第114話 操影のマクドジード
「ファファファ、我が名は『操影』のマクドジード。またの名は『ゴーストキング』マクドジードである。我が友、死霊魔王ゴルゴンダの刻みし残り香を追って、ようやく追いついたぞ! 貴様らあちこちと移動し過ぎだ!」
ミーニャの口から出てきたのは、ミーニャが口が裂けても言わないようなセリフだった。『にゃ』じゃないし。
ミーニャの表情も、普段の明るい性格がにじみ出たにこにこ顔から、性悪な顔つきへと変化している! 悪い事するぞっ、て顔に書いてあるかのようなふてぶてしい泥棒猫の顔だ。
いや、まて。
『ゴーストキング』といえば、ゲーム『ファンサ5』では、ラストダンジョンである広大なデスジード城のエリアボスのはずだ。わざわざ自分から出撃してきたのか!?
「ファファニャファファナァナぁ! む、こやつめ、まだわずかながら意識が残っておるのか。我の高笑いを遮るとは小癪なやつよ。だが死影衆一の隠密性能をもつ我の奇襲を受けて、乗っ取り操作から逃れたものはおらん! せいぜいあがいてみよ!」
乗っ取りだと!?
ゴーストとしての特性を、こういう形で使ってくるとは!?
「ファファなぁなぁ! うむ、全て把握したぞ! 火遁の術!」
ミーニャの身体を乗っ取ったゴーストキング、マクドジードが……えーい長い! ミーニャジードで良いや! ミーニャジードが放ったスキル『なげる』による火遁の術は、ミーニャが普段放つ忍術の炎の倍の熱量があった。
忍術は魔法ダメージと同じく、知性と精神のステータス値を参照してダメージが増減する。マクドジードはゲーム同様、魔道士系ステータスの持ち主ということで、マクドジードの分まで上乗せされているのだろう。
「まかせて!」
「ルイ! まかせろ!」
星降る指輪で素早さが二倍になっているシーラが、即座に水魔法を唱えて火遁の術と相殺し、イーリアスが素早く状況を判断して、HPを吸収する暗黒剣スキル『暗の剣』を放った!
ザシュ!
不意を突かれたミーニャジードが避けるが、切っ先がわずかにかすった! それでもスキルは発動する!
「おのれ! 貴様、様子が変わっておるがイーリアスだな!? ミスドジードが取り逃がしたと言っておったが、確かに中々の暗黒パワーの操作能力よ。だが暗黒騎士でなくなった今のお前では、暗黒パワーにも秀でる我にはたいして暗黒剣は効かぬぞ」
暗の剣ならミーニャにほとんどダメージを与えずに制圧できるかと思ったが駄目だったか。
「うむうむ、どんどん馴染んできたわい、そりゃそりゃ!」
ミーニャジードの高速連撃!
破邪の剣の効果で速いだけでなく、一撃一撃がとんでもなく重い!
ズガガガガ!
俺とイーリアスでかろうじて受け止める!
「おい、破邪の剣! お前だけでもこっちに戻って来い!」
『とんでもない力で握りしめられて、逃げられんのや!』
力までアップしているのか!?
「なんか無性に左腕が疼くわい。まずはその立派な鎧からじゃ」
!!
その厨二フレーズは!?
ミーニャジードが、一瞬にしてイーリアスと交錯したと思った瞬間、イーリアスの平氏の鎧が消えた!
「なっ!?」
「お宝ゲットじゃわい。まだまだ左腕が疼くわい! そりゃそりゃ!」
次々にイーリアスに襲いかかり、『平氏装備』をはぎ取っていくミーニャジード!
「ななな!? ミーニャ! やめんか!」
イーリアスの制止する声もむなしく、イーリアスの平氏装備は、一つ、また一つと盗まれミーニャのインベントリへと消えていく。
多少のけがは我慢してもらう事にして、俺とイーリアスが必死にミーニャジードを制圧しようとするが、ミーニャジードの緩急を付けたアクロバティックな動きに翻弄されるばかりだ。
ついにイーリアスは平氏装備を全て奪われ、さらしと下着のみの姿になってしまった。
『うひょ〜!! 風呂場の馬鹿力や!!』
猛る破邪の剣の本能が爆発した! ミーニャジードの手から飛び出し、俺達の元へと帰って来る。それでこそはっつぁんだ!
「む! 剣が! ……剣の一本位別に良い、また盗めば良いだけだからのぉ」
「ザック!」
「ぷぇ〜!」
ザックが俺の呼びかけに応えて、すぐにイーリアスと立ち位置を入れ替わる。さすがは、俺の相棒! みなまで言わずとも、心が通じているのが嬉しい。
「イーリアス! そのままじゃまずい! 今のうちにサブ装備に着替えてくれ!」
「承知! すまんが頼む! ミーニャめぇ〜!」
スンスンと匂いを嗅ぐ仕草をするミーニャジード。
「次のお宝は、どれにしようかにぁ」
獲物を狙い定める猫の目の瞳孔がすぼまる。物色しつつも、ミーニャジードの高速斬撃は止まらない!
ヒュバッ!
ドォーン!
更に動きのパターンを読ませまいと、ゴーストキングの使える魔法まで織り交ぜてきた!
くるくると翻弄しながら動き回るミーニャジードには、中々こちらの攻撃が当たらない!
あっ!? チョコとエリーの一瞬の隙をついて、金の髪飾りが盗まれてしまった!
ミーニャ!
敵に回すとなんて厄介な奴なんだ!
『おいルイ』
はっつぁんから念話が来た!
いきなりびっくりさせるなよ!
どうやら俺だけにヒソヒソ話のようだ。
『たぶんミーニャの奴は本能で、売ると高額になるアイテムから優先的に狙って盗んどるで』
そうみたいだな。
『もうじきシーラの白金の髪飾りを狙ってくるやろう。そこを取り押さえるんや。儂がモードチェンジで投網になってかぶさるさかい、動きが鈍った瞬間にカウンターを叩き込むんや』
カウンタースキルは一撃の威力が高くなるからなぁ。ミーニャは防御力が高くないから、ひょっとしたら俺のパワーでカウンタースキルを叩き込むと、ミーニャが一撃死してしまうかもしれない……ん、そうか!
一か八か、残悔独歩拳を使うか!?
はっつぁん、エリーにも同時に魔法を封じる『つきの歌』を歌うように伝えてくれ。このタイミングなら歌も効くかもしれない。
『了解や!』
ミーニャジードがシーラに襲いかかって来た!
今だ!
破邪の剣が投網になり覆い被さる!
俺が残悔独歩拳を使おうとした瞬間!
エリーと何かが繋がった!
脳裏に完成したビジョンが浮かぶ!
「「アルティメットユナイトスキル、|月化天罰《月○○○○○○○○○○》発動!」」
いったいどんなスキルがくるんだ!?
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
「ルイとエリーの新スキルはなにっ!?」
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