アルバイトの資質(蘇生試験)
仰向けになっているだけの簡単なお仕事です。
あなたの魅力で楽しいイベントに!
学生サイトで見つけたのは、消防庁の一般向け心肺蘇生講習会の補助員のバイト。
社会貢献したい僕は志望動機をしたためて面接会場へ。すでに同じ年頃の希望者が大勢集まっていた。
心肺蘇生術をためらう人は多い。そこで「また受けたい!」と思える魅力溢れる講習会で、広く市民に心肺蘇生を習熟させる試み。
最大の売りは講習会の最後に行う、バイトを患者に見立てた蘇生試験。
「でも実際に触れないから安心して」と担当者。「使うのは透明な人形。で、人形が寝てる透明アクリル板の下に君らは仰向けになるだけだから。
いや〜、参加者がすごい張りきっちゃって、大好評なんだよね〜」
――リアルに人を配置して臨場感を高め、意識の向上を図るということか。
担当者は「判定しま〜す」と僕たちをその場に並ばせて、一瞥しただけで採否を下していく。
「ごめんね〜君、不採用」
履歴書の確認も質問もされないまま決定した結果に、もやもやして仕方ない。でも採用された奴らを見たら、悲しいかな納得せざるを得なかった。
美男美女ばかりじゃないか。
そうか、あの顔を見ながらあんなことやこんなこと……!
平凡な顔立ちで悪かったなとぼやいていると、担当者に話しかけられた。
「あのー残念なところ恐縮ですが、もしよければ講習会を受けてみません?」
さすがの僕もカッとした。
普及させたいのはわかる。でもいくらなんでもタイミングがあんだろ! と怒鳴ろうとして美女たちの姿が目に入った僕は、二つ返事で快諾した。
(了)
ちなみに「一般講習会の最後に試験」はフィクションですのでm(__)m
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