第166話 邪神降臨
俺に付けられた称号のせいなのか、笑いが止まらなくなる狗神デスジード。
「ファファファ! だが、みなぎる! ファファファ! 闇の力がみなぎってファファファ! おるぞ! ファファファ!」
笑いながら怒る人みたいになった、狗神デスジードだが、その素早さは、ミーニャや俺以上だった。
瞬間移動かと見紛うスピードでイーリアスを殴り飛ばした!
「ぐはっ!」
イーリアスの高い防御力でも大ダメージをくらったのか!? これは、後衛ではひとたまりもないぞ!
「ぴえぇ!」
ザックが念入りに『復活の炎』と『真炎の障壁』をかけ直し、シーラも召喚獣による防御をする。
エリーに向かってきた狗神デスジードに対して、俺が盾となり殴り合う!
狗神デスジードの鋭い爪が俺の身体にめり込み、それと同時に放った俺のホークトナックル✕サイザーナックルの防御無視八連撃のパンチが狗神デスジードの身体に三発入った!
「ファファファ! バウバウ! バウバウ!」
「ぐうっ!」
神チャ衣ナドレスを身に着けている俺でさえ、大きなダメージを負ってしまった!
エリーに回復してもらいながら再び渡り合う!
そして、狗神デスジードの笑い声に、犬の鳴き声の様なものが混じってきているぞ!?
どんどん邪神と一体化していっているのか!?
ミーニャが狗神デスジードの背後から破邪モードの破邪の剣と才蔵の刀による二刀流で攻撃した!
ガガガ!
「破邪の剣の方は小ダメージで、才蔵の刀の方は全くダメージを与えられてない感じがするにゃ!」
『おい! みんな気いつけぇ! こいつの身体は邪神の神気で覆われとる! 多分、聖竜の牙や聖魔剣、聖竜気くらいしかダメージを与えられんで! それでもダメージは少ないみたいや!』
『ぴえぇ!』
自分もいけるかと、攻撃してみたザックの『フェニックスウエイブ』も少しは効くようだ。
『光の戦士よ』
突然土の大輝石の声が頭にひびく!?
『神気をやぶる事が出来るのは神気だけ。ルイとエリーは微弱ながら神気を発しています。わたしが補助をしましょう。それを高めて攻撃するのです』
「エリー聞こえた?」
「うん! 神威の胸当てを通して伝わってきてるよ! 『歌神』の称号が影響しているみたい。言われてみればいつもと違う力を感じるよ!」
「よくわからないが、確かに感じる! この力を練れば良いのか」
エリーが歌で攻撃すると、狗神デスジードが大きくのけぞる。エリーは見事に神気を使いこなしているようだ。
俺も『拳神』『脳筋道を極めし者』『神を笑わせし者』の称号に意識を巡らせ、身体の中の今までとは違う気を感じる。そう言えば、聖竜王ファーヴニルは俺と初めて会った時に神の力の残滓を感じると言っていたな。
!?
これか!
この感覚を練り上げて……大輝石が補助をすると言っていたが、確かにスムーズに練れる気がする!
仲間達との連携を活かして、練り上げた神気パンチを狗神デスジードに叩き込む!
「ギャワン゙!」
防御した狗神デスジードの爪がへし折れ、確実にダメージが通った!
しかし、その傷はみるみるうちに再生されていく!
一撃の威力が足りないのか!?
狗神デスジードからすぐさま反撃がくる!
ダメージをくらいつつも、防ぎながら更に神気パンチで反撃する!
エリーもタイミングを合わせて同時に神歌で攻撃したが、やはりすぐに再生されてしまった!
これは……まずいぞ。
ダメージを与える事は出来ているが、どうしても一撃の出力が足りていない。
時間がかかってしまうが、あれを使うしかないか!?
「みんな! 俺は力をためる! しばらく任せて良いか!?」
「任せて!」
「おうとも!」
「お友達みーんな召喚して、わたしが守ってあげるよ!」
「ボスはでかいのぶちかますにゃ〜!」
「ぷえぇ〜!」
「ぴえぇ〜!」
頼りになる仲間たちだ!
俺は防御も捨て去り、ひたすら力をためる。
師ウォーラより伝授された、モンクスキル『ためる』の究極派生技でいくぜ!
肩幅に足を開き、手を天に向かって突き出す。
「邪夢賦流・独者闘憑龍玉の型! 原基魂!」
俺は突き出した両手から、世界中の生きとし生けるもののエネルギーを少しずつ分けてもらい、それを少しずつ両手の上に『ためる』。
時間の経過とともに徐々にためた力の玉が大きくなっていく。そのエネルギーに少しずつ神気を混ぜ合わせていった。
俺に狙いを定めた狗神デスジードが攻撃してくるが、仲間達の防御を抜かれたタイミングで、チョコによる入れ替え瞬間移動スキル『チョコ・ラ・エービー』で避難させてもらっている。
お陰で『原基魂』に全集中出来る。
原基魂はだいぶ大きくなってきた。
だがこれではおそらく足りない。まだまだ大きくしたいが、これ以上は大きくなる気配がない。
「大輝石よ! 俺の声を世界中の人々に届けることは出来るか?」
『やれます。これで届きますよ』
「世界のみんな! 俺の名前はルイ! 今大魔王デスジードを倒す為に戦っているが、力が足りない! みんなの力を分けてくれ! 分けてくれる人は手を上にかざしてくれ!」
大輝石の力で声が届き、更に分けてくれた人々の願いというか、心象風景もこちらにも流れてきた。
想いと共に大きな力が流れてくるのを感じる。
ひときわ大きな力を感じる。これは勇者パーティーの力か!
アイスとゴライアのやつ、ぐったりしながら嬉しそうな顔をしやがって!
カサンドラ、シュドウ、アルファ、ダズー達からもきた。浮遊大陸の知り合いや、カエルの勇者ケオルグや、ブーグリ達、ドワーフ達、旧ジョアーク帝国の竜騎士ケイン達からも次々に力が集まってくる!
だが、邪神と融合した狗神デスジードを一撃で倒すには、まだまだエネルギーが足りないか!?
「大輝石よ、私にも話をさせてください」
エリーが俺に変わり、世界中に話しかけた。
「私は吟遊詩人のエリー。聖女エリーとも呼ばれています。大魔王を滅ぼすために、どうか皆さんの力を貸してください!」
途端に爆発的に力が流れ込んできた!!
エリー人気、凄すぎないか!?
エネルギーは十分にたまったか!?
だが、集まりすぎたエネルギーに融合する神気が足りていない!
「くっ! 神気が足りない」
「みんな! 私の分もなんとかお願いね!」
「「「おう!」」」
焦る俺の声にエリーが反応し、俺のそばに寄ってきた。
「ルイちゃん、今から私の神気と私の力を全部ルイちゃんの身体に流し込むね。 私の力の源は歌だから、びっくりしないでね」
そういうと、エリーは俺の両頬を押さえ口付けしてきた。
甘いキスと共に、エリーの力が吹き込まれてくるのを感じる!
唇を合わせたまま歌う様なリズムで、どんどん神気が送られてくる。
長い長いキスを経て、ぐったりと俺にしなだれかかってきたエリーを受け止めてあげることもできないが、原基魂は超巨大になり神々しい光を放っている。
「みんな離れてくれ!」
チョコのスキルもうまく使って、みんなが離れた狗神デスジードへ、原基魂を飛ばす!
狙い違わずデスジードに激突した原基魂は、そのエネルギーの全てを、中に閉じ込めたデスジードへと向けて大爆発した。
ズドドドドドーンンン!!!
大爆発の煙がはれて残っていたのは、全身にヒビの入った狛犬像と、まもなく消え去ろうとして、光のエフェクトになり始めた大魔王デスジードだった。
『ルイよ! 今なのじゃ! コマちゃんに首輪をつけるのじゃ!』
のじゃロリ女神か!?
コマちゃん!? 首輪など、どこにあるのかと思ったが、いつの間にか俺の手には首輪が握られている。
『早くするのじゃ! 狛犬像に首輪を付けよ! この機会を逃せば邪神は二度と倒せんぞ!』
デスジードの光のエフェクトを見ながら、俺は慌てて狛犬像の首に首輪を付けた。
禍々しい表情だった狛犬像は、穏やかな、それでいて愛嬌のある表情へと変化し、すうっと透けて消えていった。
「おい、のじゃロリぃ! まさか邪神を逃がしたわけじゃないだろうな!?」
『大丈夫なのじゃ。首輪を付けた事で、神界にて妾が二度とこの世界に来れんようにしておくのじゃ』
それならば良いのか?
デスジードの光のエフェクトも完全に消え去った。
『性転換薬』を手に入れた!
……を手に入れた! ……を手に入れた! ……を手に入れた!
大魔王を倒した後に手に入る色々な報酬が手に入れられたが、俺が真に求めるものはただ一つ!
ついに! ……ついに性転換を手に入れたぞ!
ぐったりしたエリーを抱きかかえつつ、一息に性転換薬を飲んだ。
次号エピローグです!
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