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ある日私は、革命家という名のテロリストになった。  作者: 水鳥川倫理
公安警察や自衛隊の動向。そして内部から崩れる影。

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第34話、公安警察や自衛隊の動向。そして内部から崩れる影。

奪還された新日本解放戦線の隊員たちは、事前に設定された首都圏外の新たな地下基地へと無事到着した。そこは、唯華の計画に基づき、長野の地下壕に匹敵する、あるいはそれ以上の規模を誇る、最新鋭の地下要塞だった。広大な格納庫には、最新鋭の戦車やヘリコプター、戦闘車両が整然と並び、整備士たちが静かに点検作業を行っていた。


解放された隊員たちは、憔悴しきった表情で車両から降りてきた。彼らの体は疲弊し、精神は極限まで追い詰められていたが、その瞳の奥には、仲間を救い出してくれた唯華への深い感謝と、組織への揺るぎない忠誠心が宿っていた。


「よくやった」


田中が、彼らを迎え入れた。彼の声は、疲労困憊の隊員たちを労うように優しかった。


「君たちは、我々の誇りだ。君たちの沈黙が、我々の計画を守り抜いた。唯華様も、君たちの無事を心から喜んでおられる」


隊員たちは、田中の言葉に深く頷き、安堵の表情を浮かべた。彼らは、拘束中に一切の情報を漏らさなかったことを誇りに思っていた。


地下基地の医療施設では、杉山真一率いる医療衛生省のメンバーが、解放された隊員たちの治療と精神ケアに当たった。栄養失調と疲労困憊の体は、点滴や栄養剤で回復が図られ、精神的な負担を軽減するためのカウンセリングも行われた。彼らは、仲間たちを温かく迎え入れ、彼らが再び戦場に立てるよう、万全のサポート体制を築いていた。


解放された隊員たちは、数日間の休息と治療の後、新たな訓練プログラムへと移行した。斉藤と田中は、彼らが拘束中に得た公安の情報の断片を分析し、それを訓練にフィードバックした。公安警察の尋問手法、警備体制、追跡技術。これら全てが、彼らの訓練をより実践的なものへと進化させていった。彼らは、過去の失敗を教訓とし、二度と同じ過ちを繰り返さないために、己の限界をさらに超えようとしていた。


「君たちの経験は、我々の組織にとってかけがえのない財産となる。公安の手口を学び、それを逆手に取ることができれば、我々はさらに強くなれる」


斉藤の言葉に、隊員たちは真剣な眼差しで応えた。彼らは、自分たちの苦難が、組織全体の強化に繋がることを理解していた。彼らの瞳には、単なる復讐心ではなく、唯華の「浄化」という理念を実現するための、より深い決意が宿っていた。


一方、警視庁本部では、奪還作戦の失敗が、公安警察全体に衝撃を与えていた。


「信じられん……警視庁本部の地下施設から、テロリストを奪還しただと!?しかも、一切の死傷者を出さずに……」


黒崎は、蒼白な顔で報告書を睨みつけていた。彼の声には、怒りよりも深い戸惑いが滲んでいた。白石もまた、同様に言葉を失っていた。


「彼らの手口は、これまでのテロ組織とは一線を画しています。情報操作、潜入、奪還……全てが綿密に計画され、実行されている。我々は、彼らの本質を全く理解していなかったようです」


白石の言葉は、公安警察の無力さを浮き彫りにしていた。彼らは、確かに50人ものテロリストを逮捕した。しかし、それは組織の末端であり、核心には触れられなかった。そして、その末端すら、いとも簡単に奪還されてしまったのだ。


この事件は、メディアでも大々的に報じられ、公安警察の威信は地に落ちた。国民の間には、治安に対する不安と、政府への不信感が募っていった。新日本解放戦線は、彼らが「宣戦布告」と呼んだこの作戦によって、その存在を日本中に知らしめることに成功したのだ。


「奴らは、我々を嘲笑っている。そして、我々の目をくらませ、さらなる計画を進めているに違いない」


黒崎の脳裏には、唯華の「浄化」という言葉が蘇っていた。彼は、この大規模な奪還作戦が、単なる人質奪還ではなく、組織の次のステップへの布石であると直感していた。彼らは、日本を、社会を、そして既存の秩序を、根本から「浄化」しようとしているのだ。


「白石、これまで以上に警戒を強めろ。そして、奴らの次の動きを予測しろ。奴らは、必ずまた動く」


黒崎の目は、再び燃えるような光を宿していた。彼の焦燥感は、怒りと使命感へと昇華され、新たな捜査への原動力となっていた。


東京の唯華の自室では、クアトロモニターが再び煌々と光を放っていた。モニターには、奪還された隊員たちが新たな地下基地で訓練に励む姿、そして新たに密輸された膨大な兵器群の映像が映し出されていた。唯華の表情には、悲しみや迷いはもうない。そこにあったのは、冷徹なまでの決意と、確固たる自信だけだった。


「私の仲間を、無駄死にさせるわけにはいかない」


彼女は、静かに、しかし力強く呟いた。この言葉は、彼女の「浄化」という理念に、新たな、より深い意味を与えていた。個人的な復讐心から始まった彼女の戦いは、今や、愛する仲間たちと共に、腐敗した日本を「浄化」し、新たな秩序を築くという、壮大な使命へと変貌していた。


「日本の夜明けは、もうすぐそこだ」


彼女の瞳は、遠い未来、浄化された日本の姿を鮮明に捉えていた。その視線の先には、血と硝煙の彼方に広がる、新たな日本の黎明が広がっていた。それは、彼女にとって、どんな犠牲を払っても成し遂げるべき、絶対的な未来像だった。


唯華の計画は、着実に、そして容赦なく進行していた。日本列島の地下で、恐るべき巨竜がその咆哮を上げようとしていた。日本の治安機関は、焦燥感に苛まれながらも、未だその全貌を掴めずにいる。果たして、彼らはこの巨竜の覚醒を阻止できるのか。あるいは、唯華の「浄化」は、この国を根底から変えてしまうのか。

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