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ある日私は、革命家という名のテロリストになった。  作者: 水鳥川倫理
神月唯華の高校生活!(日常編)

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第40話、神月唯華の高校生活!6

そして、約束の土曜日。唯華は、いつもより少しだけ可愛らしい、けれどどこかクールな雰囲気を漂わせる服装を選んだ。彼女は、まるで夜の闇を纏ったかのように、黒いパーカーを羽織っていた。柔らかなコットン素材のパーカーは、オーバーサイズで、彼女の華奢な体を包み込む。その下には、繊細な黒いレースが施されたキャミソールが覗き、胸元を飾る。レースの透け感が、彼女の肌を上品に演出し、普段の完璧な優等生とは異なる、少し大人びた魅力を引き出している。ショートパンツもまた黒く、ゆったりとしたシルエットで、白っぽい紐がウエスト部分でアクセントになっていた。足元は、ごつめの厚底スニーカーを選び、全体のバランスにストリート感を加えている。首元には、細いチョーカーがぴったりと寄り添い、彼女のどこか儚げな雰囲気を際立たせていた。これは、彼女が新日本解放戦線の活動で身につける服装によく似た、普段とは異なる一面を見せるような選択だった。


待ち合わせ場所に到着すると、美咲、花音、里奈がすでに到着していて、唯華の姿を見つけると、満面の笑顔で手を振ってくれた。美咲は、明るい黄色のトップスにデニムのスカート、花音は花柄のワンピース、里奈は流行のフリルブラウスにワイドパンツと、それぞれが自分らしいお洒落を楽しんでいる。


「唯華ー!こっちこっち!」


美咲が遠くから手を振って唯華を呼んだ。彼女の笑顔は、今日の晴天のように眩しい。


「唯華ちゃん、可愛い!」


美咲が唯華の服装を褒める。彼女の純粋な言葉に、唯華は少し照れたように微笑んだ。


「ありがとう。みんなも可愛いよ」


唯華の言葉に、美咲たちはさらに笑顔を深める。


4人は連れだって、予約していた美容院へと向かった。美容院は駅前のファッションビルの中にあり、店内は明るく、開放的な空間が広がっていた。壁は白を基調とし、木製の家具が温かみを添えている。心地よいボサノバの音楽が流れ、シャンプーの香りが店内に漂っている。


受付を済ませ、それぞれ担当のスタイリストに案内される。唯華の担当は、柔らかな物腰の女性スタイリストだった。彼女は唯華の長い黒髪を見て、少し驚いたような顔を見せた。


「本日はどのようなスタイルになさいますか?」


スタイリストの問いに、唯華は一瞬、考えを巡らせた。これまで、具体的な髪型を希望したことなど一度もない。しかし、今回は違う。彼女は、新しい自分への一歩を踏み出す決意を胸に、はっきりと自分の希望を伝えた。その言葉には、迷いも、戸惑いもなかった。まるで、この髪型にするという未来が、彼女の頭の中で既に完成しているかのようだった。


「はい。今回は、ショートボブにしたいです。顎のあたりまでの長さで、全体的に丸みのあるシルエットでお願いします。前髪は目の上にかかるくらいの長さで、やや重めに。サイドは顔の両側に自然に垂れるようにカットしてください」


唯華の淀みない説明に、スタイリストはさらに驚いたような顔を見せた。これほど具体的に、しかも的確に自分の希望を伝えられる高校生は珍しいのだろう。プロの美容師でもここまで的確に言語化できる人は少ない。唯華の頭の良さが際立っていた。


「承知いたしました。お客様のイメージ、とてもよく伝わりました。では、カラーリングは?」


「ベースカラーは黒でお願いします。そして、毛先に向かって青色のグラデーションを入れていただきたいです。自然な色の移り変わりで、個性的かつスタイリッシュな印象になるように、深みのある藍色から鮮やかなコバルトブルーへと変化するようなグラデーションをお願いします」


唯華はさらに、自分のイメージする髪色についても詳しく説明した。その言葉一つ一つに迷いはなく、まるで頭の中で完璧な完成図が描かれているかのようだった。


「かしこまりました。お客様のイメージ通りに、最高のスタイルをご提供させていただきます」


スタイリストは唯華の知的な提案に感銘を受けたように、笑顔で応じた。彼女は、唯華の言葉に込められた確固たる意志を感じ取っていた。


シャンプー台に横たわり、温かいお湯が頭に注がれる感触に、唯華は全身の力が抜けていくのを感じた。続いて、ハサミの軽快な音が響く。長い髪がするすると落ちていく感触に、唯華の心に微かな高揚感が生まれた。これまでの自分を少しだけ手放し、新しい自分へと生まれ変わるような感覚だった。


美咲たちは、唯華がどんな髪型にするのか、とても興味津々だった。隣の席に座った美咲が、身を乗り出して唯華に尋ねる。


「ねぇ唯華、どんな髪型にするの?秘密なの?」


唯華は鏡越しに美咲を見て、にこりと微笑んだ。彼女の口元には、これまであまり見せることのなかった、いたずらっぽい笑みが浮かんでいた。


「それは、できてからのお楽しみ」


唯華の言葉に、美咲は「えー!気になるー!」と声を上げたが、それ以上は詮索しなかった。花音と里奈も、期待に満ちた眼差しで唯華の変化を見守っている。


しばらくして、唯華のヘアカットとカラーリングが終わり、スタイリストが最後にドライヤーで髪を整えていく。そして、鏡に映し出された新しい自分に、唯華は目を奪われた。


顎のラインで切り揃えられたショートボブは、全体的にふんわりと丸みを帯び、彼女の小顔をより一層引き立てていた。首元がすっきりと見えることで、彼女の繊細な首筋が露わになり、これまでの清楚な印象に加えて、どこか大人びた魅力を醸し出している。目の上にかかる重めの前髪が、彼女の大きな瞳を印象的に見せる。その瞳の奥には、以前のような冷たさはなく、温かい光が宿っているように見えた。そして、何よりも目を引いたのは、毛先に向かってなめらかに変化する青色のグラデーションだった。漆黒の髪から、まるで深海の青が滲み出るかのように、徐々に色が濃くなり、鮮やかなコバルトブルーへと変化していく。それは、個性的でありながらも、唯華の持つ神秘的な雰囲気に驚くほど調和していた。


「わぁ…!」


美咲たちが唯華の新しい髪型を見て、思わず感嘆の声を上げた。その声には、驚きと、純粋な「可愛い」という感情が込められていた。


「唯華ちゃん、めっちゃ可愛い!!」


美咲が興奮したように唯華の元へ駆け寄ってくる。その瞳は、キラキラと輝いていた。


「ほんとだ…すごく似合ってる!唯華、こんな髪型も似合うんだね!」


花音も目を輝かせながら言った。彼女の優しい声が、唯華の心を温める。


「唯華、イメチェン大成功だね!すごくお洒落!私もそのグラデーション、真似したいかも!」


里奈も満面の笑顔で唯華を褒め称える。彼女の言葉は、唯華の新しい髪型が、流行に敏感な里奈にも認められた証拠だった。


唯華は、彼女たちの純粋な称賛の言葉に、頬が微かに赤らんだ。美容院の鏡に映る自分は、これまでの彼女とは全く違う、けれど確かに「自分」なのだと感じられた。それは、彼女が長年閉ざしていた「自分らしさ」への扉が、少しだけ開いた瞬間でもあった。


「あ、唯華!これ、つけてみない?」


美咲が自分のカバンから、可愛らしいヘアリボンを取り出した。淡いピンク色で、中央には小さなパールの飾りがついている。


「似合うと思うよ!きっともっと可愛くなる!」


唯華は美咲の言葉に促されるまま、リボンを受け取り、スタイリストに頼んで髪につけてもらった。ショートボブのサイドに、控えめに添えられたリボンが、彼女の可愛らしさをさらに引き立てる。青色のグラデーションの髪と、淡いピンクのリボンのコントラストが、絶妙なバランスを生み出していた。


「可愛いー!!」


美咲たちが再び歓声を上げた。唯華は、少し気恥ずかしい気持ちになりながらも、そのリボンをつけた自分の姿を鏡越しに眺めた。それは、完璧な計画の中には存在しなかった、予期せぬ「可愛い」の発見だった。


美容院を出て、4人で駅前の雑貨店へと向かった。唯華は、美咲たちが選んでくれたリボンを髪につけたまま、彼女たちの隣を歩く。駅前は人で賑わっており、すれ違う人々がちらちらと唯華の方に視線を向けているのが分かった。好奇の視線、羨望の視線、そして、ただ純粋に「可愛い」と見つめる視線。これまでの唯華なら、そうした視線から身を隠すように俯いていたかもしれない。しかし、今の唯華は、友人たちの温かい笑顔に囲まれ、堂々と前を向いて歩くことができた。彼女の心は、見た目の変化とともに、確実に内側からも輝きを増しているようだった。


雑貨店では、美咲たちが唯華に似合いそうなヘアアクセサリーを次々と見つけては、唯華の髪に当てて見せてくれた。唯華も、以前なら興味を示さなかったであろう可愛い小物たちを、真剣な眼差しで吟味するようになった。様々な色のリボンや、キラキラとしたヘアピン、シンプルなカチューシャなど、彼女の世界にはなかった「可愛い」がたくさん存在していた。


「唯華、この花の形のヘアピン、可愛いんじゃない?髪色にも合いそう!」


里奈が白い小花のヘアピンを唯華の髪に当てて見せる。唯華は鏡で確認し、その可憐さに心が惹かれた。


「うん…可愛い」


結局、美咲たちが選んでくれたリボンと、唯華自身が気に入ったシンプルなデザインのヘアピンをいくつか購入した。それらは、彼女のこれからの「普通」の日常を彩る、小さな宝物になるだろう。


美容院と買い物の後、4人はいつものように駅前のカフェへと向かった。落ち着いたジャズが流れる店内で、唯華たちはそれぞれドリンクを片手に談笑する。唯華は、今日一日で大きく変わった自分の髪を、嬉しそうに触っていた。毛先の青いグラデーションが、光に当たってキラキラと輝く。


「ねぇ、唯華、中間テストの範囲、もう出た?」


花音が、突然、話題をテストへと切り替えた。美咲と里奈も、ハッと我に返ったように真剣な顔になる。


「うん、もう出てるよ。数学は二次関数、英語は不定詞と動名詞だね。古典は源氏物語の『桐壺』巻と漢文の『矛盾』だね」


唯華は、淀みなくテスト範囲を告げた。その言葉には、一切の迷いがない。


「うわー…私、もう数学の時点で頭が痛い…唯華、二次関数とか見ただけでアレルギー反応起こしそう…」


美咲が顔をしかめた。彼女の顔には、絶望の色が浮かんでいる。


「花音も英語は得意だけど、数学と古典は苦手だもんね。私も漢文とか意味不明…」


里奈が花音に同意する。彼女たちの顔には、中間テストへの不安が大きくのしかかっていた。


唯華は、彼女たちの顔を見て、中学時代とは異なる、純粋な頼りにしてくれている表情に気づいた。かつては、彼女の完璧さを妬み、孤立させようとした同級生たちとは全く違う、温かい眼差し。


「よかったら、今度、私の家で一緒に勉強しない?分からないところがあったら、教えられるよ」


唯華がそう提案すると、美咲たちの顔がぱっと明るくなった。その場の空気が、一瞬で明るく、希望に満ちたものに変わる。


「やったー!唯華の部屋で勉強会!嬉しい!唯華に教えてもらったら、絶対点数上がるー!」


美咲が興奮したように唯華の肩を叩く。彼女の声は、カフェ中に響き渡りそうだった。


「唯華ちゃん、ありがとう!助かるー!これで赤点回避できるかも!」


花音も心からの感謝を述べる。彼女の表情には、安堵と希望が入り混じっていた。


「私も、漢文教えてほしい!唯華のノートとかも見たいなー!」


里奈も目を輝かせながら言った。彼女たちは、唯華の知性に心から敬意を払い、そして信頼していた。


「じゃあ、来週の土曜日、唯華の家に行ってもいいかな?お昼くらいから!」


美咲が目を輝かせながら言った。


「うん、いいよ。何時がいいかな?お昼からで大丈夫」


唯華は、友人を自宅に招くという、これまでの彼女には考えられなかった展開に、内心で微かな興奮を覚えていた。彼女の私室は、新日本解放戦線の活動拠点であり、機密の塊だった。しかし、友人たちと共有する「普通」の時間を前に、唯華の心は迷うことなく、その誘いを受け入れた。

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