間話 深淵にて・・・その3
闇が覆う深淵にあるデスジード城にて、玉座に座り思索にふけっていた大魔王デスジードは、重大な異変を感じると、ローブより心臓の形をしたナニかを取り出した。そして信じられないものを見る事となる。
そこに嵌め込まれている宝玉の内、水色の宝玉の色が抜け落ちていたのだ。それは海月魔王クラーゲンの死を意味していた。
「なん······だと!?」
しばし唖然とした大魔王デスジードであったが、心臓の形をしたナニかの、残りの二つの宝玉にマナを込めつつ呼びかける。
「極熱魔王、百獣魔王よ」
「チチチ、極熱魔王ソージーンここに」
「······百獣魔王ディラグノス」
「死霊魔王ゴルゴンダに続き、海月魔王クラーゲンが死んだ」
「なんと! チチチ、まさかクラーゲンまでが死ぬとは! それでは水の大輝石は……」
「いずれ本来の輝きを取り戻すであろう。大輝石は星を介してお互いに若干であるが繋がっている。今後は残りの大輝石の抵抗が激しくなるであろう。次はお前達どちらかの方に、死霊魔王と海月魔王を倒した奴が来るやもしれぬ。二人はそれぞれ防備を固めよ」
「チチチ! 我はあの二人とは違います。防備を固め、侵入者は返り討ちにしてデスジード様の御心を晴らしてご覧に入れましょう」
「うむ、期待しておるぞ。大輝石を闇に染め上げる儀式にも一段と力を入れよ」
「……ふっ」
大魔王デスジードが宝玉に流していたマナを解除すると、再び玉座の間は静まり返った。
しばしの黙考をへて目を開けた大魔王デスジードは背後へと呼びかける。
「聞いていたなミスドジード。勇者の行方はどうだ?」
フッと背後の空間が揺らめき、そこから怪しげな声が聞こえてきた。
「申し訳ありません。勇者の足取りは忽然と消えておりまして、まだ発見できておりません。しかしながら、聖女パーティーが聖竜王ファーヴニルの遺児シーラと行動を共にしているという情報をマクドジードが掴んでまいりました」
「そうか。ならば先にシーラの確保とイーリアスの始末をしてまいれ」
「ははっ、かしこまりました。イーリアスの始末ならば暗黒パワーを操る私が引き継いで、処分してまいりましょう」
「うむ、それでよい」
魔王軍の敵として、はっきりと認識された聖女パーティー。魔王軍の次の一手とは果たして……




