逢いたい菜
逢いたいな 逢いたいな
巡り合う日を 心待つ
愛しき人よ 二人きり
いざ愉しもう このときを
口に含めばこのロマンチックな唄がどこからか聴こえ、逢いたい人に会えるという幻の植物「逢いたい菜」。その姿は謎、数十年に一度花が開くと雅な芳香で在処がわかるという。
コレクターの私は逢いたい菜を長年追い求め、自生するという噂の森に住み機会を待っていた。
今宵私は雅な芳香を辿り、ついに見つけた!
背丈程の長く大きな緑の袋からは芳醇な香りが立ち昇り、その縁には一枚の大きな葉が被るように垂れ下がる。
中を見たいとよじ登り縁に跨ろうとした瞬間、粘液で滑って袋の中に落ちてしまった。
蜜が跳ね、四方八方からあの唄が聞こえてきた。
逢いたいな 逢いたいな
巡り合う日を 心待つ
しまったと思ったがもう遅かった。
愛しき人よ 二人きり
葉がゆっくりと動き蓋がされる。
纏わる蜜に興奮し、痺れが心地よい。
いざ愉しもう このときを
蜜がどぷんと波打ち袋が揺れて、私の意識はぷつんと途絶えた。
(了)













