ハートを射抜かれて 【骨折祈願】
「神様、俺っちの骨折祈願、どうか叶えてくれっす!」
前代未聞の願掛けに、なろう国の神社の神様は驚いた。
見れば、頭の天辺から足先までを覆う黒い長衣の男が一心に祈っている。
理由を尋ねると男は話しだした。
「こんな気持ち生まれて初めてなんっす! めちゃ可愛なSランクの女勇者にずっきゅんハートを射抜かれちまって……! けど俺っち弱小モンスターだからダンジョンの任務にあらがえないっす、あの子がダンジョン潜ってきたら攻撃しちまう……。どうせ瞬殺されっけど、あの子を襲うなんてとても耐えられないっす!」
「ふむ……で、何故に骨折祈願を?」
「俺っち骸骨なんっす! バッキバキに骨折させられたら、ここで死ねるっす! お願ぇしやす!」
「そうか……神として忍びないが、それがお前の本望ならば叶えてやろう」
骸骨は長衣を脱ぎ捨て、神様は勢いよく手を振り上げた――が、その手を止めた。
「肝心のお前の体はどこだ? わしには見えんが」
「何を言ってるっす? 肉体は朽ちても俺っちの骨はホラここに! ……あれ?」
声は聞こえど、骸骨の姿を認めることはできなかった。
「骸骨よ、お前、女勇者にすっかり骨抜きにされたな」
(了)
副お題の「初恋」は、企画の都合でしばらく続きます。
この「超ショートショートはじめました」の4作目「お姫様ラッコ」が朗読配信されました!
朗読してくださったのは、声のお仕事をされている吉史あん様です。(視聴時間4分)
https://www.youtube.com/watch?v=XbUAxXHbleU
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