第117話 火の鳥を求めて
シーラが召喚した聖竜王ファーヴニルに、小輝石の事をたずねる。
「ファーヴニル、この小輝石はなに?」
『それはザックの魂であり、肉体の情報が詰まった小輝石だ。ザックが復活できる方法も一つだけある』
「ザックは復活出来るのか!?」
『光と化し、完全に消え去っだ状態では不可能だが、小輝石があれば可能だ。この世界に一頭だけいる不死鳥。その不死鳥の復活の炎を浴びれば、ザックは蘇るであろう』
復活の炎!
「不死鳥にはどこに行けば会えるんだ!?」
『不死鳥は、火の鳥とも神鳥とも呼ばれている。彼の者も我と同じく理から外れている存在。ゆえに我が居処を教えるわけにはいかぬ。だがルイよお主ならば既に知っているのではないか?』
火の鳥、神鳥と同じ存在なのか!?
それならば知っている!
王孵を七つ集めて、飛空艇を超えた存在として、俺が最後の足代わりにしようと思っていたやつだ!
「知っている! 神鳥の居場所なら知っているぞ!」
『うむ、ならば良い。ザックの小輝石の輝きは時間と共に薄れていくだろう。出来るだけ急ぐ事だ』
!?
「輝きが消えたらどうなるんだ!?」
『今度こそ真の死を迎える。しかも大いなるマナへは還る事が出来ぬ。もしも時間切れで復活が間に合わなければ、完全に消える前に他のチョコザに継承させると良かろう。別なチョコザではあるが、ザックの記憶も残っているはずだ』
それは……なんか嫌だな。
でも……もしもの時は心に留めておこう。
『ザックは大輝石の加護を三つも得ていたので、そうそう消えはしないだろうがとにかく急ぐ事だな。星霊界からのぞき見るに、不死鳥の方でもどうやら異変が起こっている』
「なんだと!?」
『大輝石の加護を得ているお前たち光の戦士も、同様に復活と継承が可能だ。覚えておくと良かろう』
そう言い残すと、聖竜王ファーヴニルは消えていった。
大輝石の加護をもつ光の戦士だからこそ『復活と継承』が可能なのか……この世界に来て初めてわかったことだな……だが、それに甘えて、もうこんな事がないようにしなければ……。
『アイレスランド』
そこが神鳥=不死鳥の卵が眠る島だ。位置としては今いるカッファリ大陸から南に行ったところにある。
復活にはどうせ七つ全ての王孵を集めないと意味がないので、いつ行っても良かったのだが、ザックの事があるから居ても立っても居られない。ファーヴニルが不穏な事を言っていたしな。
何か異変があったのなら、まずは一度この目で確かめに行かないと。
飛空艇ミューズ号で空を進めば、一日とかからずにアイレスランドに到着した。ここも雪だるま君がいたスノーランドと同じく、極寒の氷雪地帯だ。防寒具に身を包み、地上へ降りると『アイレスランドの祠』へと入った。
「「とまりなさい」」
「「ここはしんせいなるち」」
「「みだりにたちいってはなりません」」
神鳥の卵を守護する双子の精霊、『セイ』と『レイ』に止められたので、ゲームでのセリフをなぞらえて慎重に話しかけた。
「始めまして。風、水、火の大輝石に導かれてやってきました、ルイです。今、土の大輝石が危機に直面しています。土の大輝石を救うために、神鳥と精霊の力をお貸しください」
「「たしかにかごをかんじます」」
「「おはいりなさい」」
お招きされたので、大きな祠の中へと入る。
祠の中は、中心に台座があり、さらに一段盛りあがった所に大きな卵があった。ゲーム通りなら、あれが神鳥の卵だろう。中央の台座からは七つの橋で繋がった小さな台座があり、そこに王孵を納めるはずだ。
「私達は聖竜王ファーヴニルから、神鳥の卵に何か異変が起こっていると聞かされました。何かお困りのことはありませんか?」
「「世界の生死を司る神鳥の卵が、地脈を通じて何者かに攻撃されました。現在地脈からは、隔離していますが、攻撃により卵の中の神鳥の魂を傷付けられました。一刻も早く神鳥を復活させなければ、この世界が大変なことになってしまいます」」
うおっ!
急に流暢にしゃべりだしたな!? びっくりしたぁ!
魂を傷付けられているとはただ事ではないな。
ゲームとは違う出来事が起こっている。
「どうやって復活させるのですか?」
「「世界に散らばる七つの王孵を集めるのです。王孵は力の象徴でもあります。食べれば人の身を超えた力を得る事ができますが、王孵を食して良いのは卵から産まれた神鳥のみです」」
そうなのだ。ゲームクリアに絶対に必要な重要アイテムなのに王孵は消費アイテムなのだ。
赤王孵を食べれば力ステータスが999に、黃王孵を食べれば運ステータスが999へと、対応したステータス値がカンストするのだ。
そして消費した王孵は二度と手に入らない。……つまり、神鳥は卵から孵らず、神鳥に乗ってしか行けない所に土の大輝石がある為、ゲームクリアが不可能となる。ファンサ5の制作陣の悪意が感じられる、とんでもない地雷なのだ。
アイレスランドでこの話を聞く前に、先に王孵を手に入れて、一個でもうっかり使用してしまった者は、ステータス値カンストという全能感をかみしめた後に絶望する。
クリア不可能……始めからやり直し……。
ジ・エンド。
もっとも、クリア度外視で全ての王孵を使用して圧倒的強者プレイを楽しむプレイヤーも続出したのだが。
俺達は当然そんな事をやる訳にはいかない。
ここはゲームではなく現実世界なのだから。
土の大輝石が闇堕ちして世界が滅びてしまうし、何よりザックが……死んだままになってしまう。
これまでに手に入れた赤王孵、 橙王孵、黃王孵、緑王孵をそれぞれ対応する台座へと据え置いていく。
しばらくすると神鳥の卵に赤、橙、黄、緑の四つの色が柔らかく降り注ぎ始めた。とてもあたたかくて心地良い光だ。
ずっとこの光を浴びていたい衝動を抑えて、残り三色の王孵を求めて俺達は再び旅立った。
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「ザックは? ルイ達はこの後一体どうなるのっ……!?」
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