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ある日私は、革命家という名のテロリストになった。  作者: 水鳥川倫理
公安警察や自衛隊の動向。そして内部から崩れる影。

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第28話、公安警察や自衛隊の動向。そして内部から崩れる影。

唯華は、涙を拭い、再びモニターの前に座った。彼女の瞳には、悲しみだけでなく、新たな決意の光が宿っていた。その光は、彼女の心の奥底から湧き上がる、揺るぎない覚悟を示していた。


「私の仲間を、無駄死にさせるわけにはいかない……。」彼女は、静かに、しかし力強く呟いた。仲間への深い愛情と、自らの過ちへの反省が、彼女の心を突き動かした。彼女の「浄化」のビジョンは、個人的な復讐心から始まったかもしれないが、今やそれは、彼女が率いる「仲間」の存在によって、より大きな意味を持つようになっていた。


唯華は、自らの感情を押し殺し、再びモニターの前に座った。顔に残る涙の痕を拭い去り、表情からは一切の感情を消す。彼女は、この「失態」を組織の幹部たちに見せるわけにはいかなかった。彼女は、彼らの絶対的な信頼を裏切るわけにはいかなかった。彼女は、新日本解放戦線の指導者として、常に完璧でなければならなかった。


「国家評議会チャットルーム、開設。」機械的な音声が部屋に響き渡る。モニターには、次々と幹部たちがログインしてくる。情報省の山田、兵站省の渡辺と小林、訓練省の斉藤と田中。彼らは皆、唯華からの緊急招集に驚きと不安を隠せない様子だった。唯華は、彼らの表情から、沈黙の裏に隠された動揺を読み取った。


「皆、集まったか。」唯華の声は、いつものように冷徹で、感情の微塵も感じさせないものだった。しかし、その声の奥には、鋼のような意志が秘められていた。彼女の心臓は、冷静さを装いながらも、静かに、しかし強く脈打っていた。


「今回の事態は、我々新日本解放戦線にとって、痛恨の極みだ。私の情報操作に甘さがあったことを認めよう。」唯華は、自らの非を認めた。しかし、それは決して弱さを見せる行為ではなかった。むしろ、彼女の言葉には、自らの過ちを認め、それを乗り越えようとする強いリーダーシップが感じられた。彼女のこの率直な言葉は、幹部たちの間にわずかな衝撃と、そして深い信頼をもたらした。彼女は、自らの責任を明確にすることで、彼らの疑念を払拭しようとしたのだ。


「しかし、私はこの失態を、無為に終わらせるつもりはない。逮捕された者たちは、我々の、そして新たな日本の未来を担う大切な仲間だ。彼らをこのまま見捨てるわけにはいかない。」唯華の視線が、モニターに映る幹部たちの顔を一人ひとり捉える。彼らの表情は、唯華の言葉に真剣に耳を傾けていた。彼女の瞳は、まるで彼らの魂の奥底を見透かすかのように、鋭い光を放っていた。


「したがって、次の最優先目標は、逮捕された実行部隊員の解放とする。基地の建設は並行して進めるが、全ての戦力を、彼らの救出に集中させる。」その指令に、幹部たちは驚きを隠せなかった。兵器調達や基地建設といった最重要任務を中断し、個々の隊員の救出を優先するとは、彼らの想像を超えた判断だった。しかし、唯華の決意は固かった。彼女にとって、仲間の救出は、何よりも優先されるべき「浄化」の第一歩だった。それは、彼女がリーダーとして、そして人間として、仲間をどれほど大切に思っているかの証だった。彼女は、組織の効率性よりも、人間的な絆を重んじるという、彼らにとっては意外な一面を見せたのだ。


「唯華様、それはあまりにも危険かと……。」兵站省の渡辺が、恐る恐る口を開いた。彼の声には、率直な懸念が滲んでいた。


「公安は、我々の正体を掴もうと躍起になっています。今、彼らに正面から挑むのは、あまりにも無謀です。」


「無謀ではない。」唯華の声が、チャットルームに響き渡った。その声は、氷のように冷たく、一切の反論を許さない響きを持っていた。彼女の内心では、不安やリスク計算が渦巻いていたが、それを微塵も表に出さなかった。


「彼らは、公安警察にとっての『切り札』だ。彼らを奪還することで、公安は混乱し、我々は圧倒的な優位に立つことができる。そして何より、彼らを救い出すことこそが、私の、そしてこの新日本解放戦線の使命だ。」唯華は、作戦の骨子を説明し始めた。彼女の言葉には、揺るぎない確信が込められていた。その確信は、彼女が徹夜で練り上げた、緻密な計画に裏打ちされたものだった。


「全員、今回の作戦の遂行に、全力を尽くせ。これは、日本の治安機関に対する、我々の最初の、そして最も重要な『宣戦布告』となる。」唯華の目は、モニターの向こうの幹部たちを射抜くように見つめていた。その視線には、決して揺らぐことのない、鋼のような決意が宿っていた。彼女の心は、すでに救出作戦へと完全に切り替わっていた。


「唯華様、我々は唯華様の命に従い、全てを捧げます。」斉藤が、深く頭を下げた。彼の声は震えていたが、それは恐怖からではなく、唯華の揺るぎない決意に対する感動からだった。他の幹部たちも、それに続くように頭を下げた。彼らは、唯華の決意に応えるため、自らの命を顧みない覚悟を決めていた。彼らの心には、唯華への絶対的な忠誠と、仲間を救い出すという共通の目標が深く刻まれた。

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