第115話 月光伝説
「「アルティメットユナイトスキル、月化天罰発動!」」
つ〜き〜のひ〜かりに〜♪
エリーの歌う、沈黙、鎮静効果のある、つきの歌のメロディーにのって、更に俺が叫ぶ!
「モーンクリスタルパゥワーメイクアップ!」
シャラララ〜ン♪
月の女神が授けたという伝説をもつ『つきの歌』が、古城の窓から月光を呼び寄せ俺におりてくる!
まとめてお団子にしていた俺の漆黒の髪が、シニョンからシュルルルと伸びてツインテールになっていき、月光に染め上げられて黄金髪になった!
チャイナドレスまでモード変更している!?
体をくるくると回転していき、破邪の剣に捕らわれたミーニャジードの額にスーパーモンクスキル、残悔独歩拳を打つつもりで、指をピストルの形にして突き付ける!
「星羅夢兎拳!」
バーン!
「「ギニャー!!」」
ミーニャがその場で二、三歩たたらを踏み、その背中から白いモヤのようなものが吹き飛んだ!
「ぐあぁぁぁぁ!」
魂に積み重ねたカルマ値を月の女神によって裁かれる、このアルティメットユナイトスキル星羅夢兎拳は、明確に魂を区分して攻撃する事ができる。
つまり、どれだけ完璧にマクドジードがミーニャの身体を操り、ミーニャとマクドジードが一体化してミーニャジードになっていたとしても、魂への働きかけの前では無力なのだ。
アルティメットユナイトスキルの効果が終わり、俺の姿が一瞬で元に戻った。いつも思うが、物理法則をガン無視して成り立っている『スキル』って凄いな。そのお陰で助かったが。
「ミーニャ大丈夫か?」
「大丈夫なはずないにゃ! おでこがめっちゃ痛いにゃ! いつかボスにも仕返ししてやりますにゃ!」
『ゴーストキング』マクドジードの乗っ取り操作から助けてやったというのに、ひどい言われようだ。
「ん、元気いっぱいで大丈夫のようだな。シーラ、回復してあげて」
「うん。ヒールザム!」
温かい回復の光が、人体の限界を越えた動きを強制させられていた、ミーニャの身体を癒していく。口では強がっていても、ミーニャの疲労は大きいようだ。ゼェゼェと肩で息をしている。
「チャクラ!」
俺も生体エネルギーを活性化させるスキル、チャクラでミーニャの回復の後押しをする。
「ボス、シーラありがとにゃ」
「ミーニャ、助けてくれてありがとう。ごめんね、私の身代わりにあんな事になってしまうなんて……」
「気にすることないにゃ、エリー。猫獣人は勘がするどいのが自慢なのにゃ。みんなそれぞれ特徴があるんだから、それぞれがやれる事をやればいいにゃ」
「ミーニャ〜! よくも私の大事な鎧を盗んでくれたなぁ!」
「あれは操られていたから仕方ないにゃ!」
「それにしては、ずいぶんと楽しそうだったじゃないか?」
「にゃはははは。ほら、装備は一式全部返すから怒っちゃだめにゃよ?」
軽口を叩きながらも、俺も、仲間達も、決して白いモヤから目をそらさない。討伐を示す、光のエフェクトはまだ起こっていないのだ。
「お、おのれ〜! 小娘共が調子に乗りおって〜!」
やはりまだ生きていたか!
「確殺指弾!」
やばい!
俺は、仲間達の前に躍り出て『ゴーストキング』マクドジードの飛ばした指先を全て受け払い弾き飛ばす。名前のとおり、即死耐性・無効をもっていないと即死してしまう。
イーリアスの身体が平氏装備で護られていない今は、完全即死無効なのは俺だけだ!
仲間たちは殺らせない!
「今のゴーストキングの攻撃は即死攻撃だ! 絶対にくらわないでくれ! 破邪の剣! ついて来てくれ!」
『よっしゃ!』
そう言いのこすと、一人突貫して間合いを詰める!
一人で全員を守るには接近して、確殺指弾の出だしを抑えるに限る!
俺の接近を許すまいと、マクドジードは爆炎に極氷、更に轟雷と凄まじい威力の魔法を連打してくる。
だが『カチモン』の俺にはたいして効きはしない!
せいぜい目隠しになる程度だ!
逆に俺達にとっては確殺指弾の連打が一番怖いが、飛ばした指先を再充填するには少し時間がかかるようだ。これはゲームと同じだな。
よし!
『ゴーストキング』マクドジードに張り付いたぞ!
「おのれおのれおのれ〜! 死ね! デスタッチ!」
残念だったな! 即死を含むあらゆる状態異常を触れた相手に叩き込む、最も厄介なゴーストキングの攻撃だが、俺にデスタッチは効かないのは大聖堂地下ダンジョンのリッチで実証済だ!
突進した勢いそのままに、オーラパンチの四連撃を繰り出す!
グシャ! ドカッ! バキッ! ゴスっ!
「ぐはぁ! い、痛い! おのれ〜! 霊体の我にダメージを与えるとは!」
よし!
やはり、オーラパンチはよく効く!
「はっつぁん、ナックルモードだ!」
『よっしゃ! 形状変化ナックルモード!』
ナックルに変化した破邪の剣を左手に握り込む。
『ひょ〜! 良〜い感じや!』
「そのまま破邪モードだ!」
『おうよ! しっかりと握っとくんやで!』
ナックルに変化したはっつぁんの聖魔石が、赤くより濃く紅く輝いていく!
そこに更に俺のオーラパンチのエネルギーを練り込んでいくイメージで……
「お、おのれ! 小娘が! サンダザム!」
至近距離で放たれた極大雷魔法サンダザムが俺に降り注ぐ!
効かんなぁ!
「なぜ! なぜ何も起きん! なぜ我の魔法が効かん! 死なん!」
「オラオラオラオラ!!」
ズガガガガ!
「ぶべら!!」
うおおお! ノってきたぜ!
紅く輝く左拳に全てを乗せて……
「閃火裂紅拳!」
ドバン!
「ぐふ!」
マクドジードの霊体、ゴーストの核のような物を撃ち抜いた感触があった!
スキルじゃないんで、技名は雰囲気だけだがな!
「ぐはぁ! あり得ん! かくなる上は我が身を捨て去り、呪物として呪い殺してくれようぞ! 『絶句死弾丸連!』」
させるか!
ドババン!
くっ! 間に合わなかった! 撃たれてしまった!
だが避けたぞ!
「くっくっくっ! 避けたな! せめてシーラは共にあの世へ連れて行かせてもらうぞ! ファファファ」
カシャーン!
しまっ!?
マクドジードは光るエフェクトと共に消え去ったが、俺が避けたことであさっての方角に飛んで行ったかに見えた『絶句死弾丸連』は弧を描いてシーラの方に飛んで行く!
まずい!
ただでさえ半透明で見えにくいのに、撃った時に俺の身体で隠され、マクドジード消滅時の光るエフェクトでさらに隠されて、おそらく仲間たちは『絶句死弾丸連』に気付いていない!
俺はもう間に合わない!
「シーラ!!」
呼びかける俺の声もむなしく、凶弾がシーラに吸い寄せられているかのように突き進んでいく!
ドパパパン!
『絶句死弾丸連』がシーラにめり込んだかと思われたその瞬間! 黒い体がシーラに覆い被さった!
「・・・・・・!」




