チョコニート
「もういい加減、部屋から出てきてくれよ! 知代子!!」
「……」
「僕は君が心配なんだよ! ……なぁお願いだ、返事ぐらいしてくれ!」
「……」
僕たちは結婚したばかり。知代子に夢中の僕は、周囲も羨むラブラブな新婚生活を思い描いてた。
それなのに、「絶対に中をのぞかないって約束して」。そう言ったきり知代子は職場にも行かず、部屋に籠って出てこなくなった。トイレのときも、顔色は悪く僕を避けて目も合わしてくれない。
僕は失態をしでかしたのか? 思い当たる節はないが、こういうことって自分では気づけないじゃないか。
出会いはガーナ。幻のカカオを探していた新進気鋭ショコラティエの知代子が怪我で困っていたところを、農業支援をしていた僕が助けた。
知代子の顔立ちは派手で僕好みじゃなかったが、人間、大事なのは中味だ。
「仕事と結婚してるようなものよ」とワーカホリックで異性には不器用。互いに似ていた僕たちはあっという間に恋に落ちた。二人で幻のカカオを見つけだし、僕が求婚、そして結婚。
一緒にカカオを探し回ったとき、あんなにも甘い関係だったじゃないか。もう君は僕を愛してないのか? 僕はこんなにも愛してるのに。
いったい僕の何がいけなかったのか教えてくれ! だけど約束を破って部屋を開けたなら、愛想をつかされて出て行ってしまうかもしれない。でももう限界だ……!
僕は勢いよくドアを開けた。
「れ、零斗くん……! 開けちゃ嫌だって言ったじゃん!」
カカオパウダーまみれの手で慌てて顔を隠す知代子。
(……あれ? 知代子ってあんな顔だっけ?)
じっと見つめる僕の視線の理由を感じたのか、知代子は真赤になった。
「も~作業しているときはノーメークだから、見られるの嫌だったの! それなのに開けちゃって!」
と頬を膨らませて上目遣いで僕を睨む。
めちゃめちゃ僕好みの顔! か、かわいい……♡
「零斗くんに幻のカカオで作った最高のチョコを食べて欲しくて、バレンタインに間に合わせようと必死に作ってたのにぃ……。まだ完璧とはいえないけど、仕方ないなあ。なんとかギリギリチョコに仕上がったとこだから、一個食べてみる? ほら、あ〜ん」
僕の口にチョコを挿し入れながら、知代子はにいっとはにかみながら嬉しそうに微笑む。その笑顔に僕は口内だけでなく、脳内も甘くとろける。
まったくこんなにも周りが見えなくなる程チョコ作りにのめり込むなんて。そうだ「仕事と結婚」と言ってたもんな。
……待てよ?
さっき僕が食べたチョコはなんだったっけ……
(了)
今回は堂々の規定文字数破りの約千字(;'∀')
いちゃいちゃが書きたくなり、文字数削るのやめちゃいましたw
拙作、山田太郎の影響かも。
バレンタインですから、甘く見逃していただけると嬉しいでっす♡
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真面目から不真面目までいろいろ書いてます。よかったら遊びに来てくださいね♪













