第146話 シュウラの国のウォーラ
飛空艇ミューズ号はアラーユ大陸を西へ進む。
ここのところ、シュドウとダズーがとても仲が良い。潜水艇ロシナンテ号の換装をする時に共同で作業をして以来、ダズーはシュドウの事を親方と呼んで慕っている。
シュドウもダズーの事を気に入って、モロダジャナ王国の飛空艇技師に勧誘しているらしい。ダズーは12歳の孤児だからなぁ。元ジョアーク帝国に身寄りがないなら、シュドウについて行くのも良いかもしれないね。
アルファは平和になったらどうするのかな? ダズーと一緒に行くのか?……ラミューダ島には戻らないんだろうな、他に人が住んでいないしな。
アルファが必須の土の大輝石の解放が終わった今となっては、危険な大魔王討伐の旅の戦闘にこれ以上巻き込むわけにはいかない。
封印されて時を越えてきたアルファは、生まれた時代も違うし俺達との関わりがなくなったら、ますます孤独になっちゃうよね。ダズーと一緒にシュドウのところに行きそうな気配があるけど、行き場がなかったら俺達の所に来てもらうか。
アラーユ大陸の西の果てにある、シュウラの国へとやって来た。
まずはウォーラがいる山の麓で情報収集して、ミニゲーム的要素のクエストを引き出さなければならない。
この国の平民は伝統的にモヒカン刈りをしている為、シュウラの国の外の民との見分けが一瞬でつくのでわかりやすい。
「ひゃっはー! む、お前たち見ない顔だな、どこから来た!?」
この国の民の挨拶は「ひゃっはー!」だ。
ドワーフの「ラリホー!」みたいだよね。
「ひゃっはー! 『拳の王』と名高いウォーラ様に会いに来ました」
「どこの馬の骨ともしれない相手を、俺達の恩人であるウォーラ様に会わせるわけにはいかない! ウォーラ様に会いたければ俺達を倒して実力をしめして行くんだな」
挨拶をして俺がそう言うと、親切なシュウラの民が教えてくれた。彼らはいかつい見た目とは裏腹に親切なのだ。クエスト発生だ。
「ただし、漢なら拳でだぞ! スキルなどを使っては真の漢になれんからな!」
と、全ての武装を解除してから、『たたかう』コマンドのみで山頂にいるウォーラまで、百人組手をして突き進むのがここのクエストだ。
「あべし!」
「ひでぶ!」
「ぶべら!」
モヒカン達はぶっちゃけ弱いので、ステータスを上げまくった俺達からすると、エリーでさえワンパンで倒していける。
ただの作業です。
倒すといっても気絶させるだけだから、大丈夫。
お互いに納得のうえなので遺恨は残らない。
「うわらば!」
ついに最後の百人目をぶちのめすと、ちょうど山頂のウォーラの家にたどり着いた。
モヒカン君達、案内ご苦労。
「こんにちは! ウォーラさんいますか?」
呼び鈴などないので大声で呼びかけると、中から気迫あふれる身体つきのおっさんがあらわれた。
ウォーラだ。とてもシロー爺さんより年上だとは思えない見た目をしている。気でみなぎっているため若々しいのだろうか?
「誰だ? ユーリア! まさか生きて再びお前と会える日が来るとは! しかもその見た目はどうした? 一切年をとっていないように見えるぞ!?」
「俺はユーリアさんではありません。似ているらしいですが別人です。ユーリアさんからホークト流を受け継ぎましたが、最後の究極奥義の伝承が終わる前にお別れとなってしまいました。ユーリアさんにウォーラさんを訪ねるようにと言われてやって来ました」
伝承者の証であるホークトナックルを見せつつそう説明した。
「そうか……ユーリアはすでに逝ったか。ユーリアは天に愛された漢であった。良かろう、それでは俺が最後の究極奥義をウヌの身体に刻んでやろう! ユーリアとの伝承者争いに敗れて以降、自ら封じていたホークト流を今こそ解放する時!」
気合いを入れ直したウォーラの筋肉がさらにパンプアップした!
着ていた服が破れ、上半身が裸となったウォーラ。
「例えウヌが死ぬ事になったとしても手加減などせぬぞ! ホークト流を受け継いだというならば、見事我が拳を制してみよ!」
ウォーラの激とともに始まった究極奥義伝承の闘い!
巨躯でありながら流れるような身体の運用で、次々に凄まじいホークト流の技の数々を繰り出してくるウォーラ!
強い!
ダンダダン!
ドガガガ!
これがステータスだけでなく、技も極めた漢の闘いか!
激しい技の応酬が続く。
「ふん!」
拳の一撃で大きく俺を吹き飛ばしたウォーラが言う。
「良いだろう、究極奥義を使う資格がウヌにはあるとみえる。名はなんという?」
認めてもらえたのか?
「ルイ」
「ルイよ、今すぐHPを全快にしろ。そうでなければ死ぬぞ」
いよいよ究極奥義か!
死にたくないので、言われた通りにチャクラでHPを全快にさせる。
「いくぞ! ホークト流究極奥義『無双転性』!」
きた!
俺の体の周囲をぐるぐる回りながら、全ての急所にあますところなく連打を突き入れてくる!
ズドドドド!
「う!」
9900のダメージをくらい、がくりとその場に膝をついた俺にウォーラが言う。
「良くぞ我が拳を受けきった。覚えたか?」
「ああ、覚えたぞ!」
スキルに『無双転性』が加わったのを感じる。元から俺の中にあったものを、ようやく感じ取れたといったところか。
防御無視で『使用者のレベル✕100の固定ダメージ』を相手に与えるホークト流の究極奥義だ。
「ふっ、よくやった。よし、ならばホークト流を封じた後に俺が新たに極めた『邪夢賦』流の最終奥義も伝えてやろう」
そう言ってウォーラは肩幅に足を開き両手を天に向けて掲げた。
俺はあわててダメージを全回復させておく。
「ゆくぞ!」




