第162話 死神ローテジード (主人公視点に戻ります)
目に見えない状態で大鎌の刃を俺の首に差し込み、俺の首を刈り取らんとしていたピエロ。
デスジード城二階のフロアボス、ヴァンパイアロードは自ら死神ローテジードを名乗り、全員殺すと宣言してきた。
ヴァンパイアロードは漢女宮の水闘士スイントマルコのように、対戦相手が増えるとステータス補正が入る厄介な相手だ。
性格が悪い搦手を用いた手段でくるので、俺が一対一で相手をするのが最適だろう。
「みんな、ここは俺に任せて先に行け!」
死神ローテジードが仲間達の後を追おうとするが、俺が張り付いて行かせはしない。
面倒になるので、透明化する隙も与えてなるものか!
激しく打ち合い、牽制し合う俺とローテジード!
「やれやれ、しょうがないネェ、彼らの事はあきらめて君の相手に専念するか」
ん!? 気配が増えた!?
ローテジードの影に向かって剛情波を叩き込む!
「あら? 惜しかったネェ」
俺の相手に専念すると言いつつ、力のない囮の分体を残して、本体は仲間達を追おうとしたな!
「あきらめろ、仲間は追わせない」
「ふふふ、それじゃあ一対一で正々堂々と君を殺してから向かおうか。ちゃ〜んと全員あの世に案内してあげるヨ」
牽制は終わり、お互いに相手を滅ぼすための攻撃を繰り出し合う!
「死神の大鎌!」
即死効果のあるローテジードの大鎌を払いのけつつ放った、俺の八連撃パンチは大鎌の柄を用いてうまく防がれてしまった。
ドガガガッ!
俺の予想よりもローテジードは肉弾戦が出来るようだ。
「はい、終わりだ〜ネェ。気づいていないようだけど、君はすでにボクの罠に捕らえられタ。もう君は死ぬヨ」
「はぁ?」
「|死神罠・地獄の4エース《デストラップ・フォーカード》」
俺が足を上げた途端、周囲と隔絶された結界に閉じ込められた!
地雷式のトラップということか!
「ふふふ、四面から放たれる四属性の極大魔法はそれぞれの威力を高め合い、通常の単独魔法ではあり得ないほどのダメージを与える。そこに入った時点で君の死は確定サ」
おぼろげなローテジードの声が聞こえてくる。
俺は極大魔法に焼かれ、凍らされ、痺れ、切り刻まれてしまった!
ほんのちょっぴりな。
「今何かしたか?」
結界が解けた後に平然と立つ俺の姿をみて、死神ローテジードは驚愕しているようだ。仮面で表情は見えないから多分だけど。
「ば、馬鹿な!? 骨も残さず消え去るはずがいったいどうやって逃れたのかネ」
単純な魔法防御力の高さのおかげだけど、手の内は教えないよ!
明らかに焦っている死神ローテジードだが、俺じゃなくてもゲーム終盤にもなれば、属性吸収装備や無効装備を一つずつ位装備しとけば良いだけだぞ。ありふれた攻略法だけどな。
再び死神ローテジードに接近しようとすると、またもや罠が作動した!
「ふふふ、残念、罠はすでにたくさん仕込んであるんだヨ死神罠・剣山地獄!」
またもや結界にとらわれてしまい、四方八方から放たれる剣の刃に全身を貫かれて……
「ふふふ、その刃は防御無視の地獄の剣ダ」
神チャ衣ナドレスを装備している俺は、全身を貫かれるはずもなく平然と立つ。
「今何かしたか?」
再びドヤ顔で言い放つ俺。
「ば、馬鹿な!? 防御などできようはずも無いのにいったいどうやって逃れたのかネ!?」
罠の発動中に仲間達を追われるかと心配したが、死神ローテジードはその場から動いていない。どうやら罠にマナを供給しなければいけないようだな。
強力な罠にするための弊害か。
それならば都合が良い。
いくつ罠を仕掛けたのか知らないが、むしろ積極的に罠にかかって、お前の膨大なMPをとことん消費させてやるぜ。
「ふふふ………………ば、馬鹿な」
ドヤ顔の俺。
「ふふふ………………ば、馬鹿な」
ドヤ顔の俺。
……いったいいくつ罠を仕掛けているんだよ!
どれもこれも、他のメンバーだと死んでしまうかもしれない凶悪な罠ばかりだ!
あえて罠にかかって、なんて強がって言ったけど、ぜんっぜん、罠を見破れないよ!
こいつ罠を張る才能だけは本当にあるんだな!
自称大盗賊のミーニャなら見破れるのか!?
あれ!?
罠から生還したと思ったらローテジードがいない!?
でもたった今まで奴も動けなかったはずだから、透明化か!?
気配さえ遮断しているようで、ローテジードをとらえきれない。まずいな、この状態で仲間達を追われてしまっては……不意打ちを受けて死人が出るかもしれない……
ここは、あれを使うべきだな。
「邪夢賦流・独者闘憑龍玉の型!」
目を閉じて気を探る。龍玉の型の基本のキだ。ほんの少しでも気を発していれば今の俺にはわかる。
見付けたぞ!
すでに風の塔の方へ向かっているな!
すかさず全力疾走で死神ローテジードを追う!
そこだ!
「おらぁ!」
「ぐはぁ!」
おっ、俺がわかっていないと思って油断したか?
もろに殴られてくれたな。透明化も解除された。
「なぜ、わかったのデス!?」
ものすごいスピードで、俺に殴られてえぐり取られた右肩が再生している。
さすがはヴァンパイアロードといったところか。
師ウォーラより受け継いだ、ヴァンパイア特効のこの技でトドメだ!
「邪夢賦流・独者闘憑常上の型! 真紅の波動の疾走運転!」
オーラパンチから派生した、俺のヴァンパイア特効パンチが死神ローテジードの胸にめり込む!
「オラオラオラオラぁ!」
「ぎぃゃあー!!」
弱点となる攻撃をうけたローテジードの身体は消滅していき、ピエロ帽子がポトリと落ちた。
帽子を一目みた俺はグシャリと踏みつける。
「な、なぜわかった……」
「光のエフェクトが出てないし、バレバレなんだよ!」
今度こそ光のエフェクトを発して死神ローテジードは消えていった。
罠に何度もとらわれて、随分時間が過ぎてしまった。
塔の方はどうなっただろうか。はやくみんなと合流しなくては。




