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ある日私は、革命家という名のテロリストになった。  作者: 水鳥川倫理
公安警察や自衛隊の動向。そして内部から崩れる影。

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第27話、公安警察や自衛隊の動向。そして内部から崩れる影。

深夜、静岡県と山梨県の県境付近の山道で、移動中の実行部隊の車両が公安警察によって包囲された。それは、訓練を終えて新たな基地への配属に向かう途中の隊員たちだった。彼らは、民間人を装っていたが、車両には偽装された荷物の中に、訓練用の銃器や装備の一部が隠されていた。武装はしていなかったものの、その車両の不審な動きと、積載物の隠匿性が、彼らをテロ組織の構成員であると判断させるには十分だった。


銃声は響かなかった。公安警察は、周到な計画のもと、車両を停止させ、瞬く間に隊員たちを拘束した。抵抗する者はいなかった。彼らは、組織の教えに従い、いかなる状況でも情報漏洩を避けることを最優先としたのだ。彼らの顔には、諦めと、しかし同時に組織への忠誠心が刻まれていた。


逮捕された実行部隊の隊員は、約50人。彼らが拘束されたというニュースは、翌朝には全国版で報じられた。


「公安警察、大規模テロ組織の構成員か?50人を一斉逮捕。武器押収の可能性も。」テレビのニュース速報が、唯華の東京の自宅のリビングに響き渡る。クアトロモニターには、長野の地下壕の映像が映し出され、整然と並ぶ戦車やヘリ、そして訓練に励む隊員たちの姿があった。その映像と、逮捕された隊員たちのニュースが、唯華の脳裏で交錯した。平和な日常と、水面下で進む恐るべき計画、そしてその計画が露呈した瞬間の残酷な現実が、彼女の目の前で鮮やかに、しかし痛ましく対比されていた。


唯華は、その場に膝から崩れ落ちた。震える手でリモコンを操作し、モニターをオフにする。部屋は一瞬にして静寂に包まれた。彼女の瞳からは、大粒の涙がとめどなく溢れ出した。彼女の頬を伝う涙は、彼女の心の奥底に眠っていた人間性を露わにしていた。


「ごめんなさい……あなたたち……こんなひどい目に遭わせて……。」彼女の声は、震えていた。感情を抑えきれずに、嗚咽が漏れる。それは、組織のリーダーとしての冷静沈着さとはかけ離れた、一人の人間としての深い悲しみだった。


「もう二度と、このような失態はしないから……だからごめんね……ごめんね……ごめんね……。」彼女は床に顔を埋め、何度も謝罪の言葉を繰り返した。仲間を危険に晒してしまったという罪悪感が、彼女の心を締め付けた。これまで、いかなる時も冷静沈着で、感情を一切表に出さなかった唯華の感情が、初めて露わになった瞬間だった。彼女は、自らの計画のわずかな綻びが、仲間たちの身に降りかかったことに深く責任を感じていた。その痛みは、彼女の心を深くえぐり取った。


逮捕された隊員たちは、警察署で厳しい取り調べを受けていた。しかし、彼らは唯華の教えを忠実に守り抜いた。


「お前たちは何者だ?なぜこのような場所に集まっていた?組織の目的は何だ?リーダーは誰だ!」ベテラン刑事の怒号が取り調べ室に響き渡る。だが、隊員たちは黙秘を貫き、あるいは用意された偽の情報だけを口にした。


「我々は、ただの民間人です。山登りのサークルで集まっていました。武器は、友人から借りたものです。サバイバルゲームに使っていました。」彼らは、事前に訓練された通り、一貫して曖昧な供述を続けた。唯華の名前も、組織の目的も、地下基地の存在も、一切口にしなかった。彼らの口からは、新日本解放戦線の実態につながる情報は、何一つとして引き出せなかった。警察は、逮捕された隊員たちが何者であるのか、彼らの背後にどのような組織があるのか、その全貌を掴むことができなかった。彼らの沈黙は、組織の訓練の徹底ぶりと、隊員たちの唯華への絶対的な忠誠を示していた。


このニュースは、公安警察の黒崎にさらなる焦燥感をもたらした。大規模な逮捕劇にもかかわらず、組織の全貌は依然として闇の中だった。彼は、自身の仕掛けた罠が、組織の幹部ではなく、末端の隊員を捕らえるにとどまったことに、苛立ちを隠せなかった。


「彼らは、訓練されている。決して口を割ろうとしない。背後には、相当な組織力を持つ者がいる。我々は、奴らの手口を過小評価していた。」黒崎は、報告書を叩きつけた。しかし、彼の焦りは、唯華の悲しみとは異なるものだった。唯華は、仲間の苦しみを我が事のように感じ、その痛みに涙を流していたのだ。黒崎の焦りは、捜査の停滞に対するものであり、組織の全貌を掴めないことへの苛立ちだった。

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