密情報の流出を示す文書を次々と提示した。モニターには、それらの証拠が鮮明に映し出され、世界中の視聴者の目に晒された。YouTubeのコメント欄は、「まさかここまで…」「これはひどい」「売国奴!」といったコメントで埋め尽くされた。
「旧財務大臣、佐藤健太は、裏金工作の主導者であり、政治家の不正蓄財を組織的に隠蔽してきた。彼の指示のもと、財務省の裏帳簿が作成され、その金額は、国民の想像を絶する規模に上る。また、消費税増税の裏で、特定の富裕層への優遇税制を導入し、国民の生活を苦しめた。その結果、貧富の差は拡大し、国民の不満は頂点に達した。証拠として、彼が作成を指示した裏帳簿のデータ、そして海外のタックスヘイブンに開設された秘密口座の記録を提示する。」
山田は、偽装された会計帳簿、海外の秘密口座の記録、そして税制改正の裏で行われた密約の証拠を提示した。佐藤健太は、顔を真っ青にして、その場に崩れ落ちそうになった。
「旧外務大臣、田中美穂は、特定の外国勢力と結託し、日本の外交政策を歪め、国益を損なう条約を秘密裏に締結した。その見返りとして、多額の賄賂を受け取っていたことが判明している。特に、〇〇国との間で締結された漁業協定は、日本の漁業資源を著しく損なうものであり、その裏で彼女の親族企業が巨額の利益を得ていた。証拠として、外国政府との間で交わされた密約の文書、送金記録、そして盗聴された会話の音声データを提示する。」
山田は、外国政府との間で交わされた密約の文書、送金記録、そして盗聴された会話の音声データを提示した。田中美穂は、その場に立ち尽くし、ただ震えていた。
「旧経済産業大臣、渡辺大輔は、特定の電力会社との癒着により、再生可能エネルギー導入を妨害し、国民に高額な電気料金を押し付けた。また、福島第一原発事故の責任を隠蔽するため、虚偽の報告を繰り返し、国民の安全を脅かした。証拠として、電力会社との間で交わされた不正な契約書、そして事故報告書の改ざんを示す文書を提示する。」
「旧国土交通大臣、小林雄一は、談合を黙認し、特定の建設会社に公共事業を優先的に発注することで、巨額の裏金を受け取っていた。その結果、耐震偽装問題など、国民の安全を脅かす事態を引き起こし、多くの人々の命を危険に晒した。証拠として、談合の証拠となる会議録、そして裏金の送金記録を提示する。」
「旧厚生労働大臣、山本和也は、年金問題において、国民の不安を煽りながら、その裏で年金積立金を私的に流用し、巨額の利益を得ていた。また、医療制度改革を名目に、特定の製薬会社に便宜を図り、国民の医療費負担を増大させた。証拠として、年金積立金の不正流用を示す会計記録、そして製薬会社からの賄賂の記録を提示する。」
次々と暴かれる旧体制の悪行に、議場は騒然となった。拘束されている他の政治家や官僚たちは、顔面蒼白で震え上がっていた。YouTubeのコメント欄は、怒りと驚きの声で溢れかえった。「これは氷山の一角だろ…」「よくここまで隠してたな」「国民を騙し続けた罪は重い」といったコメントが殺到した。
「何か反論はありますか?証拠は全て揃っている。言い逃れは許さない。」
唯華は、冷たい声で尋ねた。名指しされた者たちは、顔を青ざめさせ、震える唇で何かを言おうとしたが、言葉にならなかった。彼らの弁護人席に座っていた者たちも、あまりの証拠の多さと、唯華の威圧感に、何も発言できなかった。彼らは、すでに観念していた。
「反論なしと見なす。神聖日本帝国の法に基づき、有罪と断ずる。刑は、銃殺刑。」
唯華の言葉に、兵士たちが即座に動き出した。名指しされた者たちは、絶望の叫びを上げ、その場に崩れ落ちた。彼らは、最後の力を振り絞って命乞いをしようとしたが、その声は、兵士たちの銃声にかき消された。乾いた銃声が議場に響き渡り、彼らの身体は血に染まり、次々と倒れていった。血の匂いが、議場全体に広がり、傍聴席からは悲鳴と嗚咽が漏れた。その光景は、世界中の視聴者に衝撃を与えた。YouTubeの配信画面には、「R.I.P.」「ざまあみろ」「これが正義だ」といった様々なコメントが入り乱れていた。




