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ある日私は、革命家という名のテロリストになった。  作者: 水鳥川倫理
絶望と動乱と混沌と。

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第48話、絶望と動乱と混沌と。3

暗闇に包まれた東京湾の水面が、まるで唯華の冷徹な心を映すかのように、静かに揺らめいていた。微かに漂う潮の香りが、夜の帳と混じり合い、沈黙を深くする。氷雨瑠衣のコンクリートの塊が、鈍い水音を立てて闇に沈んでいくのを見届けた唯華は、隣に立つ佐藤美咲に視線を向けた。美咲は唯華の隣に立つことにまだ慣れないのか、僅かに身体を強張らせ、月明かりに照らされた横顔に緊張の色を浮かべている。


「これで、また一つ『旧体制』の象徴が消えたな」


唯華の声は静かだが、その奥には底知れない冷たさが宿っていた。それは、凍てつく冬の夜空から降り注ぐ星々のような、研ぎ澄まされた冷徹さだった。美咲は唯華の言葉に、ゆっくりと、しかし確かな意思をもって頷く。


「はい。唯華様のお考えの通りかと存じます」


美咲の声もまた、夜の闇に吸い込まれていくようだった。彼女はまだ、唯華の「副官」という役割に戸惑いを隠せないでいたが、唯華の揺るぎない決意を間近で感じ、その覚悟を新たにしていた。唯華の瞳に宿る、決して揺るがぬ光が、美咲の迷いを焼き払うかのように映った。




氷雨瑠衣の死から2週間後、新日本解放戦線の動きはさらに加速していた。唯華の自宅、壁一面を覆い尽くすクアトロモニターに囲まれた秘密の司令室では、幹部たちとのオンライン会議が連日、深夜まで開催されていた。唯華の指示は具体的で、その言葉一つ一つに、揺るぎない決意と緻密な戦略が込められている。室内の空気は、張り詰めた緊張感と、確かな達成感に満ちていた。


「静岡、山梨、新潟、群馬、福島、栃木、茨城、千葉、埼玉、神奈川。これらの県境付近、特に人目につかない山奥の地下に、長野の地下壕に匹敵する、あるいはそれ以上の規模の軍事拠点を構築するのだ。目標は、2ヶ月以内の完成だ」


唯華は、画面越しに幹部たちに告げた。彼女の言葉は、まるで絶対的な命令のように、それぞれの幹部の心に深く刻み込まれる。国家評議会議長の佐々木賢治は、冷静沈着な表情で唯華の言葉を聞き入っていた。彼の横にいる財政省大臣の大野義明は、その巨額な資金が必要となる計画に、内心でため息をつきつつも、表情には一切出さなかった。しかし、その額に滲む汗が、彼が背負う重責を物語っていた。


「各拠点には、合計で戦車200両以上、攻撃用ヘリ150機、輸送用ヘリ100機、戦闘車両300両、戦闘機50機を分散して配備する。また、武器や兵器、銃火器は、今後2ヶ月で調達し、それぞれの基地に管理・整備体制を構築せよ」


唯華は、具体的な数値を挙げ、各省庁にその任務を割り振った。兵站省の渡辺拓也は、その膨大な物資の調達と輸送計画を頭の中で組み立てていた。彼の脳裏には、無数の物流ルートと倉庫の配置図が瞬時に描かれていく。彼らの地下基地は、もはや単なる隠れ家ではなく、首都圏制圧に向けた巨大な軍事要塞群へと変貌しようとしていた。地下深くで蠢く、見えない巨竜の鱗が、着々と形を成していくかのようだった。




唯華が次に提示したのは、さらに大規模な作戦だった。それは、東北地方全域、北海道、長野県、新潟県、山梨県の全土と、静岡県、千葉県の一部山岳部を掌握する、首都陥落の前哨戦となる計画だ。プロジェクターに映し出された日本地図には、掌握されるべき地域が赤く塗りつぶされ、その広大さに幹部たちは息を呑んだ。


「この作戦の成功は、我々新日本解放戦線が、旧体制を完全に打倒し、『神聖日本帝国』を建国するための不可欠なステップとなる」


唯華の言葉に、幹部たちの顔には緊張が走り、その眼差しは一段と鋭くなる。総司令官の斉藤隆一は、冷徹なまでの眼差しでモニターを見つめ、自身の部隊が担う役割を再確認していた。彼の拳は、密かに握りしめられていた。


計画は綿密に練られていた。情報省の山田剛は、国内外の情報を収集し、政府機関の内通者である公安警察官の木村と自衛隊情報本部員の田中から得た機密情報を唯華に報告していた。彼の口から語られる情報は、まさに敵の心臓部に食い込んでいることを示していた。外交省の藤原浩司は、海外の協力者との連携を強化し、密輸ルートの確保に奔走していた。彼の携帯電話は常に鳴り響き、複数の言語が飛び交っていた。技術省の吉岡健太郎は、地下壕に設置された最新鋭の設備を駆使し、兵器の性能を最大限に引き出すための改良と新兵器の研究開発を進めていた。彼の研究室からは、常に奇妙な機械音が聞こえてくる。


訓練省の斉藤隆一は、全隊員の訓練計画を立案し、その実施と評価を厳しく管理していた。隊員たちは、地下壕の広大な空間で、連携を極限まで高める訓練を繰り返していた。爆音、怒号、そして汗の匂いが、地下壕の隅々まで充満している。陸上戦闘部隊の吉田悟率いる第1機甲師団は、戦車操縦のエキスパートとして、地下での機動演習を重ねていた。重々しいキャタピラの音が、地底深く響き渡る。加藤勇作率いる第1歩兵師団は、山岳地帯から市街地まで、あらゆる状況下での戦闘を想定した訓練に励んでいた。泥にまみれ、傷を負いながらも、彼らの目は燃え上がっていた。航空戦闘部隊の高橋隼人は、操縦シミュレーションを重ね、実戦に備えていた。仮想空間で繰り広げられる激しい空中戦が、彼の集中力を研ぎ澄ます。特殊作戦部隊の中村健太は、秘密裏の作戦遂行を担い、組織の目と耳となっていた。彼の姿は、常に闇に溶け込むかのように捉えがたい。支援部隊の岡田裕也は、戦場の後方支援を担い、部隊の活動を支える重要な役割を担っていた。彼の部下たちは、黙々と物資の補給や医療支援の準備を進めていた。


唯華と美咲は、定期的に各拠点へと足を運んだ。長野の地下壕に匹敵する、あるいはそれ以上の規模の軍事拠点は、まさに地下に眠る巨大な竜の巣窟のようだった。薄暗い通路には、整備兵たちが黙々と兵器のメンテナンスにあたり、オイルと金属の匂いが充満している。訓練兵たちの掛け声が、地下の壁に反響し、不気味なほど響き渡る。


「唯華様、こちらの基地は、予定よりも早く完成しそうです。整備兵の士気も非常に高く、常に万全の状態で兵器を管理しております」


静岡の地下基地を視察中、技術省次官の佐藤浩二が唯華に報告した。唯華は無言で頷き、並べられた真新しい戦車の装甲を指でなぞった。ひんやりとした金属の感触が、彼女の指先に伝わる。


「燃料の備蓄状況はどうか?」


「はい、充分にございます。また、緊急時のための予備燃料も確保しております」


唯華は満足そうに頷き、美咲に視線を向けた。美咲は唯華の隣で、真剣な眼差しで各基地の状況を視察していた。彼女の瞳には、圧倒されるほどの兵器の数々が映し出されていた。


「唯華様、訓練の様子も拝見しましたが、隊員たちの練度も非常に高いかと存じます。斉藤総司令官の指導の賜物ですね」


美咲が唯華に報告すると、唯華は静かに微笑んだ。その微笑みは、しかし、どこか遠い未来を見据えているかのようだった。


「そのようだな。これで、我が戦線の準備は整いつつある」




東北地方全域、北海道、長野県、新潟県、山梨県の全土と、静岡県、千葉県の一部山岳部の掌握作戦の成功を見越して、唯華と美咲は、新たな国家「神聖日本帝国」建国に向けた声明文を練り上げていた。司令室の壁には、日本の地図が広げられ、すでに掌握された地域が、鮮やかな赤で示されている。


「この声明文は、我々の理念を国民に伝える重要なメッセージとなる。一言一句、慎重に選ぶ必要がある」


唯華は、クアトロモニターに表示された声明文の草稿を見つめながら言った。その声には、一切の妥協を許さない厳しさが滲んでいた。美咲は、唯華の隣で真剣な表情でその言葉に耳を傾けている。ペンを片手に、彼女は唯華の言葉を一字一句逃すまいと集中していた。


「私たちは、新日本解放戦線である。国民の皆さんは噂で聞いたことがあると思う。そう、松原先生や氷雨瑠衣を暗殺し、大山巌を『旧体制』の象徴として拉致して告白させたのは紛れもない新日本解放戦線の作戦である。そして、その新日本解放戦線は、たった今、東北地方全域、北海道、長野県、新潟県、山梨県の全土と、静岡県、千葉県の一部山岳部を掌握を完了した。この土地こそわが新日本解放戦線の最初の国土であり領地となる、そしてその国の名前は**神聖日本帝国**とする。そう、わが帝国は日本国政府に対し宣戦布告する。全ての民が苦しまない利権や権利、裏金の無い真の日本にするために立ち上がった。そして、いつの日か、そんな日本にするための前哨戦として占領した、、、」


唯華は、草稿を読み上げ、美咲に視線を向けた。彼女の瞳は、未来を確信する光を帯びていた。


「続きを考えよう。国民に、我々の『浄化』の目的と、新たな国家がもたらす未来を明確に示す必要がある」


美咲は、熟考するように少し目を伏せ、ゆっくりと口を開いた。その言葉には、唯華への深い理解と、強い共感が込められていた。


「はい、唯華様。私たちが目指すのは、一部の特権階級が利益を独占する『旧体制』の終焉であり、すべての国民が平等に豊かさを享受できる社会の実現でございます。その点を強調すべきかと」


唯華は頷き、声明文に新たな言葉を加えていく。彼女のペンが、紙の上を滑るたびに、新たな国家の輪郭が鮮明になっていく。


「、、、この長きにわたる腐敗と偽りの時代に終止符を打ち、真に国民のための国家を創造する。我々は、利権にまみれ、不正が蔓延る『旧体制』を徹底的に排除し、清廉潔白な統治を実現する。国民の皆様には、一時的に混乱と不便を強いることになるかもしれない。しかし、これは、来るべき明るい未来のための、避けられないプロセスであるとご理解いただきたい。我々が掲げる『神聖日本帝国』は、旧体制の負の遺産を全て清算し、国民一人ひとりが真の自由と尊厳を享受できる、理想の国家となることを約束する。これこそが、我々新日本解放戦線が、血と汗と涙をもって築き上げる、新たな日本の夜明けである。我々は、この神聖な使命を果たすため、躊躇なく進む。すべての国民よ、目を覚ませ!そして、我々とともに、新たな歴史の扉を開こう!」


唯華は、宣言の最後に、国家評議会議長である佐々木賢治と、総司令官の斉藤隆一の名前を付け加えた。そして、重要な一文を付け加える。


「神聖日本帝国は、8の盟約で軍を動かし、12の盟約で政治を行う」


唯華は、美咲とともに、それぞれの盟約の内容を具体的に練り上げていった。その言葉の一つ一つに、彼女たちの理想と、未来への強い決意が込められている。



軍においての8の盟約


1. 『一般市民及び救助する人を攻撃してはならない』

理由:我々の戦いは、腐敗した政府に対するものであり、罪なき市民や人道支援を行う者を傷つけることは、我々の理念に反するからだ。無辜の命を守ることが、我々の正義の根源である。


2. 『不必要な殺生をしてはならない。』

理由:我々は、決して虐殺を目的とする集団ではない。必要な戦闘行為に限定し、無用な犠牲は避ける。命の尊厳を理解し、その重みを常に心に留めるためだ。


3. 『捕虜を虐待してはならない。』

理由:捕虜は、ジュネーブ条約に基づき保護されるべき存在である。彼らへの虐待は、我々の人間性を貶め、国際社会からの信頼を失う行為であり、我々の高潔な理念に反する。


4. 『民間施設を破壊してはならない。』

理由:病院、学校、文化財など、市民生活に不可欠な施設や、国の歴史・文化を象徴する施設は、我々が守るべき対象である。これらの破壊は、将来の国家再建を困難にし、国民の生活基盤を奪う行為だからだ。


5. 『掠奪行為を行ってはならない。』

理由:我々は、秩序を乱し、私利私欲のために行動する輩ではない。国民の財産を尊重し、軍規を厳守することで、新たな国家の礎となる信頼を築く。


6. 『無駄な武力を行使してはならない。』

理由:不必要な武力行使は、人的・物的資源の無駄遣いであり、市民に恐怖を与える。最小限の力で目的を達成し、効率的かつ合理的な戦いを心がける。

7. 『情報戦を常に有利に進めよ。』

理由:現代戦において、情報は武器に匹敵する。正確な情報を収集・分析し、偽装工作を行うことで、敵の混乱を誘い、戦いを優位に進めることが、犠牲を最小限に抑える上で不可欠である。


8. 『規律を厳守し、指揮官の命令に絶対服従せよ。』

理由:軍隊において、規律と命令系統の維持は、組織の根幹をなす。混乱を避け、円滑な作戦遂行を可能にし、目標達成のための絶対的な条件となる。



政治においての12の盟約


1. 『利権を排除し、透明な政治を行う。』

理由:旧体制の腐敗の根源である利権構造を徹底的に排除し、すべての政治決定プロセスを国民に公開する。これにより、国民からの信頼を得て、公正な社会を築く。


2. 『国民の声を常に傾聴する。』

理由:国民の真のニーズを把握し、それに基づいた政策を立案するため、多様な意見を積極的に取り入れる。双方向のコミュニケーションを重視し、国民参加型の政治を実現する。


3. 『教育の機会均等を保証する。』

理由:すべての子どもたちが、その能力に関わらず、質の高い教育を受けられる環境を整備する。貧困や地域格差による教育格差を解消し、未来を担う人材を育成する。


4. 『医療・福祉の充実を図る。』

理由:誰もが安心して暮らせる社会を築くため、質の高い医療サービスと充実した福祉制度を提供する。病気や老い、障害によって、生活の質が損なわれることがないようにする。


5. 『環境保護を最優先課題とする。』

理由:豊かな自然を次世代に引き継ぐため、環境破壊を抑制し、持続可能な社会を構築する。再生可能エネルギーの導入を推進し、環境負荷の低い社会を目指す。


6. 『科学技術の発展を推進する。』

理由:国の発展と国民生活の向上に不可欠な科学技術の研究開発を積極的に支援する。新たなイノベーションを創出し、国際競争力を高める。


7. 『文化・芸術を奨励する。』

理由:国民の精神的な豊かさを育むため、多様な文化・芸術活動を支援する。創造性を尊重し、日本の独自の文化を世界に発信する。


8. 『公正な司法制度を確立する。』

理由:法の支配を徹底し、すべての人に平等な司法サービスを提供する。冤罪をなくし、公正な裁判を実現することで、国民の権利を守る。


9. 『防衛力を強化し、国の安全を確保する。』

理由:国民の生命と財産、そして国土を守るため、堅牢な防衛体制を築く。国際社会における日本の地位を確立し、平和と安定に貢献する。


10. 『経済の活性化と雇用の創出を目指す。』

理由:すべての国民が経済的安定を享受できるよう、持続的な経済成長を追求する。新たな産業を育成し、多様な雇用機会を創出する。


11. 『情報統制を行わない。』

理由:国民が真実に基づいた判断を下せるよう、情報の自由な流通を保障する。検閲やプロパガンダによる情報操作を一切行わず、多様な意見が尊重される社会を築く。ただし、国家の安全保障に関わる機密情報は除く。


12. 『国民の私有財産権を保障する。』

理由:個人の努力と創造性を尊重し、私有財産を国が不当に奪うことはない。これにより、経済活動の自由を保障し、国民の生活基盤を安定させる。

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