第21話、公安警察や自衛隊の動向。そして内部から崩れる影。
地下壕の奥深く、T-80U主力戦車十台とBMP-3歩兵戦闘車十五台、BTR-80装甲兵員輸送車五台、BRDM-2偵察戦闘車二台、2S1グヴォズジーカ自走榴弾砲三台、BM-27ウラガン多連装ロケットシステム二基、そしてZU-23-2対空機関砲五門の搬入が完了すると、技術省の吉岡と佐藤の指揮のもと、熟練の整備士たちが直ちに点検と組み立てに取り掛かった。彼らの顔には、新たな兵器への期待と、長距離輸送による疲労が入り混じっていた。
「ロシアからの輸送ルートは完璧だったな。だが、細部の点検は怠るな。特に、光学照準器やFCS(射撃管制装置)は入念にチェックしろ。戦車の心臓部だ。これが狂えば、全てが無駄になる。2S1グヴォズジーカの砲身は歪みがないか、ウラガンのロケットポッドは正常に作動するか、全てを厳密にチェックしろ」
吉岡健太郎の声には、疲労の色よりも、新たな兵器への期待が滲み出ていた。元航空自衛隊のF-15戦闘機のエンジン整備士として培った彼の技術は、T-80Uの複雑な機構を読み解く上で遺憾なく発揮される。彼は、戦車の砲塔内部に潜り込み、精密な電子機器の配線を一本一本確認していく。彼の隣では、若手の整備士たちが彼の指示のもと、迅速に作業を進めていた。彼らは、まるで医療手術を行うかのように、慎重かつ正確に作業を進めていた。
佐藤は、Mi-35MとMi-8MTVの電気系統の配線図を睨み、精密な作業を進めていた。彼の指先は繊細で、細い配線をまるで蜘蛛の糸を操るかのように丁寧に扱っている。ヘリコプターのローターブレードの取り付け、アビオニクスシステムのチェック、燃料系統の確認。全てにおいて、寸分の狂いも許されない。ミリ単位の調整が、ヘリコプターの性能を左右するのだ。
「Mi-35Mのエンジンは問題ありません。ただ、一部の配線に僅かな腐食が見られます。交換が必要です。Mi-8MTVも同様に、油圧系統の微細な漏れが確認されました。全てリストアップし、交換部品を発注します。BTR-80の駆動系、BRDM-2の偵察機器、すべて完璧に動作させなければならない」
佐藤の報告に、吉岡は満足げに頷く。海外からの密輸である以上、完璧な状態の兵器が手に入ることは稀だ。しかし、彼らの手にかかれば、どんなに老朽化した兵器でも、最高の状態に蘇る。彼らは、まるで外科医のように、それぞれの兵器を解体し、修理し、そして再構築していく。彼らの技術は、唯華の「浄化」を現実のものとする上で、不可欠なものだった。地下壕内には、最新鋭の整備機器やスペアパーツが潤沢に備蓄されており、あらゆる故障に対応できるよう準備が進められていた。
同時に、大量の小火器や弾薬の搬入も進められていた。兵站省の渡辺と小林は、地下壕の広大な武器庫に運び込まれた無数の木箱や金属製のコンテナを、迅速かつ正確に分類していく。その数は、想像を絶するものだった。
「AK-103アサルトライフルはF区画、RPG-7対戦車ロケットはG区画だ! SVD狙撃銃はB区画に、Makarov PM拳銃は専用の保管庫へ! 弾薬はロット番号と製造年月日を必ず確認しろ! 誤った弾薬を使うな! 数も厳密に記録しろ! PKM機関銃、AGS-17自動擲弾銃、RPO-Aロケット擲弾銃もそれぞれの区画へ正確に格納しろ!」
渡辺の指示が、武器庫の奥まで響き渡る。彼の声は、大量の武器を前にしても微塵も乱れることがなかった。小林が開発したQRコードによる在庫管理システムは、この膨大な量の物資を滞りなく管理する上で不可欠なものだった。彼はタブレットを巧みに操作し、搬入された武器一つ一つにQRコードを貼り付け、その情報をデータベースに登録していく。全ての武器に個別認識番号が振られ、どこに何があるかが瞬時に把握できるシステムだった。
弾薬の種類は多岐にわたり、5.45x39mm弾(AK-103用)、7.62x39mm弾(旧式AK系用)、7.62x54mmR弾(SVD用)といった小銃弾から、125mm戦車砲弾(T-80U用)、30mm機関砲弾(BMP-3、Mi-35M用)、122mm榴弾(2S1グヴォズジーカ用)、220mmロケット弾(BM-27ウラガン用)、23mm機関砲弾(ZU-23-2用)、さらには9K111 Fagot対戦車ミサイルや9K38 Igla携帯式地対空ミサイルといった重火器の弾薬まで、あらゆる種類が運び込まれていた。その総数は、AK-103が約2,000丁、AK-74Mが約3,000丁、RPG-7が500基、SVDが300丁、Makarov PM拳銃が1,000丁にも及んでいた。その他、PKM機関銃が500丁、AGS-17自動擲弾銃が100丁、RPO-Aロケット擲弾銃が300丁、さらには9M133コルネット対戦車ミサイルが200基と、多種多様な兵器が地下に眠っていた。弾薬は、それぞれ数百万発単位で備蓄されていく。
武器庫の奥には、さらに厳重に保管された区画があった。そこには、携行性の高いAT-4対戦車ロケットが200基、そしてスティンガーミサイルに匹敵する性能を持つとされる9K38 Igla携帯式地対空ミサイルが100基、それぞれ専用の保管庫に収められていた。これらは、万が一の事態に備え、最重要兵器として分類されており、温度・湿度管理が徹底されていた。地下壕の各所に分散して保管され、万が一の事態にも対応できる体制が整えられていた。
地下壕の広大な訓練場では、斉藤と田中が指導する実戦部隊の訓練が、これまで以上に厳しさを増していた。斉藤は、筋肉質な体格に坊主頭、顔には無数の傷跡が刻まれた生粋の軍人といった風貌だ。田中は、それとは対照的に細身だが、その眼光は鋭く、心理的なプレッシャーをかける訓練を得意としている。新たな戦車やヘリコプターの到来は、訓練内容に新たな深みをもたらしていた。
T-80UとBMP-3、BTR-80の操縦訓練は、地下壕の最も深く、広大な区画で行われた。地下空間全体に設置された振動吸収材と防音壁が、辛うじてその轟音を閉じ込めていたが、それでも地下壕全体が微かに震えるような錯覚を覚えるほどだった。訓練場には、模擬の市街地、山岳地帯、さらには河川の障害物まで再現され、実戦さながらの状況で訓練が行われた。照明は、昼夜を問わず訓練できるよう、調整可能になっていた。
「吉田! もっとアクセルを踏み込め! 敵の砲撃を回避するイメージで、低速スラロームから高速スラロームへの切り替えを意識しろ! 市街戦では、一瞬の判断が命取りになる! 躊躇するな! 加藤、BTR-80で迅速に歩兵を輸送しろ! BRDM-2は常に最前線で敵を偵察し、情報を送れ!」
斉藤の怒号が、戦車の轟音にも負けじと響き渡る。元機甲科の吉田は、T-80Uの複雑な操縦桿を巧みに操り、地下壕内に再現された模擬市街地を猛スピードで駆け抜けていく。戦車の巨体が、わずかな操縦ミスで壁に激突しそうになるが、吉田は冷静沈着に対応し、寸前で回避する。その横では、BMP-3を操縦する加藤が、歩兵との連携を意識した動きを反復していた。車体の上には、彼が指揮する歩兵分隊が乗り込み、ハッチからの素早い降車と展開の訓練を繰り返している。彼らは、戦車と歩兵が一体となった「機甲歩兵部隊」として、完璧な連携を目指していた。
航空戦闘部隊の高橋は、Mi-35MとMi-8MTVのシミュレーターで、来るべき実戦に備えていた。地下壕での本格的な飛行テストはまだできないものの、彼は操縦マニュアルを読み込み、幾度となくシミュレーションを重ねることで、Mi-35Mの複雑な兵装システムとMi-8MTVの輸送能力を完全に把握しようとしていた。シミュレーターは、あらゆる天候条件や、敵の妨害電波、さらには被弾状況まで再現できる高機能なものだった。
「Mi-35Mの23mm機関砲の射角、さらに詰める必要がある。対地攻撃の際に、最大限の火力を発揮できるようにな。目標は、常に敵の弱点だ。燃料タンク、弾薬庫、指揮所…ピンポイントで叩き潰せ。Mi-8MTVは、常に隊員を安全に、迅速に輸送する。敵の空域を突破し、上空からの脅威を排除しろ!」
高橋は、シミュレーターの画面を見つめながら、独り言のように呟いた。彼の眼差しは、未来の日本の空をMi-35Mが舞い、唯華の「浄化」を推し進める姿を鮮明に捉えているようだった。彼のチームは、夜間の低空飛行訓練や、奇襲攻撃のシミュレーションを繰り返していた。時には、シミュレーター上で自衛隊の航空機や艦船を標的に設定し、仮想の空中戦や対艦攻撃の訓練も行っていた。
一方、歩兵部隊は、新たな武器の習熟訓練に勤しんでいた。AK-103アサルトライフルを構え、模擬市街地を駆け抜ける隊員たち。彼らは、斉藤と田中の厳しい指導のもと、姿勢、呼吸、トリガーコントロールといった射撃の基本から、戦術的な移動、連携、そして負傷者の救護まで、あらゆる状況を想定した訓練を繰り返していた。射撃場では、一日数百発もの弾薬が消費され、隊員たちの技術は目覚ましい進歩を遂げていた。彼らは、市街地での潜伏、狙撃、突入、制圧といった、特殊部隊さながらの訓練を行っていた。
「RPG-7の発射は、もっとスムーズに! 標的を確実に捉え、一撃で仕留めろ! 対戦車ミサイルは、敵戦車の弱点を狙うんだ! 燃料タンクか、履帯だ! 一発で仕留められないなら、二発、三発と撃ち込め! AGS-17で広範囲を制圧し、RPO-Aで敵のトーチカを破壊しろ!」
田中の声が、訓練場に響き渡る。隊員たちは、汗と泥にまみれながらも、黙々と訓練を続けていた。彼らの眼差しには、厳しい訓練に耐え抜く覚悟と、唯華が求める「浄化」を成し遂げるため、己の肉体と精神を極限まで追い込む決意が宿っていた。彼らは、もはや単なる兵士ではなく、唯華の「浄化」を遂行するための「尖兵」と化していた。
新たに、特殊作戦部隊も編成されていた。彼らは、潜入、偵察、要人警護、そして暗殺といった、より専門的な任務を遂行するために選抜された精鋭たちだった。彼らには、消音器付きの拳銃や、暗視装置、超小型ドローン、盗聴器、偽造IDといった特殊装備が与えられ、地下壕の奥深くで秘密裏に訓練が行われていた。彼らは、顔に迷彩を施し、言葉を交わすことなく、完璧な連携で目標を排除する訓練を繰り返していた。彼らの訓練は、肉体的なものだけでなく、精神的なものも重視されており、心理戦や拷問への耐性まで鍛え上げられていた。
東京の公安警察本部に、黒崎の焦燥感は日増しに募っていた。彼の机には、新潟と長野の県境付近で確認される不審な電波と大型車両の目撃情報が、以前と変わらず積み重なっていた。しかし、決定的な証拠は掴めず、彼の直感は、まるで巨大な蜘蛛の巣に絡め取られたかのように、空回りするばかりだった。黒崎の顔には、疲労の色が濃く浮かび、目の下の隈は日を追うごとに深くなっている。時折、ネクタイを緩め、眉間に深い皺を刻んで考え込む姿は、彼がいかにこの事態に心を砕いているかを物語っていた。
「長野方面への不審な物流情報は、依然として途絶えていません。しかし、全て正規の輸送許可証と積載証明書を携帯しており、偽装を見破ることができません。彼らは我々の裏をかいているとしか思えません。まるで、我々の思考を先読みしているかのようです。何かが、この国で水面下で蠢いている…それが何なのか、どうしても掴めない。この不可解な状況は、日本の安全保障を脅かす重大な事態に発展しかねません」
部下からの報告に、黒崎は奥歯を噛み締める。情報漏洩の可能性を疑い、公安警察の木村と自衛隊情報本部の田中を密かに監視させていたが、彼らは表面上は忠実な職務をこなし、これまで具体的な証拠は一切見つかっていなかった。唯華の情報省の山田が、完璧な偽装と攪乱工作を行っていたからだ。公安の捜査網は、巧みに張り巡らされた偽の情報によって、まるで手綱を引かれたかのように翻弄されていた。
「木村と田中については、引き続き監視を続けろ。だが、現時点では彼らの動きに不審な点は見られない。我々は、奴らの手玉に取られているのかもしれない。奴らは我々の思考パターンを熟知しているとしか思えない。これは、日本の安全保障を揺るがす事態に発展する可能性を秘めている。このままでは、取り返しのつかないことになる…」
黒崎は、自身の無力感に苛立ちながらも、冷静さを保とうと努めていた。彼の直感は、日本のどこかで恐るべき力が形成されつつあることを告げていたが、具体的な「点」を結びつける「線」が、どうしても見つからないのだ。彼は、日本を覆う不穏な空気を感じ取っていた。公安内部でも、この原因不明の事態に、疲労と不信感が募り始めていた。
「上層部からの圧力も強まっています。これ以上の成果が出なければ、捜査の縮小も検討されると…。我々の存在意義が問われています。しかし、我々は諦めるわけにはいきません。この国の未来のために、何としても奴らの尻尾を掴まなければならない」
部下の一人が、恐る恐る口を開いた。黒崎は拳を握りしめた。彼は、もはやこの事態が単なるテロ組織の活動ではないことを直感していた。背後にいるのは、より巨大で、より巧妙な、日本の根幹を揺るがす勢力だ。しかし、彼は諦めなかった。この日本で何か恐ろしいことが起こっているという直感は、彼を突き動かし続けた。彼は、独自の情報網を駆使し、海外の協力機関にも接触を図っていたが、確かな情報は得られていなかった。彼の焦燥感は、日に日に募るばかりだった。日本の未来が、まさに彼の双肩にかかっているかのようだった。彼は、自身のデスクに置かれた日本の地図を睨みつけ、どこかに隠された「巨竜」の巣を探し続けていた。
長野の地下壕では、組み立てが完了したMi-35M攻撃ヘリコプターが、格納庫の広大な空間で静かにその巨体を横たえていた。機体には、最新のステルス塗料が施され、夜間の行動においてもレーダー探知を極限まで回避できるよう配慮されていた。整備チームは最終点検を終え、吉岡健太郎が唯華への報告を終えるところだった。
「唯華様、Mi-35M三機とMi-8MTV五機、それに新たに到着したヘリコプターの整備が完了しました。システムは全て正常に作動しています。T-80U十台、BMP-3十五台、BTR-80五台、BRDM-2二台、2S1グヴォズジーカ三台、BM-27ウラガン二基、ZU-23-2五門も、射撃テストまで可能な状態です。いつでも指示を」
吉岡からの報告がチャットルームに届く。唯華は東京の自室で、クアトロモニターを見つめながら満足そうに頷いた。その口元には、微かな笑みが浮かんでいる。彼女の脳裏には、完成したMi-35Mが日本の空を悠然と舞い、T-80Uが大地を蹂躙する姿が鮮明に描かれていた。それは、彼女の「浄化」が現実となりつつある、確かな手応えだった。
「よくやった、吉岡。テスト飛行は、私が指示するまで待機せよ。そして、隊員たちの訓練をさらに強化しろ。いざという時に、最大限の力を発揮できるように。特に、T-80Uの射撃訓練と、Mi-35Mの武装システムの実習は徹底させろ。実戦を想定した訓練を怠るな。常に最悪の事態を想定して、最善を尽くすのだ」
唯華の指示は、具体的かつ冷徹だった。彼女の言葉には、一切の躊躇や感情の揺らぎがなかった。彼女は、この強力な兵器群が、彼女の「浄化」の象徴となることを確信していた。
そして、その日の夜、地下壕の射撃場では、T-80U主力戦車の初の射撃テストが秘密裏に行われた。地下壕の広大な空間に設置された模擬標的に向かって、125mm滑腔砲が火を噴く。轟音と閃光が地下空間を震わせ、強烈な衝撃波が周囲に広がる。唯華は、東京の自室のモニター越しに、その様子をじっと見つめていた。その瞳は、一点に集中し、瞬き一つしない。砲弾は正確に標的の中心を捉え、粉砕する。標的は、自衛隊の戦車を模したものだった。2S1グヴォズジーカ自走榴弾砲も、その122mm榴弾を模擬陣地へと撃ち込み、正確な着弾点を示した。BM-27ウラガン多連装ロケットシステムも、模擬市街地を広範囲に制圧するロケットの雨を降らせた。
「素晴らしい…」
唯華は静かに呟いた。その瞳には、冷たく燃える炎が宿っていた。それは、彼女の決意の証であり、新たな日本の夜明けを告げる光となるはずだった。彼女は、この国を蝕む病巣を「浄化」し、真の平和と秩序をもたらすためには、いかなる犠牲も厭わない覚悟を決めていた。その確固たる決意が、彼女の静かな寝顔の奥で、激しく燃え盛っていた。彼女の描く「浄化」の道は、血と硝煙に彩られた過酷な道であったが、彼女には迷いがなかった。
唯華は、東京の自室からクアトロモニター越しに、長野の地下壕の全活動を掌握し続けていた。公安警察の木村と自衛隊情報本部の田中からの情報は、引き続き暗号化された専用回線を通じて彼女の元に届けられていた。彼らは、黒崎の監視下にあったものの、唯華の情報省が仕掛ける巧妙な情報攪乱と偽装によって、疑惑は一時的に晴れていた。これにより、彼らは再び「新日本解放戦線」にとって貴重な情報源としての役割を果たすことができていた。
「公安警察は、未だ具体的な証拠を掴めていないが、我々の活動が活発化していることは察知している。今後、彼らの捜査の手が及ぶ前に、次の段階へと移行する必要がある。時間を無駄にすることはできない。我々は、この国の未来を背負っている」
唯華は、国家評議会のチャットルームに集まった幹部メンバーに告げた。彼女の言葉は、冷徹なまでに理性的で、感情の揺らぎは一切見られなかった。背筋を伸ばし、腕を組みながらモニターを見つめるその姿は、まるで絶対的な女王のようだった。
「佐々木議長、財政省の大野大臣。新たな資金調達と物資の確保、そして今後の活動費用について、具体的な計画を早急に策定せよ。我々の活動は、今後さらに拡大していく。常に潤沢な資金を確保しなければならない。海外のブラックマネー市場だけでなく、日本の財界からも資金を調達する方法を検討しろ」
佐々木賢治は、唯華の言葉に深く頷く。元大手企業経営者としての経験が、この巨大組織を円滑に運営する上で不可欠な要素だった。彼の顔には、常に冷静沈着な表情が浮かんでおり、どんな困難な状況でも動じない、強い意志を感じさせる。大野義明は、タブレットを操作しながら、海外の協力者を通じて行われている非合法な資金調達の状況を確認する。彼の金融知識は、組織の財政を潤沢に保つ上で欠かせないものだった。裏では、架空の企業取引やオフショア口座を利用した大規模な資金洗浄が行われており、その額は日々膨れ上がっていた。それは、日本の経済システムをも揺るがしかねない規模に達していた。
「兵站省の渡辺、小林。引き続き、武器弾薬、燃料、食料、医療品などの調達、保管、供給を徹底しろ。特に、新たに調達を検討している9K38 Igla携帯式地対空ミサイルと、ZPU-4対空機関砲の密輸ルートを確立せよ。また、BMP-2歩兵戦闘車を二十台、BM-21グラート多連装ロケットシステムを五基、さらにZU-23-2対空機関砲を十門、追加で密輸する手筈を整えろ。これらの兵器は、防空能力と火力支援能力を飛躍的に向上させる。さらに、T-72M1主力戦車を二十台、MT-LB多目的装甲牽引車を二十台、2S3アカーツィヤ自走榴弾砲を七台、9K35ストレラ-10自走対空ミサイルシステムを五基、そしてMi-24ハインド攻撃ヘリコプターを二機、追加で密輸する計画を立てろ。これらは全て、短期間での運用開始を目指す」
渡辺は、物資調達のプロとして、海外の闇市場との交渉をすでに開始していた。彼の目は常に獲物を狙う猛禽類のように鋭く、口元には不敵な笑みが浮かんでいる。携帯式地対空ミサイルと対空機関砲は、日本の空を制圧し、上空からの脅威に対抗するために不可欠な兵器だった。BMP-2は、BMP-3の数を補完し、火力と機動力を高める。BM-21グラートは、広範囲への火力支援を可能にし、ZU-23-2は、軽装甲車両や航空機への攻撃に有効な武器だ。彼は、世界中の紛争地域に張り巡らされた自身のネットワークを駆使し、最も効率的で安全な密輸ルートを構築していた。時には、国連の監視下にある物資を横流しするような大胆な手口も用いていた。新たに加わるT-72M1は、T-80Uを補完する主力戦車として、MT-LBは多様な任務に対応可能な汎用車両として、2S3アカーツィヤは火力支援の中核として、9K35ストレラ-10は機動防空の要として、そしてMi-24ハインドはMi-35Mを補完する攻撃ヘリコプターとして、それぞれ重要な役割を果たすことになっていた。
「情報省の山田。公安警察の動きをさらに攪乱し、我々の真の意図を悟られないように徹底しろ。偽の情報を流し、彼らを別の方向へ誘導する工作を継続せよ。そして、内通者の木村と田中からの情報は、これまで以上に重要になる。彼らの安全も確保しろ。彼らは、我々の活動を成功させる上で、極めて重要な駒だ。公安内部の対立を煽り、捜査の足並みを乱す工作も強化しろ」
山田は、元公安警察官としての経験を活かし、公安の思考パターンを先読みし、巧妙な偽装情報を流したり、無線通信の周波数を頻繁に変更したりすることで、彼らの目を欺いていた。彼の顔には常に不敵な笑みが浮かんでおり、その冷静沈着な立ち居振る舞いは、相手に真意を悟らせない。偽の物流情報を流し、監視カメラに映る車両に細工を施すなど、あらゆる手を使って公安警察の捜査を攪乱していた。時には、公安内部の不審な動きを、別の犯罪組織の活動であるかのように見せかける偽情報も流していた。彼の工作は、公安内部に疑心暗鬼を生み出し、捜査の停滞を招いていた。
「技術省の吉岡、佐藤。Mi-35Mの最終テスト飛行を準備せよ。地下壕でのホバリングテストだけでなく、実際に地下壕の入り口付近での短距離飛行テストを計画する。外部への音漏れには最大限の注意を払え。そして、T-90主力戦車の調達が可能か、海外の同志に確認を依頼するとともに、2S19 Msta-S自走榴弾砲のような野砲も今後の作戦には必要となる。整備と研究開発を同時に進めろ。特に、T-90は二十台、2S19 Msta-Sは十台を目標とする。さらに、MiG-29戦闘機を二機、Su-25攻撃機を二機、追加で密輸する可能性を探れ。これらの航空機は、日本の空を掌握するために不可欠となる。将来的には、より高性能なステルス戦闘機の調達も検討する。また、新たに到着するT-72M1、MT-LB、2S3アカーツィヤ、9K35ストレラ-10、Mi-24ハインドの整備と運用準備を迅速に進めろ。特に、これらの兵器の日本国内での運用に合わせた改造や改良も検討しろ」
吉岡は、新たな戦車と航空機の調達可能性に興奮を隠せない様子だった。その目は輝き、早口で今後の計画について話し始めた。T-90は、T-80Uの近代化改良型であり、防御力、攻撃力、そして機動性、全てにおいて強化されている。2S19 Msta-S自走榴弾砲は、強力な火力支援を提供し、戦場の支配力を高める上で重要な役割を果たす。彼は、これら新兵器の運用マニュアルを徹底的に研究し、地下壕での運用シミュレーションを繰り返した。戦闘機や攻撃機が日本の空を舞う日もそう遠くはなかった。
「訓練省の斉藤、実行部隊の諸君。訓練はさらに厳しさを増す。特に、T-80U戦車とBMP-3歩兵戦闘車の連携訓練、Mi-35MとMi-8MTVの編隊飛行訓練、そして歩兵部隊との連携を強化しろ。実戦を想定した、より実践的な訓練を課す。新たな兵器の導入に伴い、訓練内容も適宜更新していく。全ての隊員が、いかなる状況にも対応できる精鋭となるまで、訓練を止めない。必要であれば、他国の特殊部隊との合同訓練も検討する。新たなT-72M1、MT-LB、2S3アカーツィヤ、9K35ストレラ-10、Mi-24ハインドの運用訓練を直ちに開始せよ。特に、自走砲とロケットシステムの連携、対空ミサイルシステムの運用能力を向上させることを最優先とせよ」
斉藤は、寡黙ながらもその眼光に強い決意を宿していた。彼は、隊員たちを唯華の理想を体現する戦士へと磨き上げることに、全力を傾けていた。新たな戦車やヘリコプターの操縦訓練は、より実践的なシナリオで行われ、隊員たちの士気は高まっていた。彼らは、睡眠時間を削り、食事を喉に詰め込み、ただひたすらに訓練を繰り返した。唯華の「浄化」の歯車は、着実に、そして猛烈な速度で回転を続けている。日本の未来は、彼女の冷徹な指揮のもと、大きく揺れ動こうとしていた。




