最低二万里の苦行
もうへとへとだ。
かなり長いことずっと歩き続けているのに、周囲の景色は全く変わらないような気がする。
……きっと意識が朦朧としてるんだ。
霧のかかった頭に、長の言葉が浮かぶ。
「最低二万里はかかる苦しい修行じゃ。地球をぐるぐると旅した果てに在るお宝を見つけてこい。さすればお前を勤勉なる我が一族の立派な成員と認めよう」
すでに地球を何周したかわからない。
坂道を踏みしめて上り、踏ん張って下りてをくり返し。
いくつもの海を渡り、山脈も越えた。
世界の国々を覚えるほどに巡り、北極も南極も赤道だってもう幾度も。
だがお宝はどこに?
ついに限界に達した足は自分の体を支えることができなくなり、私は真っ逆さまに落ちてしまった……
ぽとりと落ちたその場所が、なんということだ、お宝の山だったのだ!
私は喜びのあまりに興奮してお宝に飛びつき、そのうちの一つを背負って意気揚々と巣穴へ帰った。
***
自室の窓を閉めようとやってきた子どもが、勉強机の地球儀とおやつの食べこぼしを見て悲鳴を上げた。
「ぎゃあっ、ぼくの机に蟻の群れがぁっ……!」
(了)
お読みいただきありがとうございました。
最近、小説家になろうではランキングを個別に通知してくれるようになって判ったことなのですが、
なんとこの「超ショートショートはじめました」が純文学連載中ジャンルに置いて、現在年間2位と累計15位にいます。
毎回四苦八苦のショートショート初心者の作品集ですが、少しでもお楽しみいただけていましたら嬉しいです。これからもオモシロい!と仰っていただくよう頑張って書いていきますので、どうぞよろしくお願いいたします♪













