―人生は洗濯の連続― 「私を生きるには」
私はタライ舟に乗り川の流れに揺られていた。
幸せな人生だったのになぜか不満で、今回も成仏できなかった。次こそはとループしようとしたら神様に命じられた。
「このままだとずっとループを繰り返しますよ。だから、あなたがこれだと選んだ桃を拾って洗濯してからになさい」と。
他に人影はなく、桃は上流からどんどん流れてきていた。
困った、どれを拾ったらいいのかわからない。私はいつだって人に決めてもらって生きてきた。そうすれば、私が選ぶよりも物事はうまくいくのだから。
でも頼る人はここには誰もいない。
恐る恐る一番近くの小さな桃を拾ってみた。すると桃は二つに割れて、中から赤ん坊の服が出てきた。小さくてすぐに洗い終えてしまったので、なんだか物足りなかった。
次は大きい桃を拾ったら、少し傷がついていた。中からはYシャツが出てきた。襟首の汚れが気になって丁寧に洗うと、かなり綺麗に仕上がった。
やったぞと嬉しくなって、今度は歪な桃を選んでみた。出てきた泥まみれの靴下と挌闘した。洗い上がりは白いとはいえなかったけれど、清々しい気持ちに満たされた。
私は今まで感じたことのない自分の中の手応えに夢中になって、次から次に桃を選んでは洗濯しつづけた。
ふと気づくと、体ほどの大きな桃がタライの横に停まっていた。
無性にその大きな桃に乗りたくなり膝を抱えて座ると、柔らかな桃の実の中へ体がすうと沈んだ。不思議な安心感に満たされ、眠りに落ちていく。
桃が川の流れに押されてどんぶらこと動き出す。
「もうすぐあなたの人生が始まるよ」
と遠くで神様の声が聞こえた気がした。
(了)
お読みくださりありがとうございました。
今回はショートショートならではの「不思議なお話」でした。
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