第１００話 ソージーン
三つの頭をもつ極熱魔王ソージーン＝タンショのタフさは並ではない。せっかく本体のソージーンにダメージを与えてもタンショが次々に回復していってしまう。
しかも、いやらしいことに、ソージーンに寄生しているドルイドンのタンショは魔道士タイプであり、遠距離攻撃の代表である魔法攻撃に対して高い耐性をもっているのだ。
だが、聖騎士の聖剣技には非魔法の遠距離攻撃手段がある。
「イーリアス！ 防御と牽制は俺達に任せろ！ イーリアスは聖剣技で奥まったタンショを刈り取ってくれ！」
「応！ 大気は震え、我が剣は 閃光とならん！ 無双雷鳴突き！」
イーリアスが聖剣技スキル『無双雷鳴突き』を使い、その場で連続三段突きをすると、雷のエフェクトをまとった無属性の範囲攻撃がソージーンのタンショ部分を中心に炸裂した！
バシュバシュバシュ！
「ぐあぁぁ！」
聖騎士のスキル『聖剣技』は暗黒騎士のスキル『暗黒剣』と同じで必中効果がある。しかも、今イーリアスが使った『無双雷鳴突き』は高確率で『沈黙』の状態異常を付与する事までできるのだ。
「おのれ！」
怒り狂った極熱魔王がタンショの雷魔法と、ソージーンの氷と炎のブレスを同時に放ってきた！ 三属性攻撃だ！
防御はまかせろ！
なぜか、タンショのターゲットを取ることに成功している俺に向かって、極大雷魔法サンダザムが襲いかかる！
ド派手な雷のエフェクトと共に俺に直撃したが、『チャイナドレス改』と『チャイナシューズ』を装備して、最高の物理・魔法防御を誇る『カチモン』の俺にはたいしてダメージは無い。
ブレスは雪だるま君が問題なく対処してくれている。更に開戦直後にエリーが使った『いやしの歌』の効果で、ＨＰは自動で回復していく。
万全の防御体制だ！
雷魔法を放ってきたところをみるに、残念ながら『無双雷鳴突き』による魔法が使えなくなる『沈黙』は効果がなかったようだ。やはりゲームと同じで、いわゆる『ボス耐性』に守られているのだろう。
だが、そのあたりは織り込み済みなので、単純な物理ダメージだけでも十分だ。エリーがタイミングよく『調合』スキルで作った調合薬で、次々にイーリアスをドーピングしていく。
「不動光明剣！」
「乱命割殺斬！」
「天斗骨砕打！」
イーリアスの怒涛の聖剣技ラッシュ！
運良くそれぞれ異なる聖剣技の状態異常付与効果が、極熱魔王に効くかもしれないので、イーリアスは色々な技を使ってくれている。
極熱魔王との攻撃と防御・回復の応酬が続いたが、ついにその時が来た！
「無双雷鳴突き！」
バシュバシュバシュ！
「ぎゃあああぁぁぁ！！」
ドルイドンのタンショが断末魔の叫びをあげながら消えていった！
悪は滅びた！
「「グルァァアア！！！」」
ツーヘッドドラゴンが轟音で吠える！
その声は怒りか、それともタンショの支配から解放された喜びの雄叫びか！？
だがこれでツーヘッドドラゴンとの戦闘が終わるような、ぬるい展開にはならない。支配されずとも、元々ソージーンは魔王なのだ。
ゲーム時代のプレーヤーに第二形態と呼ばれる『ツーヘッドドラゴンモード』の極熱魔王との戦闘は続く。しかも、通常攻撃とブレスしか攻撃手段が無いにも関わらず、元々即死級の通常攻撃が、更に１．５倍強力になるのだ。
総合力ではドルイドンのタンショ付きの方が強いし、回復されてしまうので永遠に倒しきれないのだが、危険度は第二形態になってより先鋭化されている。
「「グルァァアア！！！」」
ツーヘッド・ソージーンが圧倒的通常攻撃で襲いかかってくる！
防御無視攻撃なので、『カチモン』の俺でもまともに何発もくらうとやばい！
陣形を変更し、ミーニャが俺と同じ先頭に躍り出る！
ミーニャは打たれ強くは無いが、驚異の回避率で左の首のラッシュをよける！
よける！
よける！
限界突破した運と、素早さの高さによる華麗なる回避！
一方の俺も右の首のラッシュを捌き続ける！
直撃さえしなければ、仲間が回復してくれるという安心感が、冷静に捌き続ける力に繋がっている。
俺とミーニャが攻撃を引き付けている間に、シーラが弱点属性である極大炎魔法ファイザムを氷属性の右竜頭に叩き込む！
ボガーン！！
属性効果により、大ダメージを与えることに成功している。更にイーリアスの聖剣技とチョコザの魔法も加わり右竜頭を集中的に攻撃だ！
シーラの五度目のファイザムが直撃すると、右竜頭は爆発してもげ落ちた！
残すは火属性の左竜頭のみだ！
敵の攻撃手段は減り、こちらは一点集中ができる。油断はできないが、闘いは俺達に有利に進んでいる。
今度はシーラの極大氷魔法ブリザザムが大活躍だ！
激しい戦闘が続いたが、パーティー全員の火力を集中して、ついに極熱魔王の最後の左竜頭ももげ落ちた。
ソージーンの体は地響きをたてて倒れ、ピクリともしなくなる。
「やったな！ みんなお疲れ様！」
「やったね！ ついに死天王を三体も倒したよ！」
言葉にしながら、俺の頭に違和感がよぎる。
なんだ？
何かがおかしい！？
慌てて極熱魔王の亡骸を振り返る。
未だ消えずに残っていた極熱魔王の胴体の胸部分がガパリと開き、現れた口から極太のブレスが吐き出された。
ついに本編も１００話にまでなりました！
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