第99話、終わりの始まり
太平洋の制海権が、わずか15分で神聖日本帝国の手に渡った瞬間、総司令官・斉藤隆一は、第1機甲師団長・吉田悟に、最終命令を下した。
「吉田師団長、全師団をもって、アラスカ州へ電撃上陸せよ。目標は、太平洋岸の主要港湾と、内陸の空軍基地の制圧だ。速やかに、米本土侵攻のための橋頭堡を築け!」
吉田悟は、アラスカ沖の輸送船団の旗艦から、冷静沈着に指揮を執った。彼の師団は、T-99主力戦車を中核とする精鋭部隊である。
「了解!全師団、上陸開始!T-99、前進!アラスカを、神聖日本帝国の新たな領土とせよ!」
アラスカの海岸線に、T-99の鋼鉄の履帯が上陸した。米軍の守備隊は、E-M02による通信麻痺と、太平洋艦隊壊滅の衝撃によって、すでに組織的な抵抗能力を失っていた。
T-99は、その圧倒的な機動力と、WA-P弾の破壊力によって、アラスカの米軍基地を次々と制圧していった。吉田師団長は、T-99の車長席から、その精密な操縦技術を駆使し、雪と氷の極寒の地を、縦横無尽に駆け抜けた。
「各隊、対空警戒を厳にせよ!米空軍の反撃に備えろ!しかし、恐れるな。彼らの情報中枢は既に崩壊している。連携のない反撃など、我々の敵ではない!」
アラスカの制圧は、わずか48時間で完了した。吉田師団は、アラスカ全土を掌握し、西海岸への戦略的な進軍路を確保した。それは、米本土への侵略という、世界史の新たな一ページを切り開く、電撃的な勝利であった。
アラスカ制圧後、吉田師団の一部と、副総司令官・田中慎吾(40代、元警察SAT隊員、市街戦のエキスパート)が指揮する第1歩兵師団の一部は、洋上移動要塞『フドウ』に護衛され、アメリカ西海岸へと上陸を開始した。
最初の目標は、サンフランシスコ、そしてシアトル。都市の制圧は、市街戦のプロである田中に委ねられた。
「加藤師団長、中村部隊長。市街戦の原則は、一つ。敵に『見えない死』を味合わせることだ。T-99の支援の下、K-01ドローンで全ての建物をスキャンし、敵の熱源を瞬時に特定、殲滅せよ!」田中は、冷静かつ苛烈な命令を下した。
第1歩兵師団長・加藤勇作(30代、元自衛隊普通科、歩兵戦術のエキスパート)は、突撃班を率い、中村健太(30代、元自衛隊特殊作戦群)の特殊作戦部隊と共に、サンフランシスコの街へと突入した。
サンフランシスコ、ダウンタウン。
米軍の州兵と、民間人の義勇兵は、激しい抵抗を見せた。しかし、彼らは、神聖日本帝国軍が中国大陸で経験したような、非対称かつ三次元的な市街戦の洗練度を理解していなかった。
中村の潜入班は、事前に市内の通信インフラを乗っ取り、敵の無線を混乱させた。加藤の突撃班は、T-99の援護射撃の下、建物の最上階から最下階までを、K-01ドローンが示した敵の座標に、正確に弾を撃ち込み続けた。
唯華自身も、最前線に降下していた。漆黒の生地に銀色の装飾が施された軍服、右肩から胸にかけて金色の飾緒が輝き、漆黒の短めのスカート姿の彼女は、その小柄な体躯からは想像もつかない運動神経で、瓦礫の中を駆け抜ける。
彼女は、アサルトライフルを片手に、その背中に背負った対戦車ライフルを、躊躇なく米軍の装甲車に向けて発射した。
「唯華様、右側!敵狙撃兵!」 副官の美咲が、通信で警告した。
唯華は、反射的に体勢を低くし、同時にナイフを投げつけた。ナイフは、狙撃兵のライフルを構える腕に、正確に突き刺さった。ナイフを使った白兵戦を得意とする彼女にとって、接近戦は敵に一瞬にして死を与える領域だった。
「接近戦では、敵に思考の猶予を与えるな」唯華は、冷たい目で呟き、倒れた狙撃兵の頭部に、アサルトライフルで止めを刺した。
三週間の激戦の末、西海岸の主要都市は、神聖日本帝国の手に落ちた。米軍は、通信の麻痺と、T-99の圧倒的な技術力の前に、連携を失い、個々の抵抗は潰されるという、絶望的な状況に追い込まれていた。




