表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ある日私は、革命家という名のテロリストになった。  作者: 水鳥川倫理
公安警察や自衛隊の動向。そして内部から崩れる影。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

31/103

第30話、公安警察や自衛隊の動向。そして内部から崩れる影。

唯華は、日本の心臓部たる東京を取り巻く環状線上に、新たな地下要塞群を築き上げる壮大な構想を練り上げていた。それは、単なる交通網の模倣ではなく、彼女が独自に選定した戦略的要衝を結ぶ、鉄壁の防衛線に他ならなかった。首都を多角的に包囲し、あらゆる不測の事態に即応できる、まさに「鉄壁の盾」を構築する、その計画は壮絶なまでに緻密だった。


候補地として白羽の矢が立てられたのは、静岡、山梨、新潟、群馬、福島、栃木、茨城、千葉、埼玉、神奈川。これらの県境、特に人里離れた山奥の地下深くに、長野の地下壕をも凌駕する規模の軍事拠点を構築するのだ。唯華の戦略は明瞭だった。東京への進攻を多方面から可能にし、いかなる緊急事態にも対応できる強固な防衛網を築き上げること。それは、首都圏を完全に掌握するための布石であり、同時に、来るべき「浄化」の日に向けた最終準備でもあった。


新たな地下要塞の建設は、極めて緻密かつ、しかし大胆な計画に基づいて推進された。



まず、候補地の選定が厳格に行われた。静岡県の富士山麓、山梨県の南アルプス山中、新潟県の越後山脈深部、群馬県の谷川岳周辺、福島県の阿武隈高地、栃木県の日光連山、茨城県の八溝山地、千葉県の房総丘陵、埼玉県の秩父山地、神奈川県の丹沢山地。これらの広大な地域から、地盤が安定しており、かつ大規模な掘削に耐えうる場所が厳選された。特に、元々地下水脈が豊富で、巨大な洞窟や自然の空洞が存在する場所が優先された。それらは、地下深くに広がる未知の空間への、まさに「隠された扉」となる可能性を秘めていたのだ。唯華は、組織内に抱える地質学者や建設の専門家たちを動員し、徹底的な地質調査と地形分析を行わせた。彼らの報告書は、唯華のデスクに山と積まれ、彼女はそれを夜を徹して読み込んだ。



唯華の厳命のもと、国家評議会の技術省は、最新鋭の地下掘削技術とステルス技術を駆使した建設計画を推進していた。建設は、複数の工区に細分化され、それぞれに異なる偽装工作が施された。例えば、静岡では大規模な治水工事、山梨ではリニア中央新幹線の延伸工事、新潟では新たな水力発電所の建設といった名目で、大型重機や大量の資材が運び込まれた。資材を運ぶトラックの荷台には、偽装用の土砂や木材が無造作に積まれ、その下に隠された本当の資材は、夜間の厳重な警備のもと、人目を避けるようにひっそりと運び込まれていく。これら全て、唯華の情報省が公安警察の目を欺くための、まさに「欺瞞の芸術」とも呼べる緻密な偽装だった。偽装された建設現場には、本物の作業員と見紛うばかりの偽の作業員が配置され、公安の監視を攪乱するための偽情報も巧妙に流された。彼らは、公安の目を欺くためなら、どんな労力も惜しまなかった。


地下基地の建設は、長野の地下壕と同様に、既存の地下施設や廃坑を拡張する形で進められた。特に、冷戦期に建設された地下核シェルターや、大規模な鉱山跡地が優先的に利用された。これらの場所は、すでに地下深くへのアクセスが確立されており、掘削作業の大部分を省略できたため、工期の短縮とコストの削減に大きく貢献した。かつては冷戦の遺物であった地下施設が、唯華の計画によって新たな生命を吹き込まれ、その存在意義を根本から変えようとしていた。彼らは、古い設計図をハッキングで入手し、それを基に最新の技術を組み合わせて、強固な地下要塞へと生まれ変わらせていた。錆びついた鉄骨は最新の合金に置き換えられ、薄暗い通路にはLED照明が煌々と灯された。



新たな基地の総面積は、長野の地下壕の数倍にも及ぶ広大なものとなる予定だった。各基地には、全長数キロメートルにも及ぶ滑走路が建設される計画だった。この滑走路は、外部から完全に遮断され、地上からも上空からもその存在を認識できないように設計された。滑走路の入口は、山肌に完璧に偽装された巨大なシャッターで覆われ、必要に応じて音もなく開閉する仕組みだった。普段はまるで巨大な岩壁のようにしか見えず、どれほど近づいてもその存在に気付く者はいないだろう。上空からは、単なる山の斜面や岩場にしか見えないように、高度なカモフラージュ技術が用いられた。地表には、偽装された森林や畑、あるいは民家が巧妙に配置され、不自然な建造物が一切存在しないように徹底された。航空写真や衛星写真で分析しても、そこには何の変哲もない日本の田園風景が広がっているだけだ。


内部には、長野の地下壕と同様に、戦車やヘリコプター、戦闘車両の格納庫、最新鋭の整備工場、弾薬庫、訓練施設、居住区、医療施設、食料・水・燃料の備蓄施設が完備される。さらに、将来的な戦闘機配備を見据え、より大規模な格納庫と、戦闘機の離着陸に耐えうる頑丈な滑走路が建設された。格納庫の天井は高く、複数階層に分かれており、メンテナンス用の最新設備が導入されていた。巨大なエレベーターが設置され、地下深くから地上への兵器の迅速な移動を可能にする。通路は迷路のように複雑に入り組み、外部からの侵入を阻む設計がなされている。換気システムは最新鋭で、地下でありながら常に新鮮な空気が供給され、快適な環境が維持されていた。唯華は、これらの地下基地が、来るべき「浄化」の戦いの、揺るぎない拠点となることを確信していた。それは、彼女のビジョンを実現するための、まさに「生命線」となるはずだった。



基地の建設と並行して、兵器の密輸も拡大の一途を辿っていた。兵站省の渡辺と小林は、世界中の闇市場を駆け回り、唯華が求める兵器を文字通り「血眼になって」調達していた。彼らの手腕は、もはや外交官のそれと寸分違わなかった。彼らは、国家間の紛争や混乱に乗じ、破格の値段で高性能な兵器を買い叩いていく。その交渉術は、冷徹なまでに合理的で、一切の感情を挟まなかった。


「唯華様からの新たな指令だ。戦車50台、ヘリ30機、戦闘車両150台、武器5,000丁、その他兵器400個。これらを数ヶ月以内に日本へと密輸する。新たな地下基地への配備を見越して、種類と数を調整する」


渡辺は、海外の「同志」とのオンライン会議で指示を出した。彼の声は冷静そのものだったが、その言葉の端々には隠しきれない緊張感が漂っていた。今回の密輸は、これまで以上に大規模かつ複雑なものとなるため、複数のルートと偽装工作が同時に進行された。ロシア、ウクライナ、アフリカ、中東。紛争地域から、旧ソ連製の兵器が次々と買い叩かれた。それらの兵器は、汚れた金の流れに乗り、海を越えて日本へと向かう手はずとなっていた。彼らは、国際的な密輸ネットワークを巧みに利用し、複雑な資金洗浄の経路を構築していた。


新たな密輸ルートは、日本の主要港を避け、より僻地の漁港や無人島を利用する大胆なものだった。例えば、北海道の宗谷岬沖や、九州の五島列島周辺の無人島に大型貨物船を停泊させ、小型船に積み替える方法が採用された。偽装船は、海外の漁業調査船や、海洋資源探査船、あるいは民間のレジャーボートに偽装され、海上保安庁の目を欺いた。夜陰に乗じて、密かに荷揚げ作業が行われ、陸路での輸送には、偽装された冷蔵車や建材運搬車が用いられた。GPS攪乱装置や、通信傍受対策も万全だった。彼らは、最新鋭の偵察技術にも対応できるよう、常に偽装の手法を更新し続けていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ