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ある日私は、革命家という名のテロリストになった。  作者: 水鳥川倫理
第1章、闇落ちしたとある女子高生。

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第2話、闇落ちしたとある女子高生。2

東京都内でも指折りの進学校、その真新しい校舎に不穏な空気が漂い始めていた。高校の入学式も終わり、本格的な授業が始まったばかりだというのに、クラスメイトたちの間からは毎日、悲鳴にも似た声が上がっていた。


「うわぁ、この問題どう解くんだっけ?」

「難しすぎだろ!この問題。」

「ここなんだっけ?」「前、授業でやったはずなんだが、あまり覚えていない。」

「この学校すぐ違う単元に行くからわからない。」


誰もが必死にしがみつき、苦労しながら授業や課題をこなしている。そんな中、神月唯華だけは違った。彼女はまるで水を得た魚のように、淡々と目の前の問題を解き進めていく。


「あーあ。つまんな。こんな問題なんて楽すぎて話にならない。」


唯華はいつもそんなことを思いながら、どの授業も暇を持て余していた。授業中は腕で顔を隠すようにして眠りにつき、たまに目を覚ましたかと思えば、スマホを取り出してニュースをチェックしたり、YouTubeを見たりと、だらだらと時間を潰していた。


そんな唯華の態度に、各教科の担当教師たちは頭を悩ませていた。特に難しい問題の時には、わざと唯華を指名したり、彼女にだけ難易度の高いプリントを配ったりすることもあった。それでも唯華は、なぜかあっさりと問題を解いてしまう。その度に、クラスメイトや先生たちの反感は募り、教室は常にぎくしゃくとした空気に包まれていた。居心地の悪さは、唯華にとっても例外ではなかった。


授業が終わると、クラスメイトたちは一斉に復習や予習に取り掛かる。しかし唯華にそんな素振りは一切ない。彼女の選択肢は、ひたすら眠り続けるか、スマホをいじるかのどちらかだった。それもそのはず、唯華は中学の時点で、Sランクの大学生が知るような知識を習得し、人間演算機と恐れられていたのだ。高校の授業など、彼女にとってはどれもこれも簡単な問題ばかりで、飽き飽きするのも無理はなかった。


その日も、唯華はいつものように授業中にだらだらと過ごしていた。すると突然、学年主任の松原先生に呼び出しを受けた。眠い目をこすりながら、唯華はダルそうにのそのそと教室を出ていく。


教室では、仲の良い男子グループがひそひそと話し合っていた。


「ついに学年主任に呼び出しを受けたか。いつかそうなると思っていたけどね。」

「なんで呼び出しを受けたんだろう?」

「それは、あれだろ。いつもの生活態度や行動を見れば呼び出したくもなる。」

「確かにそうだよな。いつも授業中は寝てばかりだし、しまいにはスマホをいじりだすし。なんか怖いよな。どっかの怖い輩と一緒に遊んでそうで。」

「そうだよな。怖いよな。」


彼らの会話を聞き咎めた授業担当の先生が、声を荒げた。


「そこの男子たちうるさいぞ!変な噂を立てるな!あぁ見えて彼女なりに頑張っているんだぞ!一応言っとくけどあんたら、彼女の学力より下だからな。少しは人を変な目で見るのではなく、その人の背景や事情を知る努力をしよう。」


普段は温厚な先生の、鬼気迫る叱責に男子たちは黙り込んだ。しかし、一人の男子が恐る恐る手を挙げる。


「先生!ひとつ質問をしてもいいでしょうか?」


先生は低い野太い声で「構わんぞ」と返した。


「俺たちは、たしかに授業中話していたのは申し訳なかったです。それは謝ります。しかし、いつも寝ていたりスマホをいじっている神月さんより学力が下なのはどういうことですか?俺たち、いやクラス全員みんな必死になって授業を受けて課題を提出しているのに、なぜですか?」


彼の真剣な問いに、クラス全員の熱い視線が先生に注がれた。誰もが同じ疑問を抱いていたのだ。先生はその質問を重く受け止め、静かに話し始めた。


「実は彼女は、この学校の首席で入学したんだ。しかし、彼女は、私を目立たせないように授業をやってくれと頼んだ。おまけに、『いつ死ぬかわからない世の中で私は生きたくありません。なので、いつ死んでもいいように私は日々を過ごしておりますので邪魔をしないようにお願い申し上げます』と私たち教員の前で彼女は頭を下げ、はっきりと言われた。彼女に何の企みがあるか知らないが、そういうことだから彼女のことは多めに見てやってくれ。」


先生はそう言って、クラスメイトに向かって頭を下げた。すると、ある女子生徒が先生に問い返した。


「じゃあ、神月さんは一体なぜ死ぬことを暗示しているかのようなことを言ったのか、一体過去に彼女の身に何があったのか。そのことは先生はご存じですか?」


先生は落ち着いた様子で答えた。


「それはその時に彼女に聞いたのだが、頑なに話してくれなかった。これから大事にならなければいいのだが、、、」


先生の不安を吐露する言葉に、その瞬間、教室は重たい空気に包み込まれた。


その頃、唯華は応接室で学年主任の松原先生と向かい合っていた。


「なぜそこまで授業態度や生活態度を改めたくない?君はこの学校の首席だ、言わばこの学校の誇りなんだよ。どうしてかね。」


松原先生の厳しい問い詰めに、唯華は10秒ほど沈黙した。そして、静かに口を開く。


「私は、あと数年で死にます。それはテロかもしれないし戦争かもしれないし病気かもしれません。だからです。死ぬ前に本気ではっちゃけて、清々したーと言って死にたいです。それが私の本望だからです。そして、死んだ暁には私はこう名前で世界に示すでしょう。『史上最悪のテロリスト神月唯華』と。それが私の夢です。希望です。幸せです。いつかその時が来たらわかりますよ。私はこの学校の誇りだと。いや最高の生徒だと。そのために今からあなたをこの場にて処刑させていただきます。さようなら。先生。」


唯華の腰から、サプレッサー付きの拳銃が抜き放たれた。松原先生は慌てて叫んだ。


「いや待て!落ち着け!それはきっとおもちゃだろ!そんなことをしていいと思っているのか君は!」


先生の腰が抜け、恐怖に顔が歪む。この応接室は特別仕様だった。数年前に行われた改装工事で完全に防音室になっており、外には一切声が漏れない。盗聴器も防犯カメラもついていないため、いくら叫んでも誰も助けには来ないのだ。唯華は先生にゆっくりと近づき、拳銃の先端をその眉間に当てた。


「さようなら先生。今後の私に期待してくださいね♡」


引き金が引かれた。真っ直ぐに先生の目掛けて弾が飛び、脳天に命中する。大量の血が噴き出し、先生はそのまま崩れるように倒れた。


「ふぅ。やれやれ。最初から私のことを責めなければ良かったのに。」


唯華はそう呟き、腰に銃をしまった。先生の遺体は跡形もなく粉々になるまで処理され、トイレの排水溝へと流された。飛び散った血痕は、特殊な液体を使って完璧に消し去られた。


「よっし!やっと片付いたこれで教室に戻れる!」


一仕事終えた唯華は、背中をぐーっと伸ばし、疲れを癒した。そして、応接室を後にして教室へと戻る。その道中、唯華は少しばかり不安を感じていたが、すぐにそれを打ち消す。


「多分このことはバレないだろう。なぜなら私はこの学校の首席。この学校を牛耳っている。そして、ばれたらそいつを消せばいい。最高の連鎖だ!」


心の中でそう呟き、唯華は教室へと足を速めた。


「神月さーん?神月さーん?」


誰かに呼ばれたような気がした。ゆっくりと起き上がろうとした時、急に目の前に教室が現れた。周りを見渡すと、クラスメイトが必死に授業内容をノートにまとめている姿や、先生が授業をしている風景が広がっていた。授業中だと気づく。時計を見ると15時。今は5時間目の授業中だ。唯華は、昼食も食べずに今まで教室で寝ていたことに気が付いた。そこで、一つの疑問が頭をよぎる。


「あ、学年主任に呼び出され先生を殺したのは夢だったのか?」


唯華は数十秒考えた末、「多分夢だろ」と思い、スマホをいじり始めた。そんなことを考えてから5分後、授業中にもかかわらず急に校内放送が鳴り響いた。


「只今、1年生の学年主任の松原先生が行方不明となりました。今現在警察や消防がこの学校や近隣を捜索しております。生徒のみなさんも先生を見つけ次第私たち誰でもいいので教員にお知らせください。また、生徒のことを考え今日のところは皆さん下校となりますので帰りの支度をしてください。以上です。」


放送を聞き、唯華は夢だと思ったことが夢ではなかったことに気づく。少し焦ったが、「多分大丈夫だろう」と自分に言い聞かせ、落ち着いた様子でスマホをいじり続けていると、クラスに警察官が入ってきた。


「神月唯華さんはいますか?少しお話を聞きたいのでここでもあれですから一旦応接室の方まで来てください。」


警察官の言葉に、唯華は彼らに連れられて教室を出て行った。クラスは再びざわめき始める。


「おいおい、今度は警察が唯華を呼び出したぞ。」

「怖いな。」

「じゃあ、犯人は神月さん?」

「そんなわけないだろ。」

「いくらなんでもそこまで荒れた性格はしていないだろ。」


その時、担任の中村先生が教室に入ってきた。いつも優しい先生が、珍しく鬼の形相で言い放った。


「こらっ!変な噂を立てるな!彼女は今日先生に応接室に呼び出しされたから、警察の人もその時の先生の様子を聞きたがっているんだよ!それくらいわかるだろ!変な噂を立てた人はまた、後日応接室で話しするので覚悟しておいてください。」


中村先生はいつもより何倍も怖い顔をして教室を出て行った。その後の教室は圧倒的に静まり返り、生徒たちはそれぞれの家へと帰っていった。


一方、唯華は応接室で警察官2人と、校長先生、教頭先生、担任の先生に囲まれ、事実確認が行われていた。警察官の一人が優しい口調で尋ねる。


「今日ここであったことを話してくれないか?」


警察沙汰になるのが初めてで、唯華は少し緊張した様子で話し始めた。


「今日、私は授業中に学年主任の松原先生に呼び出されたのは事実です。そして、この場所で私の生活態度や授業態度が悪いとお叱りを受けました。その後からの記憶が朧気ですが、一緒にこの応接室を出て私は一人で教室へと戻り、、、、」


唯華が記憶を辿りながら話していると、もう一人の警察官が会話を遮った。


「実はこの防犯カメラに君と先生が一緒にこの応接室に入ったところと、一緒に出てきたところが撮られている。そこには君の言っていることのように一緒に応接室に入り、一緒に出てきて、そして少し談笑した後にすぐに分かれている。私たちはその後に起きたことが気になっている。その後のことを話してくれるかね?」


少し威圧的な口調に、唯華はビクビクしながら答える。


「その後は先生と会っていないからわからないっていうのが私の感想です。」


「そうか、勇気を振り絞って話してくれてありがとうね!いきなり警察に呼び出されて怖かっただろ!まぁ、大丈夫さ!この防犯カメラや君の言っていることが一致しているから君は犯人として疑われることはない!」


はっきりと告げられ、唯華は一安心した。しかし、続けて放たれた言葉に唯華は少しビクッとした。


「また、話を聞くことになるかもしれないからその時はよろしくね!」


唯華は松原先生を殺したことが夢であることを願いながら、帰路に就いた。

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