創造者と破壊者(第一章完結)
アルドside
戦争が始まった………………
俺は遊撃部隊。………周りの敵が全滅でき次第
総統であるクロウを殺しに行く。
………こんなことを総統である俺が言ってはいけないのかも
しれないが正直に言って殺したくない。
だが、ここで殺さなければ
後々大きな被害が出ることだってある。
なぜならあいつは…………強いからだ。
クリスタル王国の幹部や同盟国を殺せるくらいに。
………………実際殺していたが。
まあ、これらのことを含めて
クロウを生かすわけにはいかないのである。
……………殺したくないな。そう思いながら周りの敵の首を斬る
しばらくして周りの敵が片付いてしまった。
もう考える時間はない。殺さなきゃ………。
俺はクロウのところへと向かう。
勿論邪魔な奴らは殺した。一人残らず。
もう大鎌で殺すのもめんどくさくなってきたので
「【デッドエンドフレイム】」
広範囲攻撃魔法を使いながら進んでいく。
あたりから悲鳴が聞こえるも聞こえないふりをして進む。
こんなことでいちいち心を痛めていては
総統なんて………狂った仕事やっていけない………………
とりあえず………殺さなくては。国民に危害が及ぶ前に。
ザシュッ
グサッ
ザクッ
感情を押し殺しながら進んでいく。
それがどれくらい続いただろうか。
気がつくとクロウが目の前に立っていた。
俺は驚きのあまりほぼ反射的に大鎌で斬りかかる。
しかし力任せの攻撃はあっさりと避けられてしまった
まあそれもそうか。あんな攻撃避けられるに決まってる。
しかもすれ違いざまに攻撃を食らった。
とりあえず体制を立て直すために少し距離を取る。
追撃してくるかと思ったがただ突っ立っているだけだった。
もしかして戦う意思がないのかと思い回復をし始める。
だが俺の勘違いだったようで
クロウはいきなり俺に斬りかかってきた。
多少は警戒していたため傷は負わなかったがふっとばされた
「っ゛………………いってぇ………」
あまり即時回復は魔力を食うので使いたくなかったが
この際仕方がない。俺は回復をして立ち上がる。
「ふー………」
少し深呼吸してから再び大鎌を構える。
そうだ、ここは戦場。迷っている暇はない。
……………殺すしかないんだ。
俺は大鎌を振るうも剣で受け止められる。
相変わらずの剣しか使わないんだな…………。
いや魔法も使うか。ま、今はそんな事を考えている暇はない
「【クリエイト】」
俺はクリエイトを使って剣を作り
クロウに向かうように命令する。
剣は命令に従ってクロウへと飛んでいく。
クロウは向かってきた剣を全て剣で壊していく。
あれ結構硬いはずなんだけどな。
木っ端微塵になっちゃってるんだけど……
にしても何か違和感があるな。気のせいか。
そもそも………………
クロウが俺を殺すと言っている時点でおかしいけどな
なんなんだ……?この違和感は………
そんな事を考えていると短剣がこっちに飛んでくる
あっぶねぇ……ギリギリでかわせたもののあと少しでも
反応が遅れていたら確実に刺さっていただろうな。
俺はもう一度クリエイトを使い剣を作りクロウに向かわせる
すると今度はあたった。普通の剣を作り出してたら絶対に
避けられていただろうな。
俺は普通の剣と透明の剣の二種類を作ってクロウに投げた
普通の剣は弾かれたが透明の剣は弾かれなかった。
まあそれもそうか。見えないしな。
だが……………クロウはこれくらい弾いていたはずだけどな。
少し俺は煽ろうと思ってこう言う。
「おーい。クロウ〜?
避けきれてないぞ〜?調子でも悪いのか〜?」
クロウなら怒るか
もしくは悪くないとか返事をすると思ったが
予想に反して何も答えずに斬りかかってきた。
怒らせたか?と思ったが感情の変化が一切見られない。
………………ますます混乱してきた。
そう思いながら戦っていると
敵を片付け終わった幹部や総統がこちらに来るのが見えた。
これで多少は楽になるかな。
「おーい!アルドー!手伝いに来たぞー!」
と言うライト。俺はクロウの攻撃を避けつつ、
「ありがとー!」
と叫ぶ。それがいけなかったのだろう。
クロウから目を離した
一瞬の隙に俺は腕を切られてしまった。
「っ゛………………いってぇ、、、」
俺は一度死んだことにより痛覚が戻ってしまっている。
本来ならこんなの気にせずに戦うが………
痛みがあってはそうもいかない。
回復をしてから再び大鎌を構える。
…なにかこの攻撃の感触…というか感じ……何処かで……?
あともう少し………あともう少しで思い出せそうなんだ……
……………少し時間を稼いでもらおう。
俺は念話で全員に通達をする。
『すまないが………少し時間を稼いでくれないか?
理由は…………………あとから話す……………』
そう通達すると了解という返事が返ってくる。
さて……時間を稼いでもらっているうちに解析しなきゃな。
アルドside終了
レイside
アルドから少しの間時間を稼いでほしいという通達がきた。
何を考えているかはわからないけど
きっと………何か気がかりがあるんだろう。
そうでもなきゃこんな通達してこない。
私達はもちろん了承した。
了承した瞬間アルドは何かの魔法を使い始めた。
そして顔をしかめた。なんでだろうと思ったけど。
おっと。クロウの攻撃あたったら死ぬね。あれは。
………今は目の前にいるクロウを相手しなきゃね。
レイside終了
アルドside
やっぱりそうだ。あの攻撃は。__なんだ。
だから俺が何処かで受けたことがあるような
感じがしたと思ったんだ。
さっき鑑定眼で見たけど間違いなかった。
にしても………大分________な。
これは引き剥がすの大変そう……
さっき__に聞いたけど
危険だけど一番助けられる確率がある方法。
やるしかないのか………。
そうだ、最後の最後まで希望に賭けよう。
上手くいってくれると良いが……………
ドゴォッ
何かがぶつかる音がして我にかえる。
見るとレイがクロウにふっとばされて怪我をおっていた。
……………よし。覚悟はもう決まった。やろう。
俺はインカムでみんなに下がってくれ、と伝える。
クロウは下がったレイたちに攻撃を仕掛けようとする。
俺はそれを大鎌で受け止める。
「みんなは下がってくれ。
………………ここからは俺が相手だ。クロウ。」
そう言って俺はクロウをふっとばす。
ドゴォンッ
と音がしてクロウが壁にぶつかる。
「………………………」
それでも悲鳴一つ上げないクロウ。やっぱりか。
まあ多分それが
__に______サインみたいなものなんだろう。
わかりやすくて助かる。
というかそもそも魂が__ある時点で気づくべきだったな。
………………いや、どうせ気づいたところでやることは一緒か。
「ふぅー……………」
俺は深呼吸を一つしてある呪文を無詠唱で使う。
ちらりとクロウを盗み見るも気づいていないみたいだ。
これで気づかれたら即終わってたからな。
この呪文は相手に気づかれてしまっては意味がない。
そして俺は身体強化を無詠唱で使い、足の速度を速める。
そしてクロウに見えるぐらいの速度で近づき首を刎ねた。
辺り一面に赤い水たまりができる。
………クロウの体はドサリと地面に倒れた。
俺は帰る素振りを見せる。するとクロウの体付近のとこから
「キーッヒッヒッヒ!」
という気持ち悪い笑い声が聞こえた。
なんだろうと思い俺は後ろを振り向く。
そこには顔がついた黒い靄がいた。なにこれ。
俺らがなんだコイツと
思っているのを気にせずにそいつは話を続ける。
「そこにいる赤髪!長馴染を殺したなぁ!」
………………普段人を殺したいと思わない俺だが
こいつはまじで殺していいかな。めちゃくちゃ腹立つ。
「あのなぁ……俺だって殺したくて殺したわけじゃ……」
そう話そうとする俺を遮りそいつは話し続ける。
………………まじでなんなんこいつ。本当に。
「殺そうとしてくるから殺した、だろ?」
こみ上げる殺意を抑えながら話を続ける。
「わかってるんならいちいち話しかけてくんなよ…
俺はいま機嫌悪ぃんだよ………。来んじゃねぇ。」
こんなに人?を衝動で殺したいと思うのは初めてだ。
話していて不快感しか覚えない。不愉快だ。
「こいつがおかしくなったのは
………俺様のせいだと言ったらどうする?」
「あ゛?」
………今までで一番低い声出たかも知んねぇ……………
俺は腹が立ったのでそいつに思いっきり圧をかける。
だがそいつにとって痛くも痒くもないのか平然としている。
そしてさらに話を続ける。
「頭の悪いお前らに説明してやるよ。
俺様はそこのクロウ………ガラクタに取り憑いていたんだよ」
その言葉を聞いた瞬間俺はそいつに殴りかかる。
が、俺の腕はそいつを突き抜けた。
俺はバランスを崩すも、飛び退いて体勢を立て直す。
「キーッヒッヒッヒ!俺様に物理攻撃は効かないんだよ!」
それならば、と俺は魔法を放つ。しかしそれも通り抜ける。
「キーッヒッヒッヒ!無駄無駄無駄ぁ!」
こいついちいちうるせぇな。
そう思う俺を気にせずに話を続けていく何か。
「取り憑いていたって………どういうことだ?」
何が面白いのかわからないがそいつは笑いながら言う。
「そのまんまの意味さぁ………
さっきまで……いや、お前らに攻撃を仕掛けているときも
俺様が全部操っていたんだよぉ………
まあ……………簡潔に言うと
このガラクタを殺したのは無意味ってことだよ」
いつ攻撃を仕掛けてくるかわからないので念の為結界を張る
「なんでそんなことをしたんだ……?」
「なんでかってぇ?
………………より強い肉体を手に入れるためだよぉ
その手段として一番良かったのがこいつだったからさぁ…
ちょっとばかし借りただけだよぉ………」
ん?より強い肉体………?
「俺様…………“呪い“は人に取り憑く事が出来る
だからより強い肉体が欲しいのさぁ………」
「呪いたちは肉体が死んだときに
すぐにその肉体からでないと死んじまうからなぁ。
だから………今の俺様には誰も攻撃できないってことさぁ
ただ……………このまま肉体を手に入れられないとぉ……
俺様は死んじまうからなぁ………
だからこの場で一番強そうな赤髪………
お前に取り憑くことにしたよぉぉぉぉぉ!」
そう言ってそいつは俺に向かってくる。
結界を何枚も貼っていたが
呪いはそれすら障壁にならないようで
すり抜けてこちらまでやってきた。
「アルドッ!」
レイの悲痛な叫び声が聞こえる。
あともう少しで呪いの手が届く___所で何かに弾かれた。
それに弾かれたせいか知らないが
呪いは手を押さえていたがっていた。滑稽だな。
「何故だ………!何故……!貴様に触れられないぃぃぃ!」
と呪いが手を抑えながら言う。
「あー…………まじでうるせぇな。
………そんなことすらわからねぇのか?
単純な話だろ。魔法攻撃は効かない。物理攻撃も効かない。
そうなったらどうすればいいと思う?
お前、言ってたよな。俺は呪いだって。」
呪いはわけがわからないと言うような感じで応える。
「ああ言ったさ!それの何が悪い!」
「………考えていなかったのか?
俺にも呪いが取り憑いていることを。
そして、その呪いと深い結び付きがあること。
……………………まあ、だから乗っ取れなかったわけさ。」
おそらく呪いは俺をターゲットにするのを諦めて
レイたちの方向へと向かっていく。
「なら、お前以外の奴に取り憑いてやるぅぅぅ!」
「なあ、こんな言葉知ってるか?」
呪いが反応し、こちらを向く。
「目には目を。歯には歯を。………呪いには呪いを。」
俺がそう言うと同時に黒魔が呪いに攻撃を加える。
「「「「黒魔!?/え」」」」
そう。俺の2つ目の人格は………………
前に神々の呪いを食らったときに自我を持った呪いだ。
だから唯一、呪いに攻撃を加えられる。
「アルド、こいつは消していいか?」
そんなの答えは決まっている。
「ああ。消して構わないよ。
あ、でも最期に一言言いたいからその後に消してくれ。」
「了解」
あっという間に決着がつき呪いは息も絶え絶えにいった。
「俺様を殺したとはいえぇ……
お前は長馴染を殺したぁ……………!」
「あ、言っとくけどクロウは死んでないぞ?」
「あ、もう大丈夫な感じかな?」
そう言うとクロウはムクリと起き上がる。
驚くクリスタル王国とアリスメラ王国に説明する。
「幻影魔法をかけたんだよ。
クロウが殺されたように見せかけるために。」
「「「「え」」」」
「アルドが通信魔法で話しかけてきた時はまじで
びっくりしたよ……まさか死んだふりしてくれって
言われるとは思っていなかったからね。」
「ていうか……俺があんなに簡単に長馴染を殺すと思うか?」
「「「「思う」」」」
「……………なかなかにひどいこと言うなお前ら。
ま、とりあえず一件落着ということで!
黒魔!そいつ俺が殺していいか?」
俺がそう言うと黒魔は蹴り飛ばして渡してくれる。
扱い雑じゃね?とは思ったものの、
まあそれくらいでいいかと思い、俺は能力を使う。
「お前はぁ…何を言っているんだぁ………?
お前はぁ…………俺様に攻撃できねぇじゃねぇかぁ……」
そう言う呪いを無視して俺は能力を使う。
「能力……【クリエイター 破壊者
破壊………………対象、黒魔を除く呪い】」
俺がそう言い終わると、呪いはグシャァッと潰れた。
後ろを振り向き、
「じゃ、帰ろうか。」
俺がそう言うと、
周りからどうして殺せたのかという疑問が聞こえる。
説明しますか。
「ほら、俺の能力って創造者じゃん?
だから自分ができると思ったらなんでもできるんだよな」
「じゃなんで使わなかったの?」
たしかにレイの言うとおりだ。だが………
「俺にはクロウと呪いを引き剥がすイメージができなかった
だから万が一のことを考えてこの方法にしたんだよな」
レイは納得したようで、頷きながら
「なるほどね。」
と言った。
「とりあえず………帰ろうか。」
あれ?戦争は?そう思ってクロウをみる。
「あ、もうすでに戦争は俺等の負けって言っといたよ」
仕事が早いなおい。まあ良いことか。
「にしてもやっぱすごいよな。アルドは。」
「いや、凄いのは俺だけじゃないよ…………」
ま、とりあえずしっかり休みたいので城に向かう。
その時、クロウが何かぽつりといった。
「流石、腐った運命を破壊し創り変える者だな………」
ただ、俺にはその言葉は聞こえなかった。