ナンパ細胞
恋多き男女の体には活発に活動する「ナンパ細胞」が存在する!
という大発見から、ナンパ細胞を少子化対策に利用しようと、科学者たちはこぞって研究に取り組んだ。
最初に研究が実を結んだのは、とある有力政治家の力添えで国から多くの資金提供を受けていた研究者だった。そして影では弱小研究者に圧力をかけるようなひどい男だった。
朗報を聞いて駆けつけた政治家に研究者は説明した。
「全ての人間にナンパ細胞は備わっていますが、活性化しにくい状態でした。そこで特別な酵素を投与してナンパ細胞を活性化させ、異性の魅力に敏感にさせることに成功しました!」
「よくやった! 他の研究者に先を越されないよう、私が迅速に実用化しよう。任せておけ、やり方はいくらでもある」
二人はニヤける口元を覆いもせず固い握手を交わす。政治家は重要ポストに就く己を、研究者は有名な科学賞を授与された己の姿を想像しながら。
国民の結婚・出生率は高まり、二人は世間から少子化問題の救世主ともてはやされた。将来は確約されたも同然、まさに大舟に乗った気分。
しかし数年後、そもそも抑えの利かない性質のナンパ細胞によってもたらされたのは、離婚増加、家庭崩壊、モラルの混迷……。
二人は社会から責任を問われ糾弾され、順風満帆と信じていた彼らは大嵐に巻き込まれていくのだった。
このあと彼らを待ち構えているのは、そう勿論ナンパ細胞だけに、人生もまた――
(了)
お読みくださりありがとうございました。
久しぶりに投稿できました。
ですがちょいと捻り足らず、ダジャレオチ……(;'∀')













