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月夜の寝ぐせ
静かなまん丸月夜のこと。
お月様から不思議な音が聞こえました。
それはお月様のいびき。お腹いっぱいできっと眠いのです。
ごろん、とお月様は寝返りをひとつ。
ごろごろごろん。
あらまあ寝返りが止まりません。まん丸だし、寝ぐせもよくないようですね。
お月様は夜空を転がり始めてしまいました。
大変、このままでは夜空から落ちてしまいます!
心配した狼が遠吠えをしても、コウモリが傍まで飛んで行っても、ぐっすり寝ているお月様は目覚めません。
事情を聞いた親方が腰を上げました。親方がお月様を夜空にくっつけてくれるというのです。弟子を呼び寄せると重い荷物を持って高い木に登り、そこからぴょんと跳んで月に昇っていきました。
ここからでは遠くて親方が何をしているかよく見えません。
でも親方と弟子の頭にぴょこんとついた長いお耳ははっきりと見えます。まるで撥ねた寝ぐせのようですね。
静かな夜空に、親方たちの作業の音が響きます。
ぺったんぺったん、ぺったんたん。
(了)













