第101話、終わりの始まり
冷戦状態は、わずか二年で終結した。シュタイナー大佐が、自らの狂信的な思想を世界に広めるため、神聖日本帝国の勢力圏である南米諸国に対し、秘密裏に武器と資金を供与したことが、情報省・山田剛によって完全に暴かれたのだ。
東京、最高指導者邸地下。
山田剛は、憤怒の表情で、シュタイナーの陰謀に関する詳細な証拠を唯華に提示した。
「唯華様!シュタイナーは、我々を裏切りました!彼は、南米での反帝国組織を支援し、我々の秩序を内部から破壊しようとしています!」
唯華は、冷静沈着であった。彼女は、この裏切りを予期していた。
「山田大臣。感謝する。これで、我々は彼らに対する『聖戦』を、世界に対し正当化する大義名分を得た。美咲、斉藤総司令官、吉岡大臣。作戦名『オワリ(終焉)』、発動準備を命じる」
『オワリ』作戦の目的は、ナチス第4帝国の電撃的な殲滅であった。
吉岡大臣は、新たな兵器『D-W15』、中性子ビーム砲を搭載した洋上移動要塞『フドウ改』の最終配備を完了させていた。
「唯華様。D-W15中性子ビーム砲は、敵の戦車の複合装甲を物理的に溶解させることなく、内部の乗組員だけを放射線で無力化できます。これは、彼らの狂信的な士気を、戦闘開始の瞬間に『無意味』なものにする、究極の兵器です」吉岡は、科学者としての陶酔感を滲ませた。
斉藤総司令官は、第1機甲師団、第1歩兵師団、そして特殊作戦部隊を全てヨーロッパに集中させ、ナチス第4帝国の心臓部、ベルリンへの進撃計画を練り上げていた。
唯華は、その小柄な体躯からは想像もつかないほどの威圧感をもって、幹部たちを見渡した。
「この戦争は、イデオロギーの戦いではない。秩序と混沌の戦いだ。ナチス第4帝国は、混沌の象徴であり、彼らの存在こそが、恒久的な平和への最後の障害である。この作戦をもって、全世界を、神聖日本帝国の絶対的な秩序の下に置く」
その日、神聖日本帝国は、ナチス第4帝国に対し、宣戦を布告した。
宣戦布告からわずか48時間後。作戦名『オワリ』が発動された。
大西洋上。
『フドウ改』洋上移動要塞が、ナチス第4帝国が建造した『潜水艦要塞』に対し、中性子ビーム砲を放った。ビームは、潜水艦の厚い外殻を透過し、内部の乗組員だけを、瞬時に無力化していった。潜水艦要塞は、外部からの損傷なく、無人のまま大西洋の底へと沈んでいった。
斉藤総司令官は、その映像を見て、戦慄した。「唯華様…これは、戦争ではない。粛清だ」
ヨーロッパ大陸。
第1機甲師団長・吉田悟のT-99部隊は、ナチス第4帝国の前線基地を、電撃的な速度で突破していった。ナチス軍が最新鋭と信じていた、我々から供与されたT-99のコピー機は、オリジナルのT-99の最新技術と、中性子ビーム砲の前に、全く歯が立たなかった。
ベルリン市街戦。
ベルリンは、シュタイナー大佐が最後の牙城として、狂信的な兵士たちで固めていた。副総司令官・田中慎吾と、第1歩兵師団長・加藤勇作の部隊は、ベルリン市街戦へと突入した。
「田中副総司令官!敵は、地下壕に潜伏しています!イデオロギーに洗脳された彼らは、降伏しません!」加藤師団長が報告した。
田中は、冷静に答えた。「我々の武器は、彼らの狂信性を打ち砕く、冷徹な『技術』だ。中村部隊長、特殊作戦部隊を地下壕に潜入させろ。無人ドローンを先行させ、催眠ガスを散布しろ。彼らの『狂信』を、一時的に停止させるのだ」
中村健太の特殊作戦部隊は、開発されたばかりの無人潜入ドローンを使い、ナチス兵の潜む地下壕に、静かに催眠ガスを散布した。狂信的なナチス兵たちは、戦うことなく、眠りについた。
旧帝国議事堂の地下、シュタイナー大佐の司令部。
唯華は、斉藤総司令官と共に、地下壕の最深部へと足を踏み入れた。シュタイナー大佐は、自らの敗北を悟り、最後の抵抗として、拳銃を構えていた。
「神月唯華!貴様は、我々の偉大な思想を裏切った!貴様こそが、世界にとっての悪魔だ!」シュタイナーは、狂ったように叫んだ。
唯華は、静かに、そして冷たい目で彼を見つめた。彼女の背中には、対戦車ライフルが背負われ、その手には、ナイフが握られていた。
「シュタイナー大佐。貴国のイデオロギーは、腐敗した旧時代の遺物だ。私は、貴国の命を持って、この世界の混沌を終わらせる」
唯華は、一瞬にしてシュタイナーとの距離を詰め、そのナイフを彼の心臓に突き立てた。
ナチス第4帝国は、指導者の死と共に、その歴史に終止符を打った。




