忘年怪異
引きこもり体質で取り得もない僕は窓際族。リストラ対象で肩を叩かれたことは幾度もあったがなんとか免れてきた。だから毎日をただ静かにやり過ごし定時に帰るのみ。
今夜は毎年恒例、ワンマン社長が決めた全社員強制参加の忘年会。
僕にとっては地獄のイベントだが欠席すればクビだ。ああ、腹痛でも起きてくれ……!
その願いは背中を思いきりたたかれて吹き飛んだ。
「ヨッ我が社のお祭り男! 今年も宜しくな!」
毎日僕を見下す係長がニヤついて立っていた。
いつもの嫌味だ。
僕は曖昧に笑い返して逃げるように席を離れた。
部署の出入口でガン無視されてる御局に声をかけられた。
「ビンゴ大会の司会頼むわよ! 当たらないってイライラ煩いガキっぽい奴等、あんたの名調子でやりこめちゃって!」
誰かと間違えているのだろう。
訂正するのも気が引けて生返事してトイレへと失礼する。と今度は、遠い存在になった出世頭の同期が話しかけてきた。
「お前の二次会のものまねショー本当最高だよな。特に社長の真似! あれ見たら日頃の憂さも晴れるよな」
――全く覚えがない。
からかわれてる? 泥酔? いやあんな場で酒なんか喉も通らない。
僕は縮みあがった。
怖くて素面でなんか行けやしない。会場手前の薄暗い店で一杯引っかけることにした。
そういえば昨年もこの店に来たような。
「待ってたぜ」
ゆらりと立ち上がった店主は、崩れかけた赤い眼で僕を射抜く。
差しだされた黒く蠢く怪しい液体を、なぜか躊躇もせず僕は煽った。
了
お読みいただきありがとうございました。
結局のところ、良い怪異なのかも、しれません(^^)
今回は611文字。
この話はこれ以上削れないですね(;^_^A 410字の感覚はまだまだ獲得できません(;'∀')
修行は続くのです。













