閑話 勇者の帰還・・・その3
勇者パーティーは一時期の停滞が嘘のように難関ダンジョンを次々に攻略していく。
現在のところ、世界中に散らばる召喚獣集めは順調に進んでいる。
火の国では伝説の武人の星霊体である『武人ゴーディーン』を味方に加え召喚獣にすることに成功した。
ゴーディーンを召喚した際のスキル『斬鉄剣』はかなり有用だった。敵全体をばったばったとぶった切ってくれるのでやみつきになる爽快感だった。
その分倒すのには苦労したが、ルイが教えてくれた通りに透明化させてから即死魔法をかけると、三回目のチャレンジにしてなんとか倒せたので、ほっとしている。
『蜃気楼の海』ダンジョンでは、水竜『シュルドーラ』を倒して認められたので、仲間にして召喚獣になってもらった。『大海嘯』はかなり強力なスキルで使い勝手も良い。
『リトルガーデン』では勇者アイスは自分が小さい事を思い知った。
物理的に。
『リトルガーデン』に出てくるのは大型の『恐竜』モンスター達だ。ルイによれば恐竜は竜であって竜にあらず。
だが、その凶暴さはかつて倒した『グレン山のはぐれ竜』となんら遜色ない。竜と恐竜の違いって何? と思えるほど一匹一匹が手強かった。
そんな中で、ひたすら狩りをした。
狙いは『スーパーザウルス』のレアドロップ品である『白金の髪飾り』だ。
しかし、これが苦労して強敵スーパーザウルスを倒しても中々ドロップしてくれない上に、スーパーザウルスの出現率が低いのだ。
あまりの『白金の髪飾り』の出なさに、ルイに騙されているんじゃないかとうっすらと思いながらも、何日も『リトルガーデン』にこもりきりだった。
ようやく『白金の髪飾り』を手に入れた時には、勇者アイス、ルーンナイトゴライア、賢者ローザ、青魔道士ステラと、パーティー全員嬉しさで抱き合って大喜びした。
リトルガーデンでの苦行を乗り越えた勇者パーティーは、転職してレベルダウンしていたゴライアとローザも十分に育ち、全員が高レベルとなった。
勇者 ∶アイス ∶レベル74→94
ルーンナイト∶ゴライア∶レベル41→81
賢者 ∶ローザ ∶レベル41→81
青魔道士 ∶ステラ ∶レベル81→98
ルイに教わった勇者パーティーの召喚獣集めの旅は、いよいよ大詰めとなってきている。
勇者アイスは、勇者パーティーの故郷である浮遊大陸ズイーブドの中央高山地帯へとやって来た。
かつて登った竜伝山と、ワイバーンの巣窟といわれるアララット山との中間にある、浮遊大陸で一番高い山。その山頂に聖竜王ファーヴニルと並び称される伝説の竜がいた。
その名は『至高竜バハヌート』
バハヌートとの戦いは熾烈なものとなったが、賢者ローザの大ピンチに、ついに勇者アイスは『勇者の聖気』を己の意思で使いこなす事に成功した。
弱っていたとはいえ、聖竜王ファーヴニルのしっぽを一太刀で切り落とすほどの、あの『超人魔王』に匹敵する『スーパーアイス人』に覚醒したのだ。
覚醒した勇者アイスは、逆手に持った聖剣デュランダルで右下から左上へと勇者最強の一撃で逆袈裟斬りに斬り上げた!
山をも断つ勇者の大技『勇者の最強技』の一撃は凄まじく、ついに至高竜バハヌートに認めてもらい召喚獣として味方になってもらう事ができた。
ステラにお仕置きしてもらったあれ以来、勇者アイスは毎日秘密特訓をこなすようになった。
そのおかげもあって勇者アイスの実力はメキメキと上がっていったのだろう。
しかし勇者アイスは、もはや青魔道士ステラに黙って鞭打たれている男ではない。三回目の転職を乗り越え、更にレベルをカンストさせた全世界屈指の猛者であるステラにだって、言う時は言うのだ。
「そろそろヤラせてください」
「いやよ! 勇者君は私のタイプじゃないわ!」
「いや、違うし! ステラじゃなくて、ローザとだよ! もう俺は『勇者の聖気』を操れるようになったんだ! 禁欲生活はもう良いだろ?」
「はぁ〜、勇者君それ本気で言ってるの? もしそれで『勇者の聖気』の練り上げが、また一からやり直しだったらどうするつもりなの? 魔王軍との戦いが終わるまでは我慢しなさい」
「そ、そんな〜!」
しっかりとステラに調教されて、ステラの言葉に逆らえなくなってしまった勇者アイス。
ちょっぱやで魔王軍の奴らをぶちのめしてやるぜ! と改めて心に誓う勇者アイス。
彼が解放される魔王軍との戦いが終わる日とはいつなのか?
そんな事がありつつも、次の目的地に向けて飛空艇グローリー号に乗って南に進んでいると、はるか前方から大型の赤い飛行モンスターが近づいてきている。
「総員警戒! 空中戦用意!」
明日からは最終章の投稿となります。
最終章からは一日一回の投稿です。
現在カクヨム様にて最終章を先行して投稿しております。
https://kakuyomu.jp/works/16818093077952549761
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