節分胎教
妊婦は全員、セツブンという粉末の匂いを嗅ぎ、口に含み、更には腹部をマッサージする。
千年以上も前から続くセツブン胎教だ。
それは我々がより進化した生物となり生き残るために必要なこと。
事の起こりは、初めて人間と出会った悲しき事件。
人間は我々を見つけると呼びかけには耳も貸さず、目を吊り上げて一方的に小さく硬い植物の粒を投げつけてきた。
きっと驚いたのだろう、無理もない。
だが問題があった。
我々の青い体に当たると全身が赤く腫れ、髪は瞬時に縮れ、頭皮も腫れて大きな瘤になった。
そう、アレルギー反応だ。
接触をあきらめて戻った我々は粒の成分を分析し、それを何世代もかけて取り込むことで耐性を得たのだ。
*
今から、我々は再び人間に接触を試みる。
人間はまだ攻撃的なのだろうか。
友好こそが繁栄を約束するのだと気がついただろうか。
我々は人間との共存を強く望んでいる。
「今度は対話をしてくれよ」
と使節団長の私は呟き、膨張する太陽に吞みこまれそうな自分の星を背に、地球へと向かうワープボタンを押した。
(了)













