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ある日私は、革命家という名のテロリストになった。  作者: 水鳥川倫理
公安警察や自衛隊の動向。そして内部から崩れる影。

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第20話、公安警察や自衛隊の動向。そして内部から崩れる影。

長野の地下深くに広がる巨大な空間で、神月唯華が思い描く「浄化」の巨大な歯車は、滑らかに、そして確実に回転を始めていた。東京、高層マンション最上階にある彼女の自宅に設置された、特注のクアトロモニターには、日を追うごとにその活動が精緻さを増していく地下壕の内部映像が映し出されている。それはまるで、彼女の指揮棒の先に、強大な軍隊が徐々にその姿を現し、形成されていくかのようだった。金属の匂い、機械の駆動音、そして人々の真剣な作業の気配が、モニター越しにも唯華の感性を鋭く刺激し、彼女の脳裏に描かれた未来の日本像を一層鮮明なものにしていた。


この地下壕は、かつて秘密裏に建設された大規模な軍事施設を再利用したものだった。戦後間もない時期に建設が始まり、冷戦期には極秘裏に核シェルターとしての機能も付与されたとされる。全長数キロメートルに及ぶ広大な空間には、資材搬入用の巨大なトンネル、兵器の格納庫、整備工場、弾薬庫、隊員たちの訓練場と居住区、さらには地下水脈を利用した生活用水供給システムまで、全てが網羅されていた。長野市街の一部に匹敵するその総面積は、唯華の指示のもと、まるで生き物のように機能し始めていた。彼女の「浄化」の意思が、この巨大な地下要塞に命を吹き込んでいるかのようだった。


地下壕の奥深くには、有事の際に外界から完全に遮断できる頑丈な防爆扉が設置され、一切の侵入を許さない堅牢さを誇っていた。内部には高度な空調システムと空気清浄機が完備され、長期間の籠城にも耐えうる環境が整えられている。外科手術が可能な最新設備を備えた医療施設には、専属の医師と看護師が常駐し、数ヶ月分の食料、水、燃料といったライフラインも確保され、自給自足に近い体制が築かれていた。



その夜、唯華の指示のもと、長野の地下壕はこれまで以上の緊張感に包まれていた。新たな「物資」の搬入が予定されていたからだ。情報省の山田が送る偽装情報と偽の物流データが日本の治安機関の目を欺く中、海外の「同志」からの支援物資が、人知れず日本の海岸線へと近づいていた。


深夜、太平洋の荒波を掻き分け、一隻の貨物船が千葉県の僻地の港に音もなく接岸した。船名は偽装され、「平和丸」と銘打たれた船体は、ごく一般的な工業製品を積載しているかのように見せかけている。だが、その船倉には「新日本解放戦線」が待ち望んだ「空の猛獣」と「地の巨人」が眠っていた。全長約150メートル、総トン数1万トンを超える大型船の船底には、特殊な二重底構造が採用されており、通常の貨物検査では発見できない秘密の貨物室が隠されていた。


港には、兵站省の渡辺と小林が、厳重な警備を敷きながら待機していた。渡辺は、長年の裏社会での経験が顔に刻み込まれた、いぶし銀の男だ。その眼光は鋭く、全身から発せられる威圧感は、周囲の空気をぴんと張り詰めさせている。対照的に、小林は細身で物静かだが、その指先でタブレットを操る姿は、並外れた知性を感じさせた。彼らの周囲には、民間を装った実行部隊の隊員が百名以上配置され、不審者の接近を警戒している。隊員たちの手には、密かに持ち込まれたMP5サブマシンガンやAK-103アサルトライフルが握られ、いつでも応戦できる態勢が整えられていた。港の周囲には偽装された監視カメラが設置され、沖合には海上保安庁の巡視船を模した監視船が偽装情報を受けながら航行しており、彼らの目から密輸船の存在は完全に隠蔽されていた。港の入り口には、偽の警備会社が設置したかのようなバリケードが置かれ、不審な車両の侵入を阻止する体制が整えられていた。


「段取り通り、迅速に! 夜明けまでには全てを完了させるぞ! 一刻の猶予もない!」


渡辺の短い指示が、張り詰めた空気の中に響き渡る。彼の声には、長年の裏社会での経験に裏打ちされた、確固たる自信が満ち溢れていた。巨大な貨物船のハッチがゆっくりと開き、中から姿を現したのは、ソビエト連邦が誇る傑作戦車、T-80U主力戦車だ。その圧倒的な巨体と、125mm滑腔砲の武骨な砲身が、闇夜に不気味な存在感を放つ。一台、また一台と、合計十台のT-80Uが重厚な音を立てて船倉から姿を現した。戦車の履帯がアスファルトを噛み砕く音が、闇夜に響き渡る。


続いて、BMP-3歩兵戦闘車が十五台、さらには人員輸送に特化したMi-8MTV輸送ヘリコプターが五機、そして最も厳重に梱包された状態でMi-35M攻撃ヘリコプターが三機、次々と姿を現した。これらは全て、海外の闇市場を通じて調達され、巧妙なルートで日本へと密輸されてきたものだった。その規模は、一組織が保有する戦力としては異常としか言いようがない。船倉からは、さらにBTR-80装甲兵員輸送車が五台、BRDM-2偵察戦闘車が二台、2S1グヴォズジーカ自走榴弾砲が三台、BM-27ウラガン多連装ロケットシステムが二基、そしてZU-23-2対空機関砲が五門、次々と姿を現した。これらの車両は、すべて分解された状態で運び込まれ、港の隅に用意された仮設の組み立て場所で、熟練した技術者によって迅速に組み立てられていく。


「慎重に。傷一つ付けるな。これは我々の未来だ。最高の状態で地下壕へ運び込め。一歩間違えれば、全ての計画が水泡に帰す」


小林がタブレットを操作し、QRコードで各車両の情報をスキャンしていく。戦車の砲身番号、ヘリコプターの機体番号、そして製造ロット。全てのデータはリアルタイムで唯華のクアトロモニターに反映され、彼女は東京の自室から、この一大作戦の全貌を把握していた。彼女の表情には、微かな高揚感が浮かんでいた。彼女の瞳は、モニターの向こうで行われている作業の一挙手一投足を、まるで自身の目で見るかのように捉えていた。


港から長野の地下壕までは、厳重な警備と偽装を施した特殊車両で輸送される。T-80U戦車は、それぞれ複数の大型トレーラーに厳重に固定され、分厚いカモフラージュネットで覆われた。その上には、偽装用の木材や建築資材、さらには一般的な家電製品の梱包材が積み上げられ、一見すると何の変哲もない建設用資材の輸送車両に見えるよう工夫されていた。Mi-35MとMi-8MTV、そして新たに到着したヘリコプターは分解され、特製の大型コンテナに収められた。コンテナには、「精密機械輸送中」と書かれた偽のラベルが貼られ、厳重な梱包が施されており、さらに温度管理がされているかのように偽装されていた。BTR-80やBRDM-2などの装甲車両は、大型トラックに積載され、農業機械や大型重機と偽装されていた。2S1グヴォズジーカやBM-27ウラガンといった大型兵器は、部品ごとに分解され、複数のトラックに分散して輸送された。


輸送ルートは複数設定され、公安警察の監視網を掻い潜るため、山田の情報省が事前に用意した複数の偽装ルートを頻繁に切り替えていた。偽の無線通信が飛び交い、偽の車両位置情報が流される。全ては、日本の治安機関の目を欺くためだった。高速道路のサービスエリアでは、偽の故障を装って停車し、別の車両とすり替えるといった巧妙な手口も用いられた。また、主要な交差点には、民間人を装った監視員が配置され、公安車両の接近を事前に察知する体制も整えられていた。これらの工作は、公安の捜査を迷宮入りさせるための緻密な計画の一環だった。


夜明け前、全ての車両とヘリコプターは無事に地下壕へと運び込まれた。巨大な格納庫の扉が、重々しい音を立てて閉じられ、外界との接触が完全に遮断される。地下壕内部に響き渡るエンジンの轟音と、金属の匂いが、新たな戦力の到来を告げていた。

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