第103話 クマンモ城 (世界地図あり)
第一章 火の鳥を求めて
火の大輝石を解放した俺たちルイパーティーは、飛空艇ミューズ号で次の目的地へと向かう。
「ルイちゃん次はどこに行くの?」
吟遊詩人のエリーがたずねてきた。
「火の国クマーソの首都クマーソにあるクマンモ城に行くんだよ」
「ほう、この国の文化は独特だから城も普通とは違うのか?」
暗黒騎士改め聖騎士のイーリアスがそう聞いてきた。
「そうだね、石垣の上にそびえ立つ火の国のお城は、防火の為に白い漆喰が塗ってあって、屋根瓦のいぶし銀の色との対比もあって、とても美しくてかっこいいよ」
「ルイお姉ちゃん、おしろには何があるの?」
竜王(幼生体)のシーラが、興味しんしんといった感じで俺に聞いてくる。
「お城にはこの国の王様がいるんだよ。昔から火の国の王様は熊の獣人で、今はクマンモ八世という人が治めているはずだ」
「ほんとにボスはにゃんでも知っていて、感心するにゃ」
この国で生まれ育った盗賊のミイナが、うんうんと頷きながら感心している。
ゲーム知識は任せなさい。まぁ、お城の豆知識は俺の前世の職業が大工だからというのもあるんだが。
「火の大輝石を魔王軍から解放すると、ソーア大火山から湧き出ていたモンスターと、火の大輝石の黒い鎖による暴走で溢れていたマグマが止まるんだよ。その後にクマンモ城に行くと、感謝感激したクマンモ八世が神社にまつってある国宝の武具を、魔王軍討伐の為に貸してくれるんだ」
エリーがジト目で俺を見てくる。
「ルイちゃん、本当に貸してくれるの? 神聖な物を泥棒したりするのはダメだよ?」
「本当だって! ちゃんと王様自らが神社に連れて行ってくれて、俺たちに貸してくれるんだって! あ、たぶん歓迎会で美味しい物をたくさん食べさせてくれるから、エリーはお礼のスピーチ考えといてね」
「なんで私が! パーティーリーダーはルイちゃんでしょう!」
「だって俺たちは聖女パーティーだからね! 対外的には聖女エリーが応対した方が物事がうまく進むんだよ。と言うことで、よろしくね。 カサンドラさんも来てね。死霊魔王を倒した立役者の一人なんだから」
「私はロングブリッジまでしかお役に立てませんでしたが、良いんでしょうか?」
エリーがウンウンうなりながらスピーチを考え始めた横で、星読の姫巫女のカサンドラがおずおずと尋ねてきた。
「あの時のカサンドラさんの超絶スキルが無かったら、死霊魔王まで辿りつけていなかったかも知れないんだから良いんだよ」
エリーの監視が厳しくて、お城のお宝漁りができないかもしれないから、その代わりに俺達の事をたくさんアピールしてお宝をプレゼントしてもらわなきゃいけないからね!
カサンドラのスキルはチートの極みだから、美味しい物をたくさん食べて、身体の中のマナをどうにかしてまたスキルが使えるようになってもらいたいものだ。次のミーニャの転職後のパワーレベリングで、カサンドラのレベルも99まで上げてもらっておこう。
パーティーでの打ち合わせを終えると、船室を出て別室にいる飛空艇技師のシュドウへと依頼をしに行った。
「シュドウさん、これの修理と分析、複製ってできますか?」
俺がインベントリから取り出したのは、聖地チャンティ湖の西の山で、シーラを連れ回していた護衛兼監視員のエリート帝国兵スモルズとウッドからはぎ取った魔導無線機だ。現在は俺の活躍で壊れている。
「むむ!? これは?」
「遠距離で会話ができる魔導無線機です」
「ほほう。世の中には面白いものがあるんじゃのう。よし、儂に任せておけ!」
「お願いします。それと、これも弱点が見つかるとありがたいので、解析してもらいたいです」
続けてインベントリから取り出したのはジョアーク帝国の決戦兵器である、前世でのパワードスーツに似たオーパーツ装備だ。
「おお! なんじゃこれは!」
「ジョアーク帝国のオーパーツ装備です。危険なところもあるかもしれないので、十分に注意して調べてもらいたいのですが……」
シーラが身に着けていたものだが、可能かどうかは分からないが、万が一、遠隔操作で爆発とかされてはたまったものでは無いので注意事項としてそれも伝えておく。
話を聞いたシュドウは元々オーパーツの研究をしていただけあって、目が爛々と輝き、すぐに二つの解析に取り掛かってくれた。
ゲームだと、終盤に行けるようになるダンジョンで、複数に分かれて同時攻略しなければいけない所も出てくる。その時に現実となったこの世界で無線機で連絡がとれるというのは、大きな効果を発揮することだろう。
シュドウには頑張ってもらいたい。
ミューズ号は順調に進み首都クマーソに到着した。
郊外でミューズ号から降ろしてもらい、チョコザに乗ってクマンモ城の城下町を進んで行くと、櫓を備えた大手門に着いた。
さっそく、守衛の犬獣人に火の大輝石を解放した者である事を告げ、国王クマンモ八世への面会を求めると、意外にもすんなりと通してもらえた。
案内人のあとに付き従って行くと大広間に通され、正面に、身長3メートル程の大柄な熊の獣人、クマンモ八世がいた。右脇には身長1.8メートル程の熊の獣人の女性、左脇には同じく身長1.8メートル程の牛の獣人の女性がいた。
「伝承にある光の戦士よ、良くぞ参った。わしら火の国の民はおぬしらを歓迎するんじゃもん。いちおう慣例にのっとって、確かめさせてもらうもん。火の巫女ホルンよ、三種の神器の一つ、勾玉をこれへ」
牛獣人の火の巫女ホルンがささげ持ったお盆に乗せられた勾玉が赤く光り、俺達へと照射されると、俺達の身体が緑、青、赤色に輝いた。
「おお! 火の巫女が感知した通り、火の大輝石は解放され、復活の兆しを見せているんじゃもん。おぬしらは伝承にある光の戦士で間違いないもん。良くぞ火の大輝石を解放してくれた! さあ、皆のもの! 宴じゃ! 宴の用意じゃもん!」




