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格闘タイプのお姉さんが護衛と引き換えに私の体を要求して来るんだけど!? ~意外とウブな芋ジャー女ドラゴンに溺愛されるキケンな二人暮らし~  作者: 枕頭皮
第6話 貴女の命も幸せも、傷一つとして付けさせるものですか ~血影衆殺手 東風 登場~
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6-10

 手首と足首に嵌まった枷を忌々しげに一瞥する美夢。彼女が一人目の兵隊を倒した時、残りの敵は既に動き出していた。一人目を囮にした作戦に美夢はまんまと引っかかったのだ。己の焦りが生んだ失態に、美夢は思わず失笑を漏らした。


「こんな手に乗せられるなんて、わたしもまだまだですね……うおっ!?」


 四本の縄が波打つような動きで引っ張られ、美夢の体が宙に舞う。四肢の自由を奪われた状態では受け身もままならず、美夢は空中で一回転し背中から地面に落ちた。


「いだっ!!……くう〜〜〜っ」


 骨に来る衝撃に身悶えしながら、美夢は逆転の一手を探る。とは言え敵も待ってはくれない。再び縄が煽られ、美夢の体が今度はうつ伏せに叩きつけられる。


「ぶぷっ!!」


 盛大に地面を舐め、土を噛む美夢。このままでは体力を消耗するばかりだ。早く香織の元へ行かなければならないのに、ここで足止めを食っていてはそれも覚束ない。気が(はや)る中、美夢の頭に少林寺で学んだ一つの技が浮かんだ。


「あまり好きな技ではありませんが……致し方ありません。もがーっ!」


 意を決し、美夢は突っ伏した地面に転がっている石を勢いよく口に頬張った。程良い大きさと(やじり)のような形状を理由に選んだそれを口腔内で弄び、方向と角度を調整する。そして、再び縄が煽られるより先に自ら仰向けになり……


「んぱうっ!!」


 胸いっぱいの空気を口から押し出し、その圧力で石を砲弾のように射出した。少林寺では蝦蟇功(がまこう)の名で伝えられる、卓越した肺活量を利用した技だ。


 まさに鏃と化して口から飛んだ石は、美夢の左腕を押さえていた兵隊の眉間に見事命中。彼の額を割り、頭蓋骨にまで穴を穿ち噴水のように鮮血を噴き出させた。同時に縄を掴んでいた手が離され、美夢の左腕が自由になる。


「腕一本あればこっちのものです。でやあーーーっ!!」


 兵隊たちが面喰らう中、美夢の反撃が始まる。右腕に繋がれた縄を左手で掴み、尋常ならざる腕力で思い切り引き寄せる。縄を持っていた兵隊の体が宙を舞い、放り出されて木々の間に消える。残る二人の兵隊は慌てて縄を引き美夢を引きずろうとするが、両手を使えるようになった美夢の前でそれは(いささ)か甘かった。


「ほあっ!! あだっ!!」


 美夢の両手首を戒めていた手枷付きの縄は、今持ち主を失いフリーになっている。美夢はそれを長い鞭のように振るい、強烈にしなる一撃を敵二人に見舞った。きつくなわれた荒縄でしたたかに打ち据えられ、彼らが怯んで縄を離す。その隙をついて美夢は立ち上がり、無防備を晒した敵に向かい走り出す。

「ぎええええええええいっ!!」


 美夢が地を蹴って跳躍。両脚を投げ出すようにして飛び蹴りを放ち、兵隊二人の顔面を同時に粉砕した。そして人身事故のようにもんどり打って崩れ落ちる彼らを一瞥し、器用に着地。周囲に敵の姿はもうない。何とか迅速に勝利できたと、美夢は胸を撫で下ろした。


「っと、安心してる場合じゃない。香織さんの元へ急がなくては」


 美夢は辺りに落ちている適当な岩を見繕い、手枷の関節部分をそれに叩きつけて破壊した。足枷も同様にして無理矢理外し、完全に自由の身となる。改めて園内に目を凝らすと、香織はおおむね順路に従い移動しているようだ。そしてまた、観客に紛れた兵隊たちも香織に向かい包囲網を狭めつつある。そろそろ最終的な襲撃ポイントを定める頃だろうか。


「……させませんよ。香織さんがお友達と過ごす時間は必ず守ってみせます。それがわたしがここに居る意味なのだから」


《つづく》

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