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格闘タイプのお姉さんが護衛と引き換えに私の体を要求して来るんだけど!? ~意外とウブな芋ジャー女ドラゴンに溺愛されるキケンな二人暮らし~  作者: 枕頭皮
第7話 貴女は一人じゃない。そのことを忘れないでください ~血影衆殺手 東風 & 南風 登場~
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7-13

「か〜〜〜〜〜お〜〜〜〜〜〜〜〜」


 勝ち誇った顔でこちらに手を振るメメちゃん。いや、まだ終わってないから。血影衆の殺手が一発どつかれただけで参る筈ないから。


「走ってくかおが見えたから、追っかけて来ちゃった! これ、おねーさんに加勢して良かったんだよね〜〜〜?」


「良い! 良いから早くこっちおいでメメちゃん! そいつまだ生きてるから!!」


 私が指差す先では、南風が頭を押さえて立ち上がろうとしている。メメちゃんもそれに気付き、顔から血の気が引く。


「えっ……ええ〜〜〜〜っ!? やだやだやだもう!!」


 慌ててこちらへ逃げて来るメメちゃん。一方の南風は懐から黒い何かを取り出し、メメちゃんを狙って構えた。六芒星を象った武器、多分手裏剣だ。


(メメちゃんが危ない! 足は動く。緊張が解けたからだ。行かなきゃ。メメちゃんは私が守るんだ!!)


「このっ……クソ女がーーーーーッ!!」


 南風が手裏剣を投げる。


「メメちゃあんっ!!」


 私は駆け出し、面食らってるメメちゃんに抱き着くようなタックルをかました。そして諸共に倒れた私たちの頭上を手裏剣が通過していく。間一髪だったけど、メメちゃんの命は守られた。


「か、かお……今ウチのこと守って……?」


 私に押し倒されながら、メメちゃんが目をまん丸にして尋ねて来る。何を驚いてるのか知らないけど、こちとらパークに入場した時から覚悟は決まってんのよ。


「……そりゃ守るよ。親友だもん」


「っ! ……か〜〜〜〜〜〜お〜〜〜〜〜〜むぎゅうっ!」


 感極まってキスでもして来そうなメメちゃんを、私は手で押し留めた。


「後にしてそういうのは」


「むう……イケズ」


 膨れるメメちゃんはほっといて、私は戦況を見る。南風はメメちゃんの殺害を諦め、落とした長刀を拾おうと手を伸ばすところだった。だがその手が柄を握る寸前、何者かの足が長刀を遠くへ蹴り飛ばした。


「なっ……!」


 愕然とした南風が顔を上げると、そこには美夢さんが肩で息をしながら立っていた。メメちゃんが時間を稼いでくれたおかげでわずかに回復することができたのだ。


「絆を語るなら……香織さんとメメさんに学ぶことです。他者を傷つけることでしか実感できない絆など、よほどちっぽけに思える筈ですから」


「ふ、ふざけたことをっ!!」


 憤った南風が、立ち上がりざま素手で殴りかかる。その拳を美夢さんは真っ向から掌で受け止め、万力のような力で握り締めた。パキャッと手の骨の割れる音がし、南風の顔が歪む。


「ぐっ……こ、のっ!!」


 反対の拳で美夢さんに反撃を試みる南風。しかし美夢さんは彼の拳を掴んでいた手をパッと放して飛び退き、素早い二段蹴りを繰り出した。


「がはっ……!!」


 リーチの外から脇腹とこめかみを狙い打たれ、南風の動きが止まる。やはり格闘戦では美夢さんに分がある。長刀を落とした時点で勝敗は決していた。あとはとどめを残すのみだ。


「ぎええええええええええいっ!!」


 空気を震わす雄叫びを上げ、美夢さんが南風の胸板に連続パンチを叩き込む。肋骨ごと肺を粉砕しかねない、凄まじい猛攻。だが南風も執念で前蹴りを返して来る。だが既に勢いを失ったその蹴り足を美夢さんは難なく払いのけ、よろめいた相手に更なる追撃を加える。


「どあああああああああっ!!」


 驚くほど打点の高い回し蹴りで南風の横面を薙ぎ払い、同じ足で往復の後ろ回し蹴りを見舞う。脳を左右に揺さぶられ、南風が完全に死に体になる。


「でえやああああああああああああっ!!」


 軽く下がって助走をつけ、美夢さん渾身の飛び蹴りが決まる。吹っ飛ばされた南風は地面をバウンドぎみに転がった後、膝を立てて立ち上がる素振りを見せたが、


「うぐぐ……ねえ、さ、ん……! がふっ」


 それだけを言い残し、頭から地面に倒れ伏した。あらゆる意味で私をゾっとさせた南風だったが、その執念もとうとう破れた。美夢さんの勝利だ。


「ハァ……ハァ……か、香織さん! 見てましたか? わ、わたし……わたし、あ、あれっ……?」


 いつものように褒めをねだる飼い犬のような目を向けて来る美夢さんだったが、皆まで言う前に足がもつれて倒れそうになる。


「ちょっ、美夢さん!?」


 私は慌てて駆け寄り、頭一つ分は大きい彼女の体を支えに入る。


「もう、大丈夫なのホント……っておもっ! 重い! ちょっと脱力しないで支えられないから!!」


「す、すみません。でも体に力が入らなくて……安心したからかな。ああ、香織さんのちっちゃな手で全身包み込まれて、幸せ……このまま落ちたら天国なんでしょうねぇ……えへへ」


 えへへなんて気楽に言うけど、美夢さんの長身+筋肉だと推定体重でも私の1.5倍はあるのを忘れて貰っちゃ困る。この状態で寝落ちなんてされたら私、潰されちゃうんだけど!?


「あ、やばい意識飛ぶ。まぶたが、堪え切れない……香織さん、すみま、せ……」


「おいおいおいふざけんなって!!」


 美夢さんの体から更に力が抜け、たわわな胸と全体重が私の上にのしかかって来る。私だっていい加減疲れてるし足だってガクガクだ。このままじゃ本当にヤバい……そう思った時だった。美夢さんの後ろから不意に助けの手が入って、完全に寝落ちた彼女の両脇をしっかりと支えて地面に下ろした。美夢さんの頭を膝に乗せて照れ臭そうに微笑んだその手の主は、なんと愛梨ちゃんだった。


「ふう、何だか凄いことになってるのね。一応、生徒の家庭事情……ってことになるのかしら?」


「愛梨ちゃん……」


 仮にも教師でこの場の引率者なだけあって、私を見る愛梨ちゃんの眼差しは優しくも厳しい。後ろからはメメちゃんもうずうずしながら見つめて来ている。これは、私も観念する時が来たのかもしれないね。


「……愛梨ちゃん、メメちゃん、話があるの。聞いて貰っていい?」


《つづく》

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