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ある日私は、革命家という名のテロリストになった。  作者: 水鳥川倫理
絶望と動乱と混沌と。

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第56話、絶望と動乱と混沌と。11

このニュースは瞬く間に世界を駆け巡った。主要な海外メディアは、日本の異変を大々的に報じた。速報テロップが世界中のテレビ画面を駆け巡り、インターネット上では関連ニュースが爆発的に拡散された。


BBC (イギリス): 「速報です。日本が事実上、二つの国家に分断されました。戦後の日本の平和主義は終わりを告げたのか?神月唯華と名乗る謎の少女が率いる新日本解放戦線は、わずか数日で東日本を制圧し、新たな国家『神聖日本帝国』の建国を宣言しました。これは、戦後の国際秩序を揺るがす深刻な事態です。イギリス政府は、この事態を深く憂慮し、緊急安全保障理事会を招集する意向を示しています。」


CNN (アメリカ): 「衝撃です。まるで朝鮮半島や東西ドイツの再来。アジアにおける新たな火種となるのか?日本の分断は、地域の安全保障に甚大な影響を与えるでしょう。アメリカ政府は、この事態を深く憂慮しており、同盟国との連携を強化し、今後の対応を協議中であると発表しました。太平洋地域の軍事バランスが大きく変化する可能性も指摘されています。」


New York Times (アメリカ): 「桜の国に訪れた内戦。日本の政治的安定は崩壊した。新日本解放戦線の電撃的な首都制圧は、世界に衝撃を与えた。彼らの主張する『浄化』とは一体何なのか、国際社会は注視している。特に、神月唯華という若き指導者のカリスマ性と、その冷徹な実行力に、世界の識者は驚きを隠せないでいる。」


Le Monde (フランス): 「日出ずる国に二つの太陽。日本の分断は、グローバル経済に大きな影響を与えるだろう。特に、半導体や自動車産業におけるサプライチェーンの混乱が懸念される。フランス政府は、日本との経済関係を維持しつつ、新たな情勢に対応するための戦略を模索している。」


Xinhua (中国): 「日本の内政混乱は、東アジアの安定に影を落とす。中国は、日本の主権と領土の一体性を尊重する立場を堅持するが、今後の情勢を注視していく。特に、日本の分断が、地域の軍事バランスに与える影響について、警戒を強めている。」


**Al Jazeera (カタール): 「民主主義国家日本の陥落。若き指導者唯華の登場は、世界中の若者に影響を与えるのか?彼女の掲げる『浄化』の理念は、旧体制に苦しむ人々に希望を与える可能性を秘めている。中東諸国は、この日本の変革を、自国の政治情勢と重ね合わせ、複雑な感情で見守っている。」


世界中の株式市場は混乱し、円相場は暴落した。各国政府は緊急会議を開き、今後の貿易、外交、安全保障政策の見直しを迫られた。日本の分断は、単なる国内問題に留まらず、世界の政治、経済、そして国際秩序に大きな変化をもたらすことになった。国連安全保障理事会では、日本の分断を巡る緊急会合が開催され、各国代表が激しい議論を交わしたが、有効な解決策は見出されなかった。



首相との協議が終わり、合意書に署名した直後、唯華は激しいめまいに襲われ、その場に倒れ込んだ。彼女の顔は血の気が失せ、唇は紫色に変色していた。口元からは、ごぼごぼと音を立てて、再び大量の血が吐き出された。その血は、大理石の床に鮮やかな赤色の染みを作った。


「唯華様!」


美咲が悲鳴を上げ、唯華の身体を支えた。彼女の瞳には、絶望と恐怖が入り混じっていた。


「すぐに衛生班を呼べ!最高指導者が倒れた!急げ!」


美咲の叫び声に、待機していた新日本解放戦線の衛生班が血相を変えて駆けつけた。彼らは唯華の容態を診るなり、顔色をさらに悪くした。


「これは……重度の内出血です!すぐに精密検査を!さすまたによる腹部の外傷は打撲程度ですが、内臓に深刻な損傷がある可能性があります!特に胃のあたりが……」


衛生班長が焦った声で報告した。唯華は、朦朧とする意識の中で、かろうじて言葉を絞り出した。「い、いやだ……治療は……まだ……。私は、まだ……」


「唯華様!ご無理なさらないでください!貴方の命が、神聖日本帝国の未来を左右するのです!貴方にもしものことがあれば、全てが無意味になってしまいます!」


美咲が必死に唯華を説得した。その声は、涙で震えていた。衛生班の隊員たちは、唯華を担架に乗せ、首相官邸内に急遽設置された臨時医療施設へと運び込んだ。唯華の意識は、すでに遠のきかけていた。


精密検査の結果、唯華は**「急性胃穿孔を伴う重度のストレス性胃潰瘍」**と診断された。教師のさすまたによる腹部への衝撃が、極度のストレスによってすでに限界に達していた胃潰瘍を悪化させ、胃壁に小さな穴を開けていたのだ。そこから持続的な内出血が起こり、唯華の体力を奪っていた。外傷はあざ程度だったが、内部の損傷は深刻で、放置すれば命に関わる状態だった。


「唯華様、このままでは命に関わります。緊急手術が必要です。そして、最低でも一ヶ月は絶対安静で、集中的な治療と静養が必要です。無理はできません。」


医療衛生省大臣の杉山真一が、唯華に厳しい表情で告げた。唯華は、不満そうに顔を歪めたが、美咲の懇願と、自らの命が神聖日本帝国の未来に不可欠であることを理解し、渋々ながら治療を受け入れることにした。彼女の意識は、すでに朦朧としていたが、それでもその瞳には、使命への執着が宿っていた。


「……分かった。だが、一ヶ月で必ず治せ。その間、美咲、お前が私の代理として、幹部たちを指揮しろ。そして、裁判の準備を滞りなく進めろ。一切の妥協は許さないぞ……」


唯華は、美咲に最後の指示を出し、意識を失った。その言葉は、美咲の心に深く刻まれた。


美咲は、唯華の言葉を胸に刻み、その日から唯華の代理として、そして唯華の回復を祈りながら、来るべき裁判の準備を指揮した。彼女は唯華の病室に付きっきりで看病し、唯華の意識が戻るたびに、幹部たちからの報告を伝え、唯華の指示を仰いだ。唯華は、高熱にうなされ、何度も血を吐きながらも、その度に美咲の報告に耳を傾け、かすれた声で指示を出した。その姿は、まさに帝国の礎を築く、鬼気迫るものだった。


情報省の山田剛は、拘束された政治家や官僚たちの過去の不正を徹底的に洗い出し、証拠を収集した。彼の部下たちは、昼夜を問わず働き、膨大な量の資料を精査し、隠蔽された事実を暴き出した。総務省の佐々木賢治は、神聖日本帝国独自の法廷制度を構築し、裁判の運営計画を練り上げた。彼は、旧体制の法の抜け穴を全て塞ぎ、真に公平な審判が下されるよう、細部にわたって制度を設計した。国民啓発省の井上秀樹は、裁判の模様をYouTubeで全世界にライブ配信するための準備を進めた。彼は、旧体制の悪事を国民に広く知らしめ、神聖日本帝国の正当性を訴えるためのプロパガンダ戦略を練り上げた。


この一ヶ月間、唯華は文字通り死の淵を彷徨った。高熱にうなされ、悪夢に苦しめられ、何度も血を吐いた。しかし、その度に彼女は、神聖日本帝国の未来を夢見て、奇跡的な回復力を見せた。美咲は、唯華の病室に付きっきりで看病し、幹部たちとのオンライン会議も唯華の病室から行った。唯華は、意識が朦朧としながらも、美咲の報告に耳を傾け、時折、かすれた声で指示を出した。その姿は、まさに帝国の礎を築く、鬼気迫るものだった。彼女の身体はボロボロだったが、その精神は、鋼のように強靭だった。


一ヶ月後、唯華は奇跡的に回復した。まだ顔色は完全に元に戻ってはいなかったが、その瞳には以前にも増して強い光が宿っていた。彼女は、自らの身体を犠牲にしてでも、この国の「浄化」を成し遂げようと決意していた。

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