第152話 デスジード城
浮遊大陸ズイーブドのナイヤチ村で、シロー爺さんにエリーとミーニャの防具をアダマンタイト繊維で強化してもらった。
その後は、ユーリアさんのお墓参りをしてウォーラとの事を伝え、ホークト流を修めた事を報告した。
その日の晩は、シロー爺さんとみんなで食事をし、一晩泊めてもらった。翌朝になり、いつもの朝の儀式を念入りに行う。次の朝は敵の本丸で迎えるだろうから朝のトレーニングをする余裕は無いだろう。
朝食をゆっくりとって、シロー爺さんに激励をしてもらってからナイヤチ村を出発した。
「無事に……無事に帰って来るんじゃぞ……」
「はい! 今度帰って来た時にはきっとシローお爺さんが驚くような変化をして戻って来ますからね!」
ナイヤチ村は俺がこの世界で一番最初に関わりをもった所だから、なんだか感慨深いな。
必ず戻ってきて、俺の性別の変化にびっくりしてもらおう。
カサンドラ、シュドウ、アルファ、ダズーを含めた飛空艇ミューズ号とは、ここでいったんお別れだ。ここから先は激戦地となる為、真の戦闘員である俺、エリー、イーリアス、シーラ、ミーニャ、チョコ、ザックだけで向かう。
不死鳥モードのザックの背に乗り、きっちり南西の方角へと向かった。
土の大輝石が教えてくれた、風水火土、全ての大輝石の交点にある絶海の孤島。そこにデスジード城はある。
ザックに乗って飛ぶこと数時間、ついに見る者を拒絶し、巨大な城郭と勇壮な四つの塔をもつデスジード城にたどり着く事ができた。
空には半透明の赤黒いバリアーのようなものが張り巡らせてあり、侵入できそうもなかった。
正門前の広場に着地すると、中から禍々しいオーラが漂っているのを感じた。
いよいよ最終決戦だ!
「エリー、イーリアス、シーラ、ミーニャ、チョコ、ザック、みんなここまで俺に付いてきてくれてありがとう。大魔王デスジードを倒すまでいよいよ後一歩だ! ここから先は一人一人の強さが試される。最後まで集中して大魔王を倒し、全員で無事に帰ろう!」
「「「「おー!」」」」
「ぷぇ〜!」
「ぴぇ〜!」
「聖女エリーよ、大輝石の力をもってデスジード城の閉ざされし扉を開いてくれ」
「もう! ルイちゃんったらこんな時までふざけてそんな言い方して!」
「だって、こう言った方が吟遊詩人としてエリーが歌う時に、物語が盛り上がるでしょ」
『神威の胸当て』を装備したエリーが、ちょっとむくれた顔をして大扉に手をかざし、デスジード城正門の解錠の呪文を唱える。
「開破可門!」
神威の胸当てから虹色の光が大扉に照射され、ゴゴゴゴゴと開いていった。
いよいよここまで来たか。俺が失ったモノを取り戻すまで後少し!
気合いを入れてラストスパートだ!!
「突入だ!」
俺を先頭に陣形を組んで門をくぐり、城内になだれ込む!
身構えて突入したにもかかわらず、意外な事に門を越えても敵は一体も襲いかかってこなかった。
不審に思いつつも、前庭を駆け抜けて城の内部へとそのまま進む!
かって知ったる他人の家。デスジード城のマップはバッチリ頭に入っているぜ!
迷路のような広大なデスジード城の一階をどんどん攻略していく。もちろん、宝箱の回収率100%を目指す俺とミーニャにかかれば、どんな罠も隠し部屋もお茶の子さいさいだ!
しっかりとお宝はゲットしていくぜ!
隠された宝物庫のような所で、本来のゲームファンサ5であれば開けると戦闘が始まるトラップ宝箱を開いたが、そこでも戦闘は起きなかった。
けっこう面倒な奴が守っていたはずなんだけどな。猫忍者ミーニャの最強装備『闇の衣』と、アクセサリーをコピーできる『贋作の宝珠』を手に入れた!
『贋作の宝珠』で素早さが二倍になる『星降る指輪』をコピーして俺が装備する。これで全員が素早さ超アップの装備をしていることになる。ゲームよりも『星降る指輪』の数が多いので儲かったな。
『闇の衣』は防御力も忍者が装備できる中で一番高く、更に回避率に大きな補正が入る。
お宝だけをいただいて、風のように去る。
すでに一階の中ほどまで進んでいる。ここまで一度も戦闘になっていないと、さすがにあやしいと誰でも気付くが、俺達には前に進む以外の選択肢はない。
彫刻の入った繊細な造りの柱が並ぶ部屋と回廊をいくつも駆け抜けて行く。何かの罠があろうと、力技でぶち破って行かせてもらうぜ!
ミーニャのスキル『ビーダッシュ』の効果に包まれながら、爆速でデスジード城の奥へ奥へと突き進む。
ついにゲームであればフロアボス『ゴーストキング』がいるはずの、一階の最奥の間の前までたどり着いた。
ゴーストキングはマクドジードとして、すでに討伐しているから、中も無人か?
パーティーのみんなと突入前の準備と休息をしっかりとって、バーン! っと扉を勢いよく開き、中へと進んだ。
中央に誰かいる!
あいつは……ジョアーク帝国皇帝コムゲーン!
『ファファファ、我が城はいかがだったかな、侵入者の諸君。いや、光の戦士よ』
喋っているのは……コムゲーンではない!?
コムゲーンを通り越してコムゲーンの上から声が聞こえるような不思議な感覚だ。
『我は大魔王デスジードなり。我のもてなしは気に入ってもらえたかな?』
「もてなしって言うけど、人はおろかモンスターでさえ一体も相手をしてもらえなかったけどな。手抜きのもてなしじゃあ、喜べないぞ」
『ファファファ、そのとおりよな。すまぬ、許せ。それでは今この時より盛大にもてなさせてもらおうか』
部屋中に魔法陣がきらめき、次々に強力なモンスター達が出現した。更に俺達がやって来た扉の外からもモンスターがなだれ込んでくる!
こういう罠か!
戦力を集中し、俺たちを休むまもなく攻撃する魂胆か!?
『ファファファ、城の一階を埋め尽くす程のモンスター達であるが、もてなしにはまだまだ足りぬであろう? だが許せよ、ここにはそれだけしか用意してやれぬ。今世界中でモンスター達を暴れさせておるからな』
デスジードがそう言ったかと思うと、スクリーンに流れる映画のように、天井に世界各地の様子が次々と映し出されていった。




