第106話 瞬影のケンタジード
「くしみたまの盾よ、その力を解き放て! 『魂力強奪』!」
ケンタジードが掲げた奇御魂の盾の中心の宝石から赤い光が膨れ上がったかと思うと、赤い光の線が俺達に向けて伸びてきた!
くっ!
かわしきれない!
「「うわぁあっ〜!」」
「「きゃあぁっ〜!」」
「ぎにゃあ〜!」
ぐおおぉぉ! なんだこれは!
体の奥底を引き裂かれて搾り取られるような感覚!
ああああぁぁぁぁ!!
「はぁはぁはぁはぁ」
「ひひん! いいぞぉ! 魂の力を吸い取れたようだな! そして次は……ほう、吸い取った力を使ってその様な事ができるのか。『絶壁愛』!」
ちっ!
まるで『くしみたまの盾』と会話でもしているかの様に初めて見たはずの盾の力を使いこなしていやがる!
あれがケンタジードの言う『武器支配』のスキルの力なのか!?
「ひひん! 驚いているようだな。これが余の持つスキルの力よ! あらゆる武器を支配し、その最高の力を引き出す事ができる! 攻撃に使う物だけではないぞ! 装備できる物ならば、あらゆる物が二倍の効力を発揮するのだ!」
おいおい!
敵キャラのくせにそれはチート能力じゃないか!?
そもそもクエストをこなして、ちゃんとした手順を踏まないと、手に入れたばかりの奇御魂の盾では『絶壁愛』は使えないはずなのに!
「ひひん! 自身は攻撃を受けずに、こちらからは攻撃し放題のようだな」
新たな弓矢を取り出したケンタジードが、またもや俺の間合いの外から『みだれうち』で俺達に向けて無数の矢を射掛けてくる!
キキキキキン!
くしみたまの盾による『魂力強奪』の激痛から解放された俺達はなんとか立ち直り、弓矢での攻撃に対抗する。
「ファイザム!」
「乱命割殺斬!」
キーン!
シーラの極大炎魔法と、イーリアスの聖剣技が同時に放たれ、ケンタジードへと激突したが、絶壁愛にはばまれケンタジードまで届かず効果がないようだ。
その伝説の盾の力は俺たちが手に入れるはずだったのに! 相手に使われるとこんなにも手強くなるとは!
「そうだ! イーリアス! 同じ伝説武器の破邪の剣の破邪モードなら絶壁愛をなんとか出来るんじゃないのか!?」
「承知!」
イーリアスが魔剣フォルバガードと破邪の剣をインベントリから出し入れして装備変更した。
『ルイ! イーリアス! インベントリはあかんってなんべん言うたらわかるんや! 儂の成長した能力をみてみい! ごっつぅ凄いんやで! もう手放せんようになるで!』
「破邪の剣! 御託は後だ! 今すぐ破邪モードになってくれ! 絶壁愛を斬るか透過して中に攻撃することはできるか!?」
『あん? なんや敵が持っとるんは奇御魂の盾か。そいつはまた厄介やな』
「ひひぃ〜んん!! それは! アララット山にあるはずの破邪の剣ではないか!? どおりでアララット山で見当たらなかった筈だ。お前達が持ち去っていたのか」
一瞬で俺達の近くまで駆け寄ってきたケンタジードが、イーリアスの持つ破邪の剣に手を向けた!
「完全武器支配!」
『・・・・・・』
「なっ!?」
破邪の剣がイーリアスの手を飛び出し、ケンタジードの手に吸い込まれていく。そのまま即座に俺たちから間合いを取るケンタジード!
「破邪の剣!?」
『アタラシイ、ゴシュジンサマ、ゴメイレイヲ』
「ひひ〜ん! まあ待て。今すぐ余がお前の全てを把握してやるから」
『・・・・・・』
「……ほう、その様な事ができるのか。では余が得てとしておる弓矢に変われ」
『形態変化。ユミヤモード』
破邪の剣の姿がグニグニとうごめき、騎士剣から弓矢へと変化していく!
破邪の剣はそんな事ができたのか!? いや、さっき言ってた新しい能力ってやつか!?
「馬やろうさん、破邪の剣を返して! オクちゃんお願い! オクトロス召喚!」
すぐに危機的状況を把握したシーラが、迷わずオクトロスを召喚する!
俺達の頭上に留まって防御態勢をとるオクトロス!
「だいかいしょう!」
オクトロス召喚による初回攻撃は大波による全体攻撃だった!
だが巨大な大波による攻撃も絶壁愛に阻まれて効果がないようだ。
『モードチェンジ、カンリョウ』
「ひひん! 大義である。では征くとしよう」
ズドドドドド!!
再びケンタジードが弓矢での『みだれうち』を始めた。最初の『与一の弓矢』を遥かに超える速度と威力だ!
俺、イーリアス、ミーニャの前衛に加え、ザックも弓矢を弾き落とすことに全力をつくすが、次々に後衛へと抜かれてしまう!
キンキンキンキン!
オクトロスの八回まで使える物理攻撃カットの効果もすぐに途切れてしまった!
次の召喚をしようとする、その間に次々と襲ってくる破邪の剣の矢に被弾してしまう!
エリーもバフをかける歌や調合薬を中断して、回復アイテムを次々に使い、チョコもチョコヒールを使うが回復が追いつかないほどにこちらのHPを削られていく!
まずい!
先程から陣形を切り替えて、当たっても比較的ダメージの少ない俺が、ワントップの形でより多く矢を受け持とうとしている。だが、ケンタジードが円を描くように移動しながら『みだれうち』してくるものだから、俺をかわして次々に仲間に当たってしまう!
ケンタウロス種族に、最高ダメージを生み出す破邪の剣の弓矢モード! なんて危険な組み合わせなんだ!
破邪の剣はずっと黙ってろ! なんてよく言ってたけど、タダの無機物みたいな、マニュアルしか言わない様な破邪の剣は本当の破邪の剣じゃないだろうが!
はやく「ええ乳しとる」なんてワイ談が大好きな『はっつぁん』に戻って、俺達の元へ帰ってこい!
「はっつぁん!! こっちはお前の大好きな美少女、美女軍団だぞ!! いつまでそんなオッサンに握りしめられてんだ! とっとと帰って来い!!」
俺の叫びに呼応するかのように、パーティーのみんなと、ちょうどこちらに追いついて来た、カサンドラ、王女ベアトリス、火の巫女ホルン達とも何かが繋がった!
「「「「「「「「アルティメット早□□えスキル、深夜の大興奮発動!」」」」」」」」




