警察県
実直な県民気質で優秀な警察関係者を次々輩出。その恩恵で県警の評判は高い。そのため官民で地域ブランドに警察色を掲げている。
警察県か。来たくなかったが目的のためには仕方ない。
俺は最近話題の怪盗X。
47都道府県にあった究極の美術品は既に俺の手中。
全都道府県を制覇したかったが、最後に残った警察県は質素堅実で俺の感性に見合う美術品がない。
なのになぜここに来たかというと、実は美術品収集だけが目的ではなく、その地域で究極に美味いソウルフードを腹に収めることもマストなのだ。
だから俺は今、県内で最も評判の高い店の前に並んでいる。狙いは1日1食限定の究極のメニュー。
うぅ、しかし警察県にいるだけで肝が冷える。
車は白と黒のツートンカラーだらけ。どの家のの玄関にも防犯回転灯。通行人はよそ者と見るや笑顔で俺に話しかけ、どこから来たのか聞きたがる。かと思えば急に建物の陰に身を潜めてジト目であんパンをかじり出す。
だがそんな思いをしても深夜から並んだおかげで、俺は列の先頭、限定品はもう俺のもの!
ようやく開店。全国制覇を目前に興奮して、席につくなり呼出ボタンを押して注文した。
店内に漂う炊き上がる飯と上質な鰹出汁の匂い。衣を纏った肉が揚げられる軽やかな音――やがて俺のための逸品が運ばれて目の前に置かれた。
こ、これが究極のカツ丼か……!
頬張ろうと口を開けたその時、ドアが荒々しく開けられた。
「怪盗X! もう逃げられんぞ!」
踏み込んだ刑事と俊敏な客の連携プレーによって、たちまち取り押さえられてしまった。
「X! あいにくだったな。呼出ボタンの指紋センサーがお前だと識別したんだ」
「畜生、あと少しだったのに!」
悔しさで食べ損ねたカツ丼から目を離せない俺の耳に、刑事の声が響いた。
「なあに取調室で罪を全て吐いたら、これよりもっと美味いこの店の裏メニュー「幻のカツ丼」を食わせてやるさ」
それはまさに究極……!
(了)
公私に忙しく、久しぶりの企画参加になりました。
この企画、410字が目標なのですが、がっつり776文字で(^_^;)
カツ丼だけにがっつりということにさせてくださいw
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真面目から不真面目までいろいろ書いてます。よかったら遊びに来てくださいね♪













